コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 213

見える化

2018年12月07日 07時00分

 ビジネスの現場でひところ盛んに活用が呼び掛けられていた手法の一つに仕事の「見える化」がある。取り組んだ経験があるという人も多いのでないか

 ▼隠れていたり気付かなかったりする問題をはっきり見えるよう工夫し、意識に上らせることでいろいろな物事を改善していく仕組みである。例えばミスが発生したときの日時や人、条件を細かく数値化し、傾向を浮かび上がらせることでミスを減らすといった具合。今や業務の中に当たり前のこととして組み込まれつつあるため、ことさら強調されることはなくなった。問題解決に役立つ手法は自然と広がっていくものである

 ▼どうやらこちらの「見える化」もかなり進んでいるようだ。防犯カメラの映像を分析して犯罪事実を把握し、容疑者を特定する捜査のことである。10月末に渋谷でハロウィーンに集まった若者らが軽トラックを横転させた事件で警視庁は5日、関与した4人を暴力行為等処罰法違反容疑で逮捕した。この他11人が書類送検されるという。警視庁は今回、250台の防犯カメラと提供されたスマートフォンの映像から、事件に関与した人物を正確に割り出した。当日、渋谷には4万人を超える人々が集まっていたらしい。目立つ行為とはいえ、かつてなら群衆に紛れて容易には見つからなかったろう

 ▼事件を知り「逃げ得許すまじ」と義憤に駆られた市民の協力もあったに違いない。公共空間での防犯カメラ普及は息苦しい監視社会につながるとの懸念もあるが、要は使い方一つ。事件が「見える化」されない社会の方がよほど心配だ。


知内の中国人

2018年12月06日 07時00分

 おとといのことである。JR札幌駅横の「ヨドバシカメラ」に立ち寄ると、中国人とおぼしき観光客のグループが買い物を楽しんでいた。おぼしき、というのは服装や言葉、立ち居振る舞いからそう見えたということである

 ▼ほとんどの人が原色のブランド物防寒着を着込み、身ぶり手ぶりは大きく、はたで聞くと怒っているかのような大声で話していた。冷やかすような気持ちはない。単に特徴を挙げたまでである。広大な土地に14億人が暮らす中国を一つの切り口で語る愚は重々承知しているつもりだが、それにしてもずいぶんな違いでないか。知内町の建設現場で働いていた中国人11人が不法在留などの疑いで道警に逮捕された。同じ現場で働いていたやはり中国人47人も、逃走して行方不明になっているという

 ▼たぶん彼らは派手な原色のブランド物など、身に着けていなかったに違いない。目立つ街中では声高に話すこともなかったろう。中国は極端な格差社会といわれるが、その一端を見る思いである。NHKの報道によると、現場にいた58人は千葉県内の同じ業者から派遣されてきたらしい。在留カードも偽造され、「短期滞在」で入国したのに就業可能な「定住者」となっていたそうだ。安い労働力を集め、ひともうけをたくらむ闇のルートがあるのだろう

 ▼国土交通省は審議中の入管難民法改正案に関連し、建設業の賃金や労務管理が適正か監視する機関を設ける方針を固めたと聞く。雇う側も雇われる側も違法は許されない。出稼ぎ者だって「ヨドバシ」で堂々と買い物がしたいはずである。


来訪神

2018年12月05日 07時00分

 ライホウシン…。「何だそれ?」という人がほとんどだったのでないか。国連教育・科学・文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産として、新たに日本の「来訪神 仮面・仮装の神々」が登録された

 ▼正月などに異形の者が家々を訪れ、人々に幸せや福をもたらしたり、怠け者を戒めたりする行事だという。「男鹿のナマハゲ」(秋田県)がそれと聞いてやっと「ああ、あれか」と納得。8県10行事で構成されるそうだ。ナマハゲの他には「能登のアマメハギ」(石川県)、「薩摩硫黄島のメンドン」(鹿児島県)、「宮古島のパーントゥ」(沖縄県)といったものがあるがいずれも初耳。地域の結び付きや世代を超えた人々の対話を深める行事というから、小さな共同体の中で連綿と伝承されてきたものなのだろう

