コラム「透視図」

おにぎらず

2016年05月24日 08時24分

 ▼「おにぎらず」と聞いてすぐピンとくる人は、流行に遅れをとっていない人だろう。その正体は、のりにご飯を載せ、好みの具を置き包むだけの簡単料理。握らないため「おにぎらず」である。もともと漫画『クッキングパパ』(うえやまとち作)で25年ほど前に紹介されたものというから、筆者も読んでいたはずだがとんと覚えがない。手軽に作れる上、具も自由に使えて華やかにできることが特長とか。

 ▼最近、再びWebの料理サイトで取り上げられ、瞬く間に人気に火が付いたらしい。今度の週末、道内多くの小学校で運動会が予定されているようだ。その「おにぎらず」もきっと、お母さんやおばあちゃんが早起きして作った弁当に入っているだろう。「空を割る音の溢れし運動会」(戸澤てしほ)。軽快な音楽が流れる中、子どもたちは懸命に跳び、走り、踊る。両親や祖父母の応援もどんどん熱を帯びていく。昼には子どもを囲み皆の笑顔がはじけるだろう。幸せな風景である。

 ▼この幸せは子どもがいるからこそだが、いつまでも続くかというとさほど楽観できない。総務省が先頃発表した人口推計によると、ことし5月1日現在の14歳以下の子どもの数は1604万人(概算値)で、前年に比べ11万人も減っているのである。ピークだった1954年のほぼ半分になり、減少傾向はさらに続いているというのだからいささか深刻だ。そのうち運動会そのものが少なくなり、「おにぎらず」どころか、子どもがいなくて「おにぎれず」になってしまうかもしれぬ。


コルビュジエ

2016年05月21日 08時50分

 ▼その人はある日、こんな質問を受けたそうだ。どうしてあなたは、やること全て上手に成功させられるのか―。答えは「母親が私に言ったからさ。やるならちゃんとやれってね」。その人とは、20世紀を代表する建築家ル・コルビュジエである。一番弟子ともいえるヴォジャンスキーが著書『ル・コルビュジエの手』(中央公論美術出版)に記していた。陽気な楽天家で、冗談を言うのが好きだったらしい。

 ▼そのコルビュジエの設計した上野の国立西洋美術館が世界遺産になるらしい。ユネスコの諮問機関「国際記念物遺跡会議」が、同美術館を含む7カ国17資産で構成される「ル・コルビュジエの建築作品」を登録するよう勧告したそうだ。名作と名高いロンシャンの礼拝堂も入っている。「地球規模で半世紀以上、建築技術を近代化させ現代社会、人間に回答を示してきた」価値が認められたとのこと。日本にも影響を受けた建築家は多いから、関係者にとっては喜びもひとしおだろう。

 ▼木造建築技術を究めてきた国柄もあってのことか、「ちゃんとやる」ことをしっかり受け継いだ日本の後進たちの活躍は目覚ましい。建築界のノーベル賞と称されるプリツカー賞に、1979年の創設以来6組が輝いている。受賞数は米国に次ぐ第2位だ。コルビュジエは常に自分を厳しく磨き、生きている限り新たな建築を追求した人だったという。泉下にいても、自分の過去の作品が遺産になることより、後輩たちが日々創造する建築を見ることに喜びを感じているかもしれない。


伊勢志摩サミット

2016年05月20日 08時50分

 ▼ぐずぐずと肌寒い日が続くと思っていたら、今週から急に夏めいてきた。家から見える手稲山の緑も、日ごと頂上に向け勢力を拡大しているようだ。暖かい陽気に万物の命が輝き育つ。きょうから旧暦二十四節気の小満である。「夏めくや水田の水の匂ひして」(植木孝雄)。道内各地では田植えも本格化するころだろう。水田がどこまでも続く風景は、日本が「豊葦原瑞穂国」であることを思い出させる。

 ▼ちょうどいい季節である。本道でというわけにはいかないが、先進7カ国(G7)の首脳たちも「瑞穂国」の豊かな水田風景を目にする機会があるのでないか。26、27の両日、三重県で開かれる伊勢志摩サミットまで1週間を切った。2008年7月の北海道洞爺湖サミットから8年ぶりの日本開催である。最大のテーマは、減速する世界経済を再び成長軌道に乗せること。安倍首相は財政出動を含む提案を用意していると聞くが、各国首脳の足並みはそれほどそろっていないようだ。

