ビジネスの現場でひところ盛んに活用が呼び掛けられていた手法の一つに仕事の「見える化」がある。取り組んだ経験があるという人も多いのでないか
▼隠れていたり気付かなかったりする問題をはっきり見えるよう工夫し、意識に上らせることでいろいろな物事を改善していく仕組みである。例えばミスが発生したときの日時や人、条件を細かく数値化し、傾向を浮かび上がらせることでミスを減らすといった具合。今や業務の中に当たり前のこととして組み込まれつつあるため、ことさら強調されることはなくなった。問題解決に役立つ手法は自然と広がっていくものである
▼どうやらこちらの「見える化」もかなり進んでいるようだ。防犯カメラの映像を分析して犯罪事実を把握し、容疑者を特定する捜査のことである。10月末に渋谷でハロウィーンに集まった若者らが軽トラックを横転させた事件で警視庁は5日、関与した4人を暴力行為等処罰法違反容疑で逮捕した。この他11人が書類送検されるという。警視庁は今回、250台の防犯カメラと提供されたスマートフォンの映像から、事件に関与した人物を正確に割り出した。当日、渋谷には4万人を超える人々が集まっていたらしい。目立つ行為とはいえ、かつてなら群衆に紛れて容易には見つからなかったろう
▼事件を知り「逃げ得許すまじ」と義憤に駆られた市民の協力もあったに違いない。公共空間での防犯カメラ普及は息苦しい監視社会につながるとの懸念もあるが、要は使い方一つ。事件が「見える化」されない社会の方がよほど心配だ。