自動車の歴史は意外と古く、1700年代後半には既にフランスで蒸気自動車が使われていたという。もっぱら軍隊で大砲運搬の用に供されていたようだ。日本はまだ江戸中期で、人の移動はもちろん物を運ぶにも人力か馬に頼るしかなかったころである
▼自動車の用途が広がり、普及を始めるのはそれから100年後のこと。ドイツでダイムラーやベンツが、扱いやすいガソリンエンジン車を売り出してからだった。その後は皆さんご存じの通り。各社が競い合うことで自動車の質は上がり、コストは下がっていった。ある製品が一般の人の手に入る段階に達するには、これと同じ過程を経ることが多い。宇宙船もそれは変わらないのでないか
▼米国は5月31日午前4時22分(日本時間)、民間企業の「スペースX」が開発した有人宇宙船「クルードラゴン」の打ち上げに成功した。同午後11時過ぎには国際宇宙ステーションに到着し、飛行士の移乗まで完遂。本格宇宙開発に民間が参入する画期的出来事だった。プロジェクトは米国がスペースXとボーイングの2社に委託して進めたそうだ。競争により技術開発が速まり、経費も大幅に削減された。しかも宇宙船の操作はタッチパネル式となり扱いやすさが格段に向上したのだとか
▼このままいけば100年後には、誰もが宇宙旅行を楽しめるようになっているかもしれない。クルードラゴンの試験は今回が最後。次回からは運用段階に移る。8月30日に打ち上げが予定される1号機に搭乗するのは日本人宇宙飛行士の野口聡一さんだ。それも楽しみである。