関東大震災では推定マグニチュード7・9の巨大地震が首都圏を直撃した。1923年のことである。建物はことごとく崩壊し、一面焼け野原と化した。全壊や全焼、流出した家屋は29万棟、死者は10万人を超えたという
▼当時の映像を見ると本当に想像を絶する。ところが日本はどん底から驚異の復興を遂げる。1940年に東京で開かれるはずだったオリンピックには、その姿を世界に広める目的もあったらしい。ご存じの通り日中戦争の勃発により日本は開催地を返上する。間もなく第2次世界大戦が始まったためこの40年と44年のロンドンは中止になった。奇妙な巡り合わせだが、東日本大震災から復興しつつある日本を国際社会にアピールする狙いがあったことしの東京五輪にも暗雲が垂れ込めている
▼新型コロナウイルスの世界的感染拡大で、7月の開催が危ぶまれているのだ。列強が足並みをそろえて日本に圧力を加えた戦前のABCD包囲網ではないが、見直しの動きは日ごとに強まってきている。各国の対策が正面撃破から感染ピークを抑えて集団免疫を獲得する長期戦に変わってきた以上、4カ月後に終息しているとは考えにくい。アスリートも練習や調整には苦労していると聞く
▼事ここに至っては仕方がなかったのだろう。安倍首相はきのうの参院予算委員会で「国際オリンピック委員会の決定は尊重する」と延期を容認する考えを示した。〝平和な社会を推進する〟五輪精神を実現するには、まずコロナからの復興を成し遂げることである。その先頭にホスト国の日本が立てるといい。