コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 220

消費税率引き上げ

2018年10月18日 07時00分

 最近の家電は機能が多過ぎて使い方がさっぱり分からない。新しい物を買うたびそう嘆いているのは筆者だけではないだろう

 ▼少し前のことだがテレビを買い替えた。最初に設定をしなければならない。手順通りに進めていると途中でインターネットにつなげという。視聴できる番組が増える上に外出先からスマホで録画予約もできるから便利というわけだ。よく分からず結局活用していない。万事がその調子である。全ての機能を縦横に使いこなす人も中にはいよう。ただそう多くはあるまい。日常的に使う物は単純で分かりやすいに越したことはない。消費税も同じでないか。安倍首相が今週初め、消費税率を予定通り来年10月に引き上げると表明した。2%上乗せして10%になる

 ▼ところがこの新制度にもいろいろと複雑な機能が付くのだとか。軽減税率の導入がそれである。間違いなく負担が増える家計に配慮し、これまでのような税率引き上げ後の経済腰折れを防ぐための措置という。ではどんな中身か。主な対象は「酒類と外食を除く食品全般」。一見単純だが例えばコンビニで買って帰ると8%なのに中で食べると10%になるそうだ。電子決済なら2%分をポイント還元する案も検討されているらしい

 ▼店の対応や客の理解不足を思えば現場が混乱するのは火を見るより明らか。社会保障の財源確保と財政健全化のための増税だが、分かりにくさと重税感から消費を冷え込ませるなら本末転倒だ。あるのはスイッチとチャンネルのみ。政府はそんな昔のテレビくらい明快な制度を用意すべきだろう。


悪徳弁護士

2018年10月17日 07時00分

 もう10年以上前のことだが、ばかげた話にあぜんとさせられたのを覚えている人も多いのでないか。山口県光市で本村洋さんの妻と子が少年に殺された事件。その少年は差し戻し控訴審で殺害した乳児を押し入れに隠した理由をこう語ったのだった

 ▼『なぜ君は絶望と闘えたのか』(門田隆将)から引く。「押し入れは何でも願いをかなえてくれる四次元ポケットです。ドラえもんが何とかしてくれると思いました」。この控訴審が始まったのは2007年5月。ところが少年は99年に逮捕されて以来、一度もそんな証言をしていなかった。控訴審のために安田好弘氏を主任弁護人とする新弁護団が結成されてから、いきなり飛び出してきた物語だったのである

 ▼弁護士という職業に深い疑念を抱かずにはいられなかった。彼らは社会正義を実現するために働いているのではなかったのか。そう信じていたのだが、実は手練手管を駆使し、弁舌巧みに依頼人の罪を軽くさせられればそれで良しとする人種だったのか。そんな不信を助長させる事件がまた起こった。第二東京弁護士会に所属する江口大和弁護士が逮捕されたのである。借りた車で死亡交通事故を起こした男に「車は勝手に持ち出した」とうその供述をさせ、無免許と知った上で車を貸した人物に罪が及ばぬよう仕組んだという

 ▼専門知識を使い依頼人に法の網をかいくぐらせたわけだ。どうやら弁護士にかかると押し入れも法律もたちどころに四次元ポケットに変わるらしい。まあ実際にはこんな悪徳弁護士などごく一部にすぎない。のだろうか…。


部下が会社を辞める

2018年10月16日 07時00分

 中小企業政策の中核実施機関として各種支援サービスを提供する中小企業基盤整備機構(中小機構)の新作動画が話題と聞き、早速「YouTube」で視聴してみた。題名は「【感情崩壊】今日、部下が会社を辞める」

 ▼舞台は退職する若手社員の送別会。新たな門出を祝う雰囲気の中で、それまで面倒を見てきた上司が回想する。入社した時から要領が悪く、厳しく指導したこともあったがよく頑張ってくれた―。周りの社員から温かい拍手を送られ話は終わるのかと思いきや、そこからが驚きの展開だった。注意書きに「ネタバレ禁止」とあるため後は実際にご覧いただきたいが、一つヒントを言うとこの会社では若手がどんどん辞めていくのに、上司ら幹部はその深刻な問題に全く気付いていなかったのである