 ▼ユネスコは子どものしつけや、家族の絆を強めるのに重要な役割を担っていると評価したらしい。そりゃナマハゲが「悪い子はいねがー」と来たら、子どもはいい子になって親の所に逃げるしかない。来訪神の存在を知ってふとある人々のことが頭に浮かんだ。それは祖父母やおじ、おばである。子どものころ、土産を持って時々ふらりと現れては、面白い話や珍しい話で楽しませてくれたものだ

 ▼もともと親しい間柄で異形の者でもないが、どこか日常とは違う場所から来たような特別感があった。親から叱られているときにはかばってくれたりして。あと1カ月もすれば正月である。無形文化遺産登録にちなんで自分が来訪神となり、孫やおい、めいの家々を巡ってみるのも一興かもしれない。


100円で

2018年12月04日 07時00分

 激しい価格競争のため浮沈著しい小売業界の中にあって、近年勝ち組として成長を続ける業態に「100円ショップ」がある。「ザ・ダイソー」「セリア」「キャンドゥ」あたりが主流だろうか

 ▼先週末、最近オープンした一軒をのぞいてみた。食器から工具、化粧品、衣服、生活雑貨と何でもござれ。商品の充実ぶりには目を見張るばかり。しかもかつてのような「安かろう悪かろう」の品はほとんど見当たらない。消費者もここでは懐の具合を気にせず楽しく買い物ができる。100円に喜びという付加価値を感じさせてくれる経験でもあるのだろう。ところで同じ100円と価格表示がされていても、まるでうれしくないものもある。最近の灯油である

 ▼筆者が先日買いに行った札幌市内のGSでちょうど1㍑100円だった。18㍑入れて消費税込み1944円。道経済産業局の最新(11月26日)動向調査で全道の灯油価格平均が102・3円だから、まあいいところ。ただ冬場の最需要期にこの高値は痛い。灯油は60円くらいとの思い込みがあるものだから、100円と聞くとショックが大きい。1986年から約20年間、多少上下はしても60円程度を維持していたためそれが頭に染みついているのだ

 ▼加えて腹立たしいのは、発展途上国での需要増だ中東の不安定な政情だとまことしやかな説明はあるものの、なぜ高値が続くのか本当のところはよく分からないことである。石油業界にはそんな消費者無視の姿勢が根強い。価格以上の満足を提供する「100円ショップ」との一番の違いはそこだろう。


道路除雪の季節

2018年12月03日 07時00分

 北海道は今月、暖気と寒気が一進一退を繰り返しながら本格的な冬に向かっていくらしい。どこへ行くにも神経を余計に使う雪道運転の季節がまたやってきた

 ▼この時期になると中島みゆきさんの歌『北の国の習い』(1990年)の一節を思い出す。「吹雪の夜に白い山を越えてみようよ/あんたの自慢の洒落た車で/凍るカーブは鏡のように/気取り忘れた顔を映し出す/立ち往生の吹きだまり凍って死ぬかい」。かなり物騒な歌詞だが道民なら違和感はないだろう。ただ実際は吹きだまりで立ち往生などせず快適に走れるよう、道路除雪が丁寧に行われている。本紙でも冬道の安全を守る除雪業者の記事が連日紙面をにぎわせ始めた

 ▼中から幾つか声を拾ってみたい。「除雪は地域に密着した業務で、地域のライフライン確保を担う重要な仕事」(小谷寿広宗谷道路環境事業協同組合理事長)。「官民一体となって安全・安心な市民生活を守れるよう努力をしていこう」(本田秀樹釧路市除雪連絡協議会長)。「市民の道はわれわれが守るという熱い気持ちで業務に精進する」(窪田憲一除雪センター長・中定建設工業)。「走り慣れた道が冬でも安全に通行できるのは皆さんの頑張りのおかげ」(宮武利幸室蘭建管浦河出張所長)

 ▼大雪は洪水や土砂崩れといった災害と変わらない。それを常に監視し状況に応じて出動。啓開に当たる。楽な仕事ではない。一見やすやすとこなしているように見えるのは、蓄積した知識や経験、技術の成せる技だ。縁の下の力持ちたちの活躍はもっと一般に知られてよい。


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