北海道測量設計業協会(山川昇会長)は、無人航空機「ドローン」と3Dレーザースキャナーに関する会員の意識調査をまとめた。ドローンは回答176社の半数に当たる82社が保有し、普及が著しい。3D(次元)レーザーは25社で15%にとどまった。導入課題は「受注増に直結しない」が最多で、導入の投資に対する明確な効果を見いだせない様子がうかがえる。ドローンは保有する3割が拡充に積極的だが、保有しない企業は「導入なし」や「未定」が多く対照的な結果だった。
対象は会員222社で、ことし2―3月に調査した。回答率は79%。
ドローン、3Dレーザースキャナーは共に測量、計測を効率化する新技術。
ドローンとレーザースキャナーの両方を保有する企業も21社と全体の約1割いた。いずれも保有しない企業は90社で51%を占めた。ドローン保有を地区別で見ると札幌、旭川、網走、稚内、釧根で50%以上と高い割合だった。
導入課題(複数回答)は「受注増に直結しない」(38%)が最も多く、以下「設備投資の負担」(35%)「行政の展開が不透明」(28%)「技術者がいない・不足」と続いた。
ドローンの新規導入や拡充に関する質問(複数回答)では、導入・拡充の予定企業が75%に達したものの、導入しない企業も14%あった。
導入・拡充時期は「2017年度」と「3年以内」が30%で、未定は45%。所有企業は38%が3年以内の拡充を予定しているのに対し、未所有企業は24%と慎重だった。
普及に向けた要望(複数回答)は「購入費助成や税制優遇の充実」が48%と、費用負担の重さが顕著。「入札制度の優遇」やICT活用を推進する国土交通省の「i―Construction試行・拡大」も35%を超え、利用機会の拡大や受注へのインセンティブ付与に期待の大きさが浮き彫りになった。
測量設計業からは広範囲を安全で効率的に測量、計測できるこれら機器に対する信頼が高まっている。ドローンは、数十万円クラスの手頃で高性能な機体が増え普及が広まっている。
昨年の台風災害で、被災状況の把握に活躍したことも導入を後押しした可能性がある。導入企業ほど拡充に積極的なことは、これらを実感したことの表れとみられる。
ただ、公共事業の要求する水準で使用する機体や、今後のインフラ点検に対応する機体は数百万円級と高額で、3Dレーザースキャナーは、これを上回る。成果解析のソフトウエアやパソコンも含め導入に巨額投資が必要だ。
運用中の建設コンサル実務者の一人は「持っていなければ受注できないツールになるだろう」と展望するが、「現状は差別化しても入札に貢献せず動機につながらない」と指摘。高額負担を伴う新技術導入が、単なるサービスでしかなくなることを警戒する。費用負担軽減とインセンティブ付与の要望が多い北測協の調査は、こうした状況を裏付けた。
ICT活用施工を推進する北海道開発局では「ドローンは地域偏在があるが導入が進んでいるという印象」(技術管理課)とコメント。
現状は2D図面を3D化した後で施工に活用するが「測量、設計から3D化できればさらに効率化が可能になる」とし、機器の普及状況を見ながら測量、設計段階から成果を3D化していく業務発注を進めていく考えを示している。
少子高齢化が課題の建設や関連産業で、担い手不足対策としての生産性向上や効率化は急務。活用機会の拡大、業務効率化や受注への影響の大きさが明確になるにつれ、導入はさらに加速しそうだ。