「ロット大型化などで災害復旧を円滑に」-渡辺道建設部長インタビュー

2017年05月16日 19時27分

 4月1日付で就任した道の渡辺直樹建設部長は、北海道建設記者会の共同インタビューに応じ、建設行政の方向性や災害対応について考えを示した。昨年の大雨災害による被災地の復旧・復興対策としては、早期発注・早期回復を目指す一方で、発注ロットを大型化するなどし「工事集中」で懸案される弊害に対応する方針だ。建設技術者などの人材不足に関しては「喫緊の課題」とし、建設業が地域経済や雇用を支える役割を果たせるよう、効果的な担い手確保と育成に取り組んでいく意欲を見せた。

 渡辺部長は、道内に甚大な被害をもたらした昨年の大雨災害について「このように連続して台風が来襲するなど初めての経験で、予測の難しい自然災害にあらためて防災の重要性を感じた」と振り返った。そして「まずは復旧へ、しっかり対応したいという気持ちが今一番強い」と意気込みを語った。

 本格的な災害復旧に向けては、工事集中による技術者・技能労働者不足を懸念。「発注ロットの大型化や、受注者が工期の始期と終期を設定できるフレックス工期を導入するなど対策を講じる」と効果的な取り組みを行う。災害復旧工事の6割以上を占める帯広建管では地域外の建設企業と組み、専任技術者の要件緩和を図る災害復旧工事特例共同体の導入などで、一日も早い復旧に向けて円滑な執行を目指す。

 ただ、早期復旧を掲げる一方で、被災箇所が「まだ傷口が開いた状態」であることを指摘。「復旧や改良が終わるまでの異常気象対応も重要で、被害を最小限に食い止めていく」と決意をにじませる。今後の災害対策についても「気候変動の影響が現実のものになったと認識し、ハードとソフトのあらゆる対策を総動員して、本道全体の防災・減災に取り組む」

 国土強靱(きょうじん)化の重要性も強調する。その一つとして「広域幹線道路の整備がまだまだ遅れているという印象がある」という。昨年の災害でも鉄道や国道が不通になったことを挙げ、「交通網の代替性確保の重要性が明らかになった」と断言。JR北海道のローカル線存続問題がある一方で、北海道新幹線の波及効果、インバウンドや交流人口拡大といった側面でも高規格幹線道路網の担う役割は大きいと訴え、「インフラ整備で少しでも役に立てるよう一生懸命やりたい」と抱負を語る。

 道内のまちづくりの動きでは、「北の住まいるタウン」の基本的な考え方が16年度に示され、鹿追町と当別町がモデル地域に選ばれて具体的な取り組みがスタートする。これに関して「人口減少が進む本道において効率的な集約型都市構造への転換、新エネルギーなど地域資源の活用、生活の利便性維持などが重要」と認識。地域特性を生かしながら自立的、持続可能なまちづくりが進むことに期待を寄せた。

 建設業界の課題については、まず担い手不足に対応していく。「今後も建設業が地域の経済や雇用を支え安全・安心を担っていけるよう、建設業団体や教育機関などと連携し、効果的な担い手の確保・育成に取り組む」

 国が働き方改革に力を入れていることを背景に、道内建設業者へも浸透するよう「本年度に進める建設産業支援プラン見直しの中で施策の検討を進めたい」と語った。さらに同プラン見直しに当たってはICT活用拡大で、建設業の生産性向上を目指す取り組みを盛り込むなど、経営体質や技術力強化を後押しする考えだ。

 人手不足とともに大きな課題である社会保険未加入対策に関しては、国が4月から2次以下も対象に加入を求めている。「道でも建設業における人材確保や公平で健全な競争環境構築のため、対策を進めていく必要がある」と考えを示唆した。

 基幹産業の役割を担う地域建設業に対して「業界も大変厳しい状況にある中で献身的に活動してくれている。道としても雇用環境改善や担い手対策など、できる限り協力・支援していきたい」と積極的に進める意向を示した。


関連キーワード: 人材育成 北海道庁 災害・防災

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