それまで分からなかったことが明らかになるのは、頭の中にかかっていた深い霧が晴れるようで気分がいい。推理小説が好まれるのもそんな理由からだろう
▼数々の難事件を解決してきた名探偵シャーロック・ホームズは、インド王族秘蔵の宝石に絡む『四つの署名』(コナン・ドイル)で謎解きの極意についてこう語っていた。「関係のない要素を全て取り除いていくと、ただ一つ真実だけが残るというわけだよ」。胆振東部地震に伴う「ブラックアウト」を調査していた電力広域的運営推進機関の検証委員会が23日、中間報告をまとめた。「おおむね全ての事象はほぼ間違いのない事実として確認」できたそうだ。さてどんな真実が残ったのか
▼まず原因は地震により苫東厚真火力発電停止と狩勝幹線送電線事故が引き起こされ、連鎖して水力発電も止まったため需給バランスが大きく崩れたこと。北電の復旧対応に関しては経緯を詳細に検討した結果、ほぼ手順通りに行われていて妥当だったと評価している。さらに気になるのは「事件を解決」する再発防止策だろう。それに関しては今冬対策として「強制停電」容量引き上げや後ろ盾を用意した上での厚真3台同時稼働、中長期策として新設火発や再生エネルギーの導入を示していた
▼ただ物足りないのは再エネ活用のシミュレーションはあるのに泊原発のそれはなかったことだ。安全審査中とはいえ供給力の一極集中が課題になっている以上、中長期の参考として取り上げておくべきだったのでないか。関係ある要素まで取り除いては真実に迫れない。