コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 148

院内感染

2020年04月28日 09時00分

 戦場の天使と呼ばれた英国のフローレンス・ナイチンゲールを知らない人はいないだろう。近代看護学や公衆衛生学の基礎を築いたほか、病院設計にも非凡な才能を発揮した人である

 ▼中でも印象深いのは19世紀中期のクリミア戦争への従軍でないか。ナイチンゲールは戦闘の傷より療養中の感染症で死亡する兵士が多いことに気付く。当時の野戦病院は衛生環境が劣悪なため、院内感染が爆発的に発生していたのだ。新型コロナウイルスの感染拡大で今最も懸念される事態の一つがこの院内感染である。日本看護協会が先週発表した「全国の院内感染の状況」(20日現在)によると、19都道府県の54施設で783人が確認されているという。本道も北海道がんセンターや札幌呼吸器科病院など数カ所で起きている

 ▼必要な人員も安全具も全く足りない中で、日ごと増えていく感染者に対応せざるを得なかった指定病院が戦場下のような状況に置かれたのは想像に難くない。医療に携わる方々の心労はいかばかりか。本来なら患者のとりでとなるべき病院でウイルスが広がると、逆にウイルスの供給源となるばかりか医療崩壊も招く。それを一番理解しているのは医療関係者だが、感染しても症状の出ない人がいるため侵入を止められないのが現実だ。しかも保有者に自覚がないというのだから一層たちが悪い

 ▼いかにナイチンゲールといえども今回の新型ウイルスには手を焼いたのでないか。この戦場でわれわれにできることがあるとすれば感染しないことである。医療者への負担を減らし難局を切り抜けたい。


連休は読書でも

2020年04月27日 09時00分

 最近は家にいてもテレビを見る気がしない。そう思っている人も多いのでないか。ニュース番組はどれも最初から最後まで新型コロナウイルスの話ばかり。娯楽番組は密閉、密集、密接の3密を避けるため出演者が互いに距離を取っていて面白さも半減である

 ▼これは新聞も同じで、岐阜県警が23日、ホームレスの高齢男性を殺害した容疑で少年ら5人を逮捕した事件もベタ記事扱い。いつもなら社会面トップだろう。世の中の情報全てに新型コロナがまん延しているかのようだ。まあ文句を言っても仕方がないと、この際テレビや新聞に割いていた時間を読書に充てることにした。早速買ってきたのは過日亡くなったコメディアン志村けんさんの著書『志村流』(三笠書房)である

 ▼一読、やはり一芸に秀でた人は仕事や人生を語っても深い味があると感心させられた。たとえばこんな一節。「ずっとカッコ悪い生き方していて、それが二十年続いたら、むしろそれは十分カッコイイことで、評価すべきなんだ」。近頃の若者は何を考えているか分からん、と嘆くおじさん世代への言葉もある。「昭和の三十センチのものさしは、二十一世紀ではもはや三十センチではなくなってしまったっていうこと」。時代とずれた物差しを使っているのはどちらか気づけとチクリ

 ▼志村さんは言う。「たまたま読んだ本が発想の転換のヒントになったり」する。今週から大型連休に入る。遊びには行けないしテレビもつまらない。ならばこの機を生かして読書にいそしみ、コロナ後の復興に向けヒントを探すのも悪くない。


新たな津波想定

2020年04月24日 09時00分

 いずれも最大震度6だった1993年の釧路沖地震と94年の北海道東方沖地震、二つを経験したことは以前、当欄で触れた。液状化や揺れによって道路や港、河川堤防といったインフラに大きな被害が出たのはご存じの通り
 
 ▼ところがもともと地震が多い土地柄で耐震対策もしっかりしていたからだろう。幸いにも家屋や人には思ったほど被害が出なかった。もう一つ良かったのは津波がほとんどなかったことである。次はそんな幸運に恵まれないかもしれない。内閣府の有識者検討会が21日、日本海溝・千島海溝沿いの北海道沖から岩手県沖で巨大地震が発生したときの津波想定を発表した。釧路市では最大20・7mの津波を予測しているそうだ。えりも町では27・9m、広尾町では26・1mと背筋が寒くなるような数字が並ぶ

 ▼筆者は釧路沖地震発生当時、釧路市中島町に住んでいた。市のハザードマップを見ると高さ10mの津波が沿岸を襲った場合、この地区は5―10m浸水する。人ごとではなかったわけだ。5mといえば2階建て家屋がすっぽり水没する高さである。3年前に仙台市宮城野区の住宅街で見た光景を思い出す。友人に案内してもらい指し示された先を見ると、家の最上部に東日本大震災の津波が到達した跡があった

 ▼検討会は今回の想定について、「切迫性が高い」と警鐘を鳴らす。この震源域では数百年ごとに巨大地震が起きているため、前回が17世紀だった点を踏まえると油断はできないというのである。まずは関心を持って自分で調べ、備えることが大切だ。決して人ごとではない。


原油価格がマイナスに

2020年04月23日 09時00分

 休日にテレビをつけると、たまに通販番組に当たる。いわゆる「テレビショッピング」だ。口上が面白いので買う気もないのについ眺めてしまう。しかしあのおまけの多さは一体何なのか

 ▼ある日などは液晶テレビを販売していて、テレビ台とデジタルカメラも付けるという。それだけで得した気になるが、さらに値段を半額にするときた。最後にはこうである。「きょうだけ、同じテレビをもう1台お付けします」。それなら最初から2台で売れよなどと文句を言うのは無粋だろう。意外なおまけをどれだけ豊富に用意できるかがテレビショッピングの勝負どころである。客の心を動かすのも楽ではない。既に誰もが持っている商品ならなおさらだ

 ▼まさかそれと同じことが原油取引で見られるとは思わなかった。代表指標のテキサス産軽質油5月渡し価格がマイナスになったため、売り手がおまけを付けて買い手に引き取ってもらう事態になったという。20日のニューヨーク原油先物市場で起こったことである。この場合のおまけはお金だ。お金をあげるからどうか買ってくださいというわけ。もう何が何だか分からない。この日の終値は1当たりマイナス37・63㌦。マイナスになるのは史上初めてらしい

 ▼新型コロナウイルスの世界的大流行で需要が激減したため、在庫がパンク寸前になっているからなのだとか。産油国は減産だ売り込みだと必死だが、世界経済全体が止まっているのでは焼け石に水。こうダブついていてはいかにあのテレビショッピングのカリスマといえどもさじを投げるのでないか。


最近の世論調査

2020年04月22日 09時00分

 集英社の漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』で連載中の「鬼滅の刃」(吾峠呼世晴)が人気である。題名くらいは子どもから聞いたことがあるという人も多いのでないか。特別な力を身に付けた剣士たちが鬼を倒していく物語である

 ▼今では信じられないが最初はぱっとしない作品だった。当方も読者の一人として遠からず打ち切りだろうと思っていたほどである。ジャンプをはじめ漫画雑誌の査定はなかなか厳しいのだ。毎週、掲載している全作品を対象に読者アンケートを行い、順位を付けている。人気が低いと徐々に雑誌の後方へ押しやられ、回復が見込めなければ話が途中でも容赦なく打ち切られる。一週も手は抜けない。とにかく毎号が勝負である

 ▼政治家もそれぐらい緊張感や向上心を持った方がいいのでないか。最近の世論調査を見て考えさせられた。毎日新聞が18、19の両日実施した調査で、政党支持率が日本維新の会6%、立憲民主党5%となり、維新が立憲を抜き野党第一党の座に着いたのである。11、12両日の産経新聞とFNN合同調査でも維新5.2%、立憲3.7%と逆転していた。一度なら調査の偏りも疑われよう。ただ、こう続くと新たな流れが来ていると判断せざるを得ない

 ▼維新は新型コロナウイルスに対する吉村洋文大阪府知事のリーダーシップや、国政での前向きな政策提言などが支持増の理由だろう。国民はよく見ている。「鬼滅」の作者吾峠さんは読者の声に耳を傾け作品の質を上げていった。立憲に限った話でないが人々の声を聞けない野党に人気の出ようはずもない。


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