コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 164

創作四字熟語

2019年12月23日 09時00分

 この時期の恒例といえばマスコミなどがまとめることしの重大ニュースだろう。世界を動かした出来事もあれば、国内で話題になった事件や事故もある。その時は大いに驚いたのに案外忘れているものもあったりして。自分の記憶力のなさにまた驚かされる

 ▼こちらも風変わりだが、重大ニュースの一種と呼んでいいのではないか。住友生命保険の「創作四字熟語」である。ことしの優秀・入選作が先週、発表された。優秀作10編を眺めると、世相を的確にとらえていて感心する。やはりまずはこれだろう。新時代の訪れを象徴的に表現した「国祭令和(国際平和)」。元になった熟語が天皇陛下の願いであるところも秀逸だ。吉野彰さんのノーベル賞受賞にちなんだ「電池創造(天地創造)」もぴったりの言葉である

 ▼文字の並びを見ると桜の戦士の活躍を思い出す「一心桜体(一心同体)」もうまい。「考齢運転(高齢運転)」や「変幻税率(軽減税率)」、「深夜閉業(深夜営業)」は実に言い得て妙である。本道の世相で筆者も幾つか考えてみたのでご笑覧を。最初は「被害妄走(被害妄想)」。五輪マラソンの開催地変更に絡み、札幌を中傷するような妄言がワイドショーなどで相次いだ。いらぬ被害である

 ▼次は「知事宿題(支持拡大)」。鈴木直道知事が誕生した。勢いは良いが宿題の多さには頭を悩ませている様子。最後は「北方遠島(北方四島)」。ロシアとの政治的隔たりを感じさせられた年だった。島もいささか遠くに見える。来年こそは明るい話題ばかりを並べ呵呵大笑といきたいもの。


マラソンかビールか

2019年12月20日 09時00分

 札幌で開催される2020年東京五輪マラソンのコースがようやく固まった。大通公園を発着点とし、まず「北海道マラソン」のコースを一部含む札幌市中心部20㌔を1周、さらに創成川通から北大キャンパスにかけての後半部分を2周する形だという

 ▼大会組織委員会と世界陸連が14日に現地を視察した上で合意したそうだ。冬本番の前に決まって良かった。雪が積もると景色が一変するため評価は難しかったろう。レース展開を考え戦略を練らねばならない選手は、やきもきしながら発表を待っていたに違いない。関係者もほっと胸をなで下ろしているのでないか。もちろん道民も無事成功を望んでいようが、こうなると今度は別の心配が頭をもたげる

 ▼他でもない。「さっぽろ大通ビアガーデン」への影響である。ちなみにことしのビアガーデンは7月19日から8月14日までだった。来年の五輪でマラソンと競歩が予定されているのは8月6―9日。8月上旬といえば最もビールが恋しくなるころではないか。たった4日間だから心配ないと思われる人がいるかもしれない。ただ同じ五輪のサッカーで札幌ドームを会場とするに当たり、大会組織委は当初何と言っていたか。実質5日の開催のために、前後合わせて3カ月間は他の用途で使用できないと主張していたのである

 ▼場所も事情も違うため、今回はそこまで長期にわたる要求はなかろう。ただ今回も放送機材設置や安全対策などに相当な準備が必要なことには変わりがない。いかに折り合いを付けるか。コースを決める以上の難しさがありそうだ。


巨大IT企業を規制

2019年12月19日 09時00分

 身にまとう宝石や金を貧しい人々に分け与えた王子像の話「幸福な王子」で知られる英国作家オスカー・ワイルドは、「わがままな巨人」という童話も書いている

 ▼美しい花と豊かな芝生、立派な木がある素晴らしい庭を持つ巨人の話だ。そこではいつも子どもたちが楽しく遊んでいたが、ある日巨人は「俺の庭は俺の物だ」と子どもたちを追い出してしまう。その日から庭は冬に閉ざされ、春が来なくなるのである。子どもたちがいたからこそ、庭は豊かさを保っていたのだ。巨人のわがままがそれを台無しにした。現代の巨人とも呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・ドット・コムのいわゆる「GAFA」も、この童話から学ぶところがあるのでないか