 ▼この動画を見て身につまされる経営陣も少なくないに違いない。その証拠に、お堅い印象のある中小機構の動画で、今月初めに公開されたばかりにもかかわらず再生数が既に47万回を超えている。動画でも紹介されていた厚生労働省の離職状況調査(2018年)によると、中小企業の新入社員52.4%が3年以内に離職するそうだ。ただでさえ集まらないのに、入ったと思ったらすぐに辞めていくのでは将来計画も立てられない

 ▼今回の動画はIT化により業務効率化を図り、残業や過重労働をなくそうと訴えたものだった。ただ本当の問題は働き方に対する企業と若者の意識の差だろう。人手不足を頑張りで乗り越える企業にとっての美が、若者の目には醜く映っているかもしれないのだ。


小惑星着地延期

2018年10月15日 07時00分

 不安材料はいろいろ出てきたけれど面倒だから当初の計画通り突っ走ろう、何とかなるさ―。そう考えて物事を進めたはいいが結局失敗して後悔する。そんな経験、どなたにもあるのでないか

 ▼「急がば回れ」である。日本ばかりでなくギリシャにも「あまり急ぐ者は最後に蹴つまずく」のことわざがあるそうだ。洋の東西を問わず、周りの状況が目に入らずジタバタした揚げ句、しくじる人が多いということだろう。どうやら探査機はやぶさ2には、そんな「蹴つまずく」心配はなさそうだ。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が当初今月下旬に実行するはずだった小惑星リュウグウでの着地試料採取を、来年1月以降に延期すると発表したのである

 ▼想定していた以上に小惑星表面が凸凹で、安全に着地できる平面が見つからなかったのだという。勢いで突っ走らぬ賢明な判断だろう。4年の歳月をかけて地球から約3億㌔離れた目的地に着いたはいいが、慌てて転んで一巻の終わりではあまりにもったいない。はやぶさ2を着地させるに当たりJAXAは直径100mの平地を探したものの、最大でも20mの場所しかなかったそうだ。地獄に例えるのもおかしな話だが、はやぶさ2にしてみれば針の山に足場を探すようなものなのに違いない

 ▼プロジェクトを統括する津田雄一氏も延期を発表した記者会見で、「平坦な場所が一つもなく、意地悪な小惑星」と語っていた。いずれにせよ針に糸を通すような難しい仕事になりそうだ。この確保した時間で態勢を立て直し、再びはやぶさの奇跡を見せてほしい。


ジャンヌ・ダルク

2018年10月12日 07時00分

 フランス王とイギリス王が王位継承や領地を巡って争った中世後期の百年戦争と聞いてまず思い浮かぶのは、オルレアンの乙女ジャンヌ・ダルクだろう

 ▼フランスで農夫の娘として生まれたジャンヌはある日、当時劣勢だったフランスが最後には勝利するとの神の啓示を受け、王シャルル7世を励ます。志願して軍の指揮官となったジャンヌは最前線に立って兵士を勇気付け、ついにはイギリス軍を撃退するのである。米国で野党に甘んじている民主党には今、人気女性歌手テイラー・スウィフトさんがそのジャンヌ・ダルクに見えているかもしれない。これまで公の場で政治的発言を一切控えていたテイラーさんが7日、突如インスタグラムに11月の中間選挙では2人の民主党候補に投票すると書き込んだのである

 ▼しかも自身の投票地テネシー州の共和党候補を強い調子で批判。フォロワーに選挙登録を勧め、投票に行くよう呼び掛けた。反響は大きく、若者を中心に登録者数が一気に25万人以上増えたという。民主党はがぜん勢いづいた。トランプ大統領は余裕を見せながらも実は危機感を強めているのでないか。ところでわが国でも、来夏の参院選に向け立憲民主党が先日擁立を決めたある女性候補にちょっとした注目が集まっている

 ▼枝野幸男代表は「党の考えを体現する人」と期待。ジャンヌ・ダルクのごとき活躍を願うようだが実はこの候補、放射能に関して恒常的に流言を飛ばすとして立民を応援する識者からも警戒される人物である。テイラーさんのような救党のヒロインになれるのかどうか。


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