コラム「透視図」

2類相当見直し

2020年08月27日 09時00分

 昔のテレビドラマには病院内での出来事を映し出すこんなシーンがよくあった。まず重い病気や深刻な事故で一人の患者が病院に運ばれてくる。担当する医師が力を尽くして救命措置を施す。家族らは意識のないままベッドに横たわる患者をただ見つめているだけ

 ▼処置を終えた医者が言う。「今夜が峠になります」。一夜明け、患者が静かに目を開ける。喜ぶ家族。医者が笑顔で「どうやら峠は越えたようですね」。ドラマを見ているこちらまで緊張の糸が解け、うれしさがこみ上げる瞬間である。この報に触れ、それと似た気持ちになった人はたぶん筆者だけではあるまい。先週開かれた日本感染症学会で、政府新型コロナウイルス対策分科会の尾身茂会長が「現在の流行は全国的にほぼピークに達したとみられる」との見解を示したのである

 ▼峠は越えたということだろう。重症者は依然じりじりと増えているが、医療崩壊を起こすまでには至っていない。日本の感染拡大防止策が成功している証拠でないか。OECD加盟国に中国とロシア、インドを加えた40カ国の10万人当たり死者数(26日現在)は、日本が0・95人で5番目に少ない。国民の間に三密回避とマスクの新たな習慣が広がり、医療機関に患者を重症化させない治療ノウハウが蓄積された結果だ

 ▼尾身会長は24日、感染者全員に入院勧告する今の「2類相当」を緩める方向で見直す可能性にも言及した。医療資源を重症者に集中するためである。政府も前向きらしい。まだ先は長いが後は下るだけ。遠くにうっすらと元の生活が見えてきた。


謎の種が届く

2020年08月26日 09時00分

 近代日本を代表する文学者、島崎藤村の詩に「椰子の実」がある。明治期の作品だが、昭和になって曲が付けられた。そちらで知っているという人も多いのでないか

 ▼『藤村詩稿』(新潮文庫)から前半の部分を引く。「名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の実一つ 故郷の岸を離れて 汝はそも波に幾月 旧の樹は生いや茂れる 枝はなほ影をやなせる」。民俗学者柳田国男に聞いた実話が基になっているらしい。こうした大きな海を渡って岸辺に流れ着いたヤシの実ならロマンもあるのだが、覚えもないのに名も知らぬ誰かから届けられる種には怪しさしか感じない。最近、注文もしていないのに中国から謎の種が送られてくるケースが全国で相次いでいるという。同じことは海外でも起こっているようだ

 ▼ある日突然、郵便受けに荷物が投げ込まれる。たいていは薄くて軽い。商品名はいろいろだが指輪と書かれている例もある。確認のため封を切ってみるとビニール袋に入った種が出てくるというわけだ。植物防疫所は開封せずに連絡するよう注意を喚起。目的はまだ分かっていないが、個人情報を不正に入手して購入者になりすまし、特定の販売サイトの評価を上げる手段に使われているとの説が有力と聞く。どこかで勝手に名前が使われていると思うと気持ちが悪い

 ▼そんな悪質な出品者が後を絶たないからだろう。アマゾンや楽天など通販大手4社が協議会を設立し、対策に乗り出した。早急に進めるべきだろう。謎の種を送る出品者が海の向こうで生い茂るのを放置しておくわけにはいかない。


安倍首相の連続在職日数が最長に

2020年08月25日 09時00分

 現代の若者には全く受けない内容かもしれないが、昭和後期に青春時代を過ごした人には心に染みるものがある歌だろう。1966年にザ・ブロードサイド・フォーが発表した『若者たち』(藤田敏雄作詞、佐藤勝作曲)のことである

 ▼仲間と声を合わせて歌ったという人も多いに違いない。こんな歌詞だった。「君の行く道は はてしなく遠い だのに なぜ 歯をくいしばり 君は行くのか そんなにしてまで」。あのころは歌詞の「君」を「自分」に置き換え、逆境に負けずにこれからの人生を歩んでみせると意気込んでいたものである。ただし歌っている間だけの話だが。それはそれとして、今なら「君」を安倍晋三首相に置き換えたい気もするがどうだろうか

