北海道建設業協会の会員企業を対象とした人材確保・育成に関するアンケート結果がまとまった。これによると、企業が直面している経営上の課題は「人材不足による技術力の低下」が最多を占め、公共事業費の安定的確保の見通しが立った際の対応として、新規技術者の雇用と中堅技術者の増員に取り組む意向を多くの企業が示した。若手技術者の定着対策としては、厳しい環境下にある中小規模の企業であっても、「話しやすい職場環境の創造」などに取り組むことで、効果があることが浮き彫りとなった。また、働き方改革を進め、長時間労働の解消や休暇を取りやすい環境をつくることで、離職率を下げることができることが分かった。
調査は、北海道土木技術会建設マネジメント研究委員会の建設経営小委員会が実施。建設産業の担い手不足問題が深刻化する中、現状の課題と若年技術者確保に向けての対応などをアンケートし、その結果を集計・分析することで、今後の効果的な担い手対策を検討する際の基礎資料とすることを目的としている。
会員企業598社を対象に2017年1月に調査。303社から回答を得た(回答率50.7%)。 調査対象企業の技術者の年齢構成は、20代が8%、30代が12%と、若手が2割程度しかいない現状が浮き彫りになった。16年度の受注実績は「やや減少」が約半数を占める中で、17年度の予想は「やや増加」が4割に達し、逆に「やや減少」は27%と、実績比で20ポイント近く減っている。
企業が直面している経営上の課題としては、「人材不足による技術力の低下」が72.2%と最も高く、人材問題が喫緊の課題であることが判明。
受注減少や競争激化による利益低下も3割以上を占め、公共事業費の安定的な確保が課題となっている。このような経営課題がある中で、公共事業費の安定的確保の見通しが立った際には、「新規技術者の雇用」(78.5%)や「中堅技術者の増員」(57.9%)など、人材確保に取り組む企業が多いことが判明した。
若手技術者(40歳未満)の定着に向けた取り組みを既に進めている企業の割合は42%、今後実施予定の企業が34%だった。定着に向けた取り組みに関して、人事労務面では、給与引き上げが64.4%、労働時間短縮・休日増加が49.3%と、賃金や労働時間などの改善が目立って多い。技術面では、資格の取得支援を行う企業が多数を占め、心理面では、会話しやすい職場環境づくりに努める企業が60%だった。
■10億円未満企業で若手定着に明暗
若手技術者採用の実績について、受注高規模別に集計すると、50億円以上では、91.7%の企業で採用が実現しているが、10億円未満では、28.1%の企業しか採用ができず、70.8%の企業で応募がないなど、規模が小さな企業ほど若手採用が困難な状況であることが明らかになった。
その上、10億円未満の企業は、若手の定着対策が明暗を分け、実施済みの企業は56%で採用が実現し、取り組んでいない企業の17%とは大きな差が生じている。「応募なし」も未実施の企業は78.3%と突出した数値となっている。
定着状況については、「定着が良い・まあ良い」と回答した企業は、50億円以上で73.9%、10億円未満は45.5%だった。10億円未満の企業で見ると、定着対策を実施した企業のうち、72.2%が「定着が良い・まあ良い」であったのに対し、定着対策をしていない企業は、32%と低く、10億円未満の企業では、若手人材定着の対策が有効であることが判明した。
若手技術者が離職する理由を調査すると、「長時間労働・休みが取りにくい」といった労働環境に起因するものが53%と半数以上を占めている。また、確保・育成のポイントとして、休暇や時短が重視されていることから、休暇が確保しやすい仕組みや現場管理業務の簡素化、施工管理技士受験資格の見直しなど、制度改革の要望を求める意見も出ていた。
今回のアンケート結果では、中小規模の企業が人材の確保・育成に関して厳しい環境下にあることがあらためて分かった。だが、こうした企業でも、人材の定着対策に積極的に取り組むことで、採用と定着が実現することが明らかになった。人材の確保・育成は業界にとって喫緊の課題であり、課題を解決するためにも、企業が自ら決断し、具体的な取り組みを一歩でも進めていくことが求められている。