単価差縮小も、職種によっては1万円超える状況に―。国土交通省と農林水産省が公表した2017年度の全国公共工事設計労務単価によると、普通作業員など主要12職種平均は、北海道で前年度比5.2%増と、全国平均を大きく上回る伸びを確保した。北海道からも多くの技能者が出稼ぎに出ている宮城県や東京都の平均単価と比べても、北海道は大きな伸びとなり、前年度までの単価差拡大傾向に歯止めがかかった。しかし、宮城県の型枠工とは1万400円、東京都のとび工とは5100円の差があり、依然として道外への技能者流出の懸念は払拭(ふっしょく)されていない。
北海道の主要12職種の平均単価は1万7533円。16年度に比べ5.2%、866円上昇した。単価が公表となった1997年度から約20年間の推移を見ると、単価は98年度以降、ほぼ一貫して下がり続け、東日本大震災が発生した11年度には1万1608円まで下落した。
12年度も底ばいの状況が続いたが、13年度に安倍政権が発足すると、労務単価算定に際して、社会保険加入に必要な法定福利費相当額(本人負担分)を確保。入職者の減少や賃金低下に歯止めをかけるため、社会保険の未加入者も加入できるよう、法定福利費相当額を適切に単価に反映させる対策を講じたことから、全ての職種で2桁増となり、主要12職種も16.2%増と過去最大の伸び率を記録した。
14―16年度にかけても、13年度ほどの伸びではないが、堅調な増額を示し、17年度も5.2%増を確保。5年連続の高い伸びにより、20年前の単価水準にまで回復した。建設業界で深刻化する技能者確保対策として、単価の引き上げは欠かせないものであり、ここ数年の単価上昇は、業界の要望が実現したと見ることができる。
しかし、13年度以降の労務単価の上昇は、全国的なものであり、特に東日本大震災に伴う復旧・復興工事で多くの技能者確保が必要となった宮城、岩手、福島の3県では、他地域を大きく上回る単価引き上げが実施された。
また、東京都も13年度には、北海道を上回る伸び率となり、もともと単価の高かったこれら地域と北海道の単価〝格差〟が13年度以降顕著となった。宮城県との差は16年度には5000円を超え、東京都についても16年度までは4000円台の差が生じていた。
17年度には、北海道の大幅な伸びにより、宮城県との差は441円、東京都とは707円圧縮された。しかし、職種別に見ると、宮城県の型枠工とは1万400円、鉄筋工では7300円の差があり、東京都とでもとび工で5100円、鉄筋工で4800円と、依然として大きな格差となっている。
道内の公共工事は、ゼロ国債や災害復旧工事の発注が年度内にかけて本格化する。本年度は、昨年8月に発生した台風災害に伴う災害復旧工事が大量に発注となることなどから、技能者の需要が例年以上に前倒しで高まることが予想される。道外への流出防止を含め、人材の確保が各企業にとって引き続き大きな課題となる。