 ▼連続在職日数がきのう、2799日に達し、佐藤栄作氏の2798日を抜き憲政史上最長になったという。本来なら、何はともあれお疲れ様とねぎらわれるところだ。ところがこのコロナの流行である。歯を食いしばらねばならない日々が続く。思い起こせばデフレ脱却と前政権で崩れた外交の立て直しから首相の仕事は始まったのだった。途中、根拠の判然としない「モリカケ」問題で延々追求されもしたが、経済と外交では着実に成果を上げてきたように見える

 ▼最近は体調が少々優れないと聞く。いまだ先が読めないコロナの対策を考えると心労は尽きまい。デフレ、少子高齢化、安全保障、拉致―。課題は山積みである。首相を応援する人も批判する人も今は同じことを考えているのでないか。「君は行くのか そんなにしてまで」。


利水ダムで洪水対策

2020年08月24日 09時00分

 災害への備えとしてよく勧められているのが、自宅の浴槽に水をためておくことである。ブラックアウトと断水に苦しんだおととしの胆振東部地震以来、励行している人もおられるのでないか

 ▼常には難しいとしても、せめて台風の接近や地震の直後で水道が止まる恐れのあるときくらいは、念のため確保しておいた方がいいかもしれない。「風呂は体を洗う所。水をためてはいかん」という人は今どきいないだろう。緊急時である。本来の用途は違ったとしても、役立つなら何でも利用すべきなのは言うまでもない。こちらも「ようやくか」の感はあるが大いに歓迎したい。これまで治水目的に使われていなかった利水ダムを、政府が洪水対策に活用できるよう見直したのである

 ▼経済産業省所管の発電用ダムや農林水産省の農業用ダムが対象だ。5月までに1級水系の利水ダム620カ所全てと治水転用の協定を締結。貯水容量は45億m³増え、全体で91億m³になったという。ほぼ倍増だ。安心感も増す。以前から構想はあったものの、縦割り行政の弊害で実現していなかったのである。九州を中心とする7月豪雨では早くも力を発揮。事前放流で流量を制御し、河川水位を下げることができたそうだ。都道府県管理の2級河川でも同じ協定の締結が進んでいる

 ▼「日本を打ちてし止まぬ台風禍」村岸明子。台風はこれからが本番だ。政府が対策を急いだのもそのためである。近年は雨の降り方が尋常でない。過去の経験や考えにとらわれることなく、命を守るのに役立つ工夫なら何でも取り入れたい。


鉄道の魅力

2020年08月21日 09時00分

 世の中には鉄道をこよなく愛する人たちが大勢いる。英文学者で鉄道史研究家の小池滋氏もその一人である。どこに引かれるかは人それぞれだが、氏はこうだったらしい

 ▼「いま自分がどこを通っているか、車窓の外にどのような風景があり、どのような生活が展開されているかを、見るだけでなく、音で、匂いで確かめたくなる」。著書『「坊ちゃん」はなぜ市電の技術者になったか』(早川書房)で吐露していた。速さや効率とは別の価値がそこにはあるというのだろう。もちろん鉄道も速さや効率は必要だ。ただ、適度に遅く、気楽に乗り降りでき、ぼんやり景色を眺めていられるところが魅力なのも事実。いつまでも走り続けてもらいたいものだが、どうやら今、本道はそんなのんきなことを言っていられない状況らしい

 ▼JR北海道は19日、ことし4月から6月までの連結決算を発表した。純損益が126億円の赤字だったそうだ。同じ期としては連結決算の作成を始めた2003年度以降最低だという。このかつてない厳しい結果に島田修社長も会見で危機感をあらわにしていた。昨年、札幌近郊を中心に料金を大幅値上げし、経営改善の道筋が見えはじめた矢先でのコロナ禍である。不運というほかない

 ▼経費削減や設備投資の先延べくらいしか打つ手はないようだが焼け石に水。しかし良い話もある。来週始まる東急との共同事業、北海道の大地を駆け鉄道の魅力を存分に味わえる「ザ・ロイヤルエクスプレス」には定員の8倍を超える申し込みが殺到したという。決して芽がないわけではない。


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