コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 4

岸田内閣支持率低下

2023年06月29日 09時00分

 若い人たちの間ではしばしば、年配の者には分からない言葉が流行する。最近は「蛙化現象」というものが主に若い女性の間で、はやっているそうだ。ネットなどでその言葉を目にする機会が増え、何のことかと疑問に思っていた

 ▼ひそかにずっと好意を抱いていた男性が実は自分に好意を持っていたと気づいた途端、急に気持ち悪く感じてしまう現象という。グリム童話の「かえるの王さま」からきているのだとか。実際にはもっと幅広く、その男性の嫌な面を目にして「無理」となる場合にも使われる。俗説の域を出ないものの、人でなく恋に恋をしているときに起こりやすいと聞く。ところでこの蛙化現象、どうやら若い女性の専売特許ではなかったらしい

 ▼世論にも発生していた。少し前までかなり高かった岸田内閣の支持率が急落しているのである。嫌な所が目についてしまったのでないか。読売新聞の6月世論調査で前月比15ポイント減の41%となったのをはじめ、NHKや共同通信など軒並み下落している。誤って他人の情報とひも付けられているなど問題が次々明らかになったマイナンバーカードや、野心的な政策を掲げる一方で財源はあいまいにする姿勢が蛙化現象を招いているようだ

 ▼G7広島サミットでは前に出て堂々発言していたのに、近頃は裏でもごもご言うだけ。幻滅というわけである。蛙化の逆は「蛇化現象」といい、無条件にその人を信じ肯定することだそう。そんな熱烈な支持者もいるが、多くの人は首相の言動を冷静に見ている。一時の高い支持率を国民の蛇化と思ったなら甘い。


やじ

2023年06月28日 09時04分

 子どものころから人の悪口を言ってはいけないと教えられて育ってきたはずなのに、なかなかやめられないのが悪口というものでないか。自分の気に入らない人をあしざまにののしると、一時的にすっきりした気持ちになるのは誰もが経験してきていることだろう

 ▼つまりある種の娯楽、ストレス解消法といった側面もないではない。仏文学者の河盛好蔵さんも名著『人とつき合う法』(新潮文庫)にこう記していた。「碁や将棋のできない人間はあっても、悪口の言えない人間は世のなかには存在しないから、われわれは、いつ、いかなるところでも、またどんな人間を相手にしても、この楽しみにふけることができる」。街頭での選挙演説中、登壇者へやじを飛ばす人がしばしば現れるのもきっと同じ理屈だろう

 ▼最近再び話題の2019年夏の参院選での安倍晋三首相(当時)へのやじもそうである。札幌市内で応援演説をしている際、男女が「安倍やめろ」などとやじを飛ばし、警察に排除されたのだった。公の場で面識もない目上の人を「安倍」と呼び捨てにし、「やめろ」と命令口調で叫ぶのは人として礼を欠いている上に、演説を聴く支持者を侮辱することにもなろう。トラブルを招きかねない

 ▼男女は排除が違法として提訴。1審では共に主張が認められたものの、22日の控訴審では女性に1審維持、男性に請求棄却の判決が出た。警察側の主張が認められたわけだ。首相に向かって悪口を叫ぶのは愉快だろう。ただ、日頃のうっぷんを晴らしたいと、所構わずやじを飛ばすのはやめた方がいい。


円安

2023年06月27日 09時00分

 食べ歩きをしたり名所旧跡を巡ったり、旅の楽しみは人それぞれである。予定調和をあえて崩してみるのもその一つだろう。小説家の佐藤究さんは米ニューヨークの旅でそんな体験を求めていたらしい。エッセーに記していた

 ▼何日かを普通の観光に費やしたところで気づいたそうだ。こんな「修学旅行的」な旅をしたかったわけではない。そこで地下鉄カードと20ドル札、携帯音楽端末だけを持って夜の散策に出た。名も知らない港で夜の海を眺め、眠くなるとボートの下に潜り込んで寝た。夜間巡回の警察に見つからないよう息を潜めていたそうだ。佐藤さんの例は少々極端だが、経験のない物事に触れ、その後の人生に深みを増すのも海外旅行の醍醐味(だいごみ)に違いない
 ▼そんな海外旅行だが、コロナ禍後の今も以前ほどの盛り上がりは見られないようだ。日本政府観光局の集計によると、4月の日本人出国者数は2019年同月比66.4%減の56万200人。1月から同じ傾向が続き、停滞している。国内旅行はコロナ禍前を上回るほどの活況を呈し、訪日外国人観光客も戻って来ているのとは対照的。日本人は海外のコロナにまだ不安を抱いているからとの説も聞くが、一番の原因は円安でないか