 ▼テロ対策、北朝鮮問題、防災。議題は山積みである。風光明媚(めいび)な開催地だけに各国首脳も景色を堪能できればいいが、そんな暇はあるのかどうか。ただ、伊勢神宮訪問は日程にあるそうだ。政教分離原則があるため参拝はしないものの、日本の文化について理解するには良い機会だろう。日本の文化といえば和歌もその一つ。ぜひ覚えて帰ってほしい一首がある。「集めては国の光となりやせむわが窓照らす夜半の蛍は」(長慶院)。G7で集めた英知を、必ず世界の光に。


悪竜退治

2016年05月19日 09時21分

 ▼凶暴な竜を退治する伝説は世界中に数多い。古代ローマにも聖ジョージが悪竜を倒す英雄物語があったようだ。寓話(ぐうわ)集『魔法の糸』(実務教育出版)で知った。聖ジョージは騎士だったのだが、平和な世の中のため活躍の場を見つけられずにいたらしい。国中をくまなく歩いてみたものの、見えたのは畑仕事に精を出す男たちや家事をしながら歌う女たち、元気にはしゃぎ回る子どもたちばかり。

 ▼騎士であることに誇りを持ち、戦いたいのにその仕事はない。聖ジョージもさぞかし困ったろう。今風に言えばアイデンティティーの喪失ということになろうか。元プロ野球選手の彼も、似たような悩みを抱えていたのかもしれない。覚醒剤取締法違反に問われている清原和博被告のことである。17日に東京地裁で初公判が開かれた。検察側は「引退後も注目される存在でありながら、犯行に及んだ」と論告。罪状認否で清原被告は「間違いありません」と、起訴事実を認めたという。

 ▼野球に関しては天才肌で、小学生のころからそれ一筋でやってきたというから、膝の故障でプロ野球の仕事ができないとなればつらかったに違いない。自分の存在に自信が持てない毎日でもあったろう。当然のことだが、それは全く言い訳にならない。ところで聖ジョージはその後、騎士だけができる仕事を見つけるため長い旅に出る。そしてついには、とある国を苦しめていた竜を倒し人々を救うのである。清原被告も心の中に巣くった悪い竜を退治することだ。剣ならぬバットで。


ことばの日

2016年05月18日 08時57分

 ▼洋楽を観賞しているとき、ふとした瞬間から外国語なのに日本語で歌っているようにしか聞こえなくなることがある。そんな錯誤を逆に楽しんでしまおうというのがテレビ朝日の深夜番組「タモリ倶楽部」の「空耳アワー」だ。視聴者が見つけてきた曲を毎回紹介している。例えばマイケル・ジャクソンの「スムース・クリミナル」は英語の曲だが、「パン!茶!宿直」と聞こえる部分があるといった具合。

 ▼同音の言葉の意味を置き換える言葉遊びの一つだろう。「マドンナ」を「まあ、どんな」にする類いである。きょうは「ことばの日」。それでこんなことを思い出したというわけ。ちなみにことばの日も「五、十八」の語呂合わせだ。日本人は昔からこの言葉遊びが好きだったようで、川柳や謎掛け、しりとりはもとより、「着たきり雀」「恐れ入谷の鬼子母神」といった地口もお手のもの。平仮名を1回ずつ全て使い、意味の通る文にした「いろは歌」は遊びの傑作と言ってもいい。

 ▼言葉遊びの名手といえば作家井上ひさしもその一人。英文学者高橋康也が共にバリ旅行をした折のことを随筆に書いている。遅々として進まないバスに皆がいら立ってきたとき井上氏はこう言ったそうだ。「こういうのをセンチメートル・ジャーニーって言うんですね」。一気に場が和んだらしい。昨今は揚げ足取りだ、言葉狩りだ、暴言だ、と言葉の周りがどうにも窮屈だ。井上氏流の粋な一言がほしいものだが遊びの伝統やいまいずこ。これでは「幸福」も「降伏」するしかない。


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