夏といえばウナギと思いつくほど、暑い盛りにウナギを食べることは、一般に広まった風物詩ともいえるものです。土用の丑の日の前後にはとくにウナギ屋さんが大混雑になります。今年は7月25日と8月6日と2日あるそうです。昨年よりウナギの値段が下がり気味とか。ウナギを食べる機会が増えそうです。
ウナギの仲間であるアナゴもおなじみの食材の一つであると思うのですが、ウナギ屋さんでアナゴを見かけることはありません。アナゴはお寿司屋さんやてんぷら屋さんでお目にかかります。お寿司屋さんあたりではアナゴのかば焼きを出すところもあるのですが、ウナギ屋さんで出さないのはなぜなのでしょうね。アナゴの旬は6月から8月でウナギが売れる時期と重なっているので、アナゴを扱っている暇はないということなのでしょうか?
実はウナギの仲間の長い魚で、夏が旬であるという食材にハモがあります。北海道ではあまりなじみがないかもしれませんが、京都を中心とした関西方面では、結構食べられる食材です。ハモは湯引きにしてあっさりと食べるのが基本ですが、かば焼きにして食べることもあります。関西出身の私の母は、時々、ハモのかば焼きを作ってハモ丼を作っていました。でも、ウナギ屋さんでハモは見かけませんね。
ウナギ、アナゴ、ハモと同じウナギの仲間の長い魚なのに、料理、扱いが全く異なります。日本料理の奥深さを垣間見る思いです。3つとも夏が旬と思われがちですが、食通の方にお聞きすると、ウナギの旬は脂がのった冬なんだそうです。ハモは絶対夏なんですがね。不思議なものです。
ウナギは栄養豊富な食材として知られています。タンパク質はもちろん、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンEに加えて、動脈硬化を抑える不飽和脂肪酸(DHA、EPA)が豊富とされています。アナゴは脂肪分がウナギに比べて少なく、ヘルシーといえるかもしれませんが、その分、ビタミン類も少ないようです。ハモはビタミンAがウナギより少ないことが最近分かりました。でも、いずれにしても、他の魚よりはビタミンが豊富な食材といえると思います。
暑さで体力が奪われがちな時期に、ビタミン豊富な長い魚を食べるのは、それなりに理にかなっているようですね。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)