いよいよ夏が来ました。暑い日には、どうしても冷たい飲み物や食べ物が欲しくなります。しかし、冷たい食べ物や飲み物をたくさん取ってしまうと、お腹の調子が悪くなってしまうことがままあります。子供の頃、冷たいものを食べ過ぎて、急にお腹が痛くなったり、下痢が起こったりして、親に怒られたという経験を持つ人も少なくないのではないでしょうか。
また、暑いと食欲が落ちてしまうので、どうしても冷たくてあっさりしたもの、つまりそばやそうめん、冷麦などに手が伸びてしまいます。これを続けると、どうしても栄養不足になりやすくなります。
そこに、暑さにばててしまうことが重なると、胃腸の動きが悪くなり、少しの食べ物でも胃もたれするようになります。暑さで体力が低下しているのに、食が進まなければ、事態は悪化の一途をたどることになります。やはり、冷たいものばかりではろくなことにならないようです。
しかし、冷たいものが胃腸に悪いとは言い切れないところもあります。最たるものはビールでしょう。キンキンに冷えたビールジョッキを2、3杯空けるのは珍しいことではないと思いますが、同じ量のジュースやコーラなどを平らげたら、確実にお腹が壊れてしまいそうな気がします。なぜ、ビールなら平気なのでしょうか?
理由は、アルコールと炭酸の相互作用が考えられます。炭酸は胃の粘膜を刺激して血行をよくして、胃の運動を進めるといわれます。さらにアルコールもビール2杯程度なら、むしろ胃の血行をよくして、運動も促進するといわれています。
これらの効果は、冷たさによって胃の運動が低下したり、消化が悪くなることを、適度に打ち消しているようなのです。そういえば、他の炭酸入りのお酒、例えば、ハイボールやジントニックなども、食前に飲むと食欲が増進するといわれています。
夏は冷たいものは毒だからと、温かいものをあえて口にする、慎重な人もいますが、暑い日はやはり冷たいものを口にしたいもの。暑さに負けて食欲が出ない時には、ビールなどの炭酸入りの冷たいお酒を軽く飲んでから、食事をするのは一つの方法です。でも、もちろん、飲み過ぎには注意してくださいね。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)