 ▼円はきのう午後2時現在で1ドル=143円。19年平均より30円以上安い。さらに下がるとの観測もあるのだとか。財務省の神田真人財務官はきのう、円安の動きは急速で一方的と危機感を露わにし、市場介入の可能性も示唆した。日本を出た瞬間に財布が軽くなるのでは海外へ行く意欲もしぼむ。


解散茶番国会

2023年06月26日 09時21分

 江戸時代には芝居好きの人がたくさんいたようで、落語にも芝居の噺が少なくない。町内のしろうと芝居を描いた「蛙茶番」もその一つ。役者が一癖も二癖もある住人たちだけに、まず開演までに人がそろうかどうかが分からない

 ▼見栄っ張りの若旦那はくじでガマガエル役が当たったため、あれこれ理由を付けて逃げようとする。建具屋の半次は舞台番でなく役者がいいとわがままを言う。最初からドタバタである。観客は既に集まっているためやめるわけにはいかない。そこで芝居の舞台監督を務める大店の主人がいろいろと策を講じる。ほめたり、だましたり、言いくるめたりしてなんとか役者を引っ張り出し、開演に間に合わせるのだ

 ▼通常国会が先週閉会した。政府提出法案の97%が成立したというから、まずまずの出来だったのだろう。ただ、最終盤の解散茶番は余計だった。声はでかいが力のない野党は内閣不信任案提出で存在感を示したい。とはいえ本当に解散されて選挙で負けては元も子もない。岸田首相も不信任案が出れば受けて立つと一時は解散をちらつかせたものの、こちらも周りで不祥事が重なり舞台の手前でうろうろ。結局、先に首相が解散はしないと表明し、ならばと立憲民主党が胸をなで下ろしながら不信任案を提出した

 ▼双方共に腰が引けているのだから、緊張感のないことおびただしい。筋書きも舞台裏も丸見えのしろうと芝居に国民はすっかり興ざめである。今国会も乱闘騒ぎがあったり場外戦があったりといささか脱線ぎみ。はて、舞台が悪いのか、役者が大根なのか。


大西洋で潜水艇行方不明

2023年06月23日 09時00分

 宇宙のブラックホールを撮影できる科学を持つ今でも、深海となると人間が直接見たのは全体の5%に満たないそうだ。潜水調査船「しんかい6500」で何度も深海に達した藤岡換太郎静岡大学防災センター客員教授が、『見えない絶景 深海底巨大地形』(講談社)にそう記していた

 ▼「宇宙のスケールから見ればゼロにも等しいのですが、水によって光を遮られた深海は、ある意味では宇宙よりも遠いのです」。地球から3億km以上離れた小惑星にいる「はやぶさ2」とは通信できるのに、たかだか数千mの深海には電波が届かない。宇宙よりも遠いというのもうなずける。捜索が難航するのも当たり前である

 ▼大西洋で沈没した豪華客船タイタニック号を見るため、3800mの深海に向かった観光潜水艇タイタンが18日、消息を絶った。米国やカナダの沿岸警備隊が24時間体制で捜索を続けているが、行方はようとして知れない。気になる音は探知しているものの、潜水艇かどうかは分からないそうだ。乗り組んでいるのは操縦士1人を含む5人。安否が気遣われる。潜水艇はバラストの重さで沈み、それを捨てて浮上する単純な仕組み。行方不明となるとトラブルが発生したのは間違いない

 ▼藤岡教授によると、調査船は投光器のついた前方しか見えないため、他の部分が海底の物体に当たって故障する危険が常にあるのだとか。今回はそもそも強度が不足していたとの報道もある。いずれにせよ本体が無事でも酸素は4日分という。今朝までに本欄の心配が無用のものになっているといいのだが。


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