ど真