ドライアイスでコンクリ壁の劣化診断-室蘭の企業が共同で開発中

2017年02月23日 19時20分

 メイセイエンジニアリング(本社・室蘭)は室蘭工大大学院の板倉賢一教授と共同で、ドライアイスを用いた打撃音によるコンクリート壁面健全性診断システムを開発している。トンネルの覆工コンクリート面にペレット状のドライアイスを射出し、その打撃音を収録・解析して内部劣化を非接触で分析する。

 従来の診断方法は衝撃弾性波法、超音波法、電磁波レーダー法などに分類されるが、工法によってはコンクリート面に近接したり、接触する必要があり、日照や気温に制約されることもあった。

 開発中のシステムは、これらの課題を解消する。対象のコンクリート壁面に、粒径約9㍉のペレット状ドライアイスを射出し、打撃音を指向性マイクロホンで収録してスペクトルを算出。このスペクトルの特徴で健全性を診断する。

 機器による投射距離は1―3m。人の手が届かない箇所でも足場を組まずに調査できる。診断は1点ではなく、ある程度の広がりを持つ範囲を一度に診断でき、ドライアイスは昇華するため現場での後始末が容易だ。

 トンネル覆工のスクリーニング検査での利用をイメージする。システム構成としてドライアイスペレットを射出する機器、マイクロホン、打撃音収録装置、パソコンなどを想定。同社は「現場のニーズに応じてシステムを車載すると、移動しながらの診断も可能」と説明する。調査時間は1m²当たり30秒を目標に開発している。

 システムの活用によって足場や高所作業車が不要となり、離れた位置から広範囲の診断に対応できるため、従来方法と比べて工期短縮やコスト削減の効果が期待できる。

 作業は全て地上部で対応するため、安全性も向上。検査者の熟練度に依存しない、客観的な診断が可能だ。ドライアイスは製鉄所などの各種工場で、副生されたCO2を使って製造するため、新たにCO2を発生させることはなく、環境にも影響しない。

 実験では、空隙を模した発泡スチロールの円盤を組み込んだコンクリート供試体3種類と、健全な供試体打撃音を比較。空隙があるスペクトルは健全な場合に比べて、特徴的なピークや、周波数成分の増加を示した。また、直径20cmの空隙を深さ3cmに埋め込んだ供試体を使った実験では、80%以上の精度で検出できた。

 同社は実用化に向けた課題として、射出方向の制御、射出方向とマイク方向との連動、ドライアイスペレットの現場製造などを挙げ、2年後の実用化を目標としている。


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