 ▼個人データの扱いや優越的地位の乱用、デジタル市場の寡占化といったある種のわがままが世界的に問題視されている。日本も規制に乗り出した。政府が17日、「デジタル市場競争会議」で5項目の規制策をまとめ、公表したのである。政府は今後、個人情報保護や取引先との契約適正化、定期的な運営状況報告といった観点で新法制定を進めるという。力をかさに着た横暴は許さないというわけだ。国内ではヤフーや楽天などのプラットフォーマーも対象になる

 ▼巨大IT企業は大きくなり過ぎて、自分の身勝手な振る舞いを制御できなくなっているのだろう。童話では巨人が真実に気付きわがままを反省すると、子どもたちも豊かな庭も戻ってくる。法規制という冬も、IT巨人の自制心を取り戻す良い機会になるといいのだが。


長男殺害の判決

2019年12月18日 09時00分

 どうしたらよかったか、考えれば考えるほど分からなくなる。そんな思いに捉われた人も多いだろう。ことし6月、自宅に引きこもっていた長男を殺害したとして殺人罪に問われた元農林水産事務次官の熊沢英昭被告に16日、判決が下った

 ▼裁判員裁判で東京地裁が出した結論は懲役6年。求刑の8年より2年短かったものの、中山大行裁判長は「強固な殺意」があったとして弁護側が求める執行猶予は認めなかった。やりきれない事件である。44歳の長男には定職がなく、体調を崩したため5月から実家に戻っていた。すぐに始まった暴力と暴言。被告は傷を負い、妻はうつ病を患った。妹も数年前、長男が原因で婚約が破棄されたことに絶望し自殺したそうだ

 ▼そんな生き地獄の毎日を送る中で悲劇は起こった。事件当日、長男が「殺すぞ」と詰め寄ってくる。恐怖、怒り、悲しみ―。いろいろな感情が一気に爆発したに違いない。被告はとっさに台所にあった包丁を握り、もみ合いになりながら何度も刺した。精神を病んだ人を説得して医療につなげてきた押川剛氏は著書『「子供を殺してください」という親たち』(新潮文庫)で同様の事例を紹介している。警察に相談しても犯罪でないからと相手にされず、病院に入れてもそこでは真面目なためすぐに退院させられる。そんなケースは珍しくないらしい

 ▼それでも押川氏はこう強調する。行政や警察、医療施設といった関係機関に「直接」「何度も」「明確に要望を伝える」ことが大事だと。親と関係機関が真剣に事態と向き合えば、救える命がある。


せんせいやめないで

2019年12月17日 09時00分

 かわいい詩を一編紹介したい。当時保育園に通っていた望月栄里さんの「きゅうしょくのせんせい」(1996年)である

 ▼「きゅうしょくの/おだかせんせい/ほいくえん/やめちゃうんだって/けっこんして/だんなさまに/おいしいの/つくってあげるんだって/だんなさまが/ほいくえんに/たべにきてくれれば/いいのにね」(『ことばのしっぽ』中央公論新社)。親としては「そうだね」と言うほかない。大好きな先生に会えなくなってしまうのは寂しいし、おいしい給食もこれからどうなってしまうのか。園児にとってはまさに一大事。愚痴の一つもこぼしたくなろう。先生はそれほど特別な存在なのである

 ▼その先生たち18人もが一斉に、今月28日付での退職届を提出したというのだからただ事ではない。静岡県浜松市の認可保育所「メロディー保育園」で持ち上がった大騒動である。園長の夫である専務が、保育士と職員にパワーハラスメントやセクシャルハラスメントを繰り返していたらしい。園児のことを思い我慢に我慢を重ねてきたものの、ついにたまりかねて皆で退職を決断。保護者に実情を訴えたそうだ。パワハラやセクハラは卑劣な上、被害者の心を深く傷付ける。子どもにとって社会生活の入り口ともいえる保育園で、大の大人が一体何をしているのか

 ▼園は14日に保護者説明会を開き、各種のハラスメントがあったことを認め、謝罪した。園長と専務は退任し、別の会社に運営を任せるという。「せんせいやっぱりやめないんだって」。園児のそんな喜びの声が聞けるといい。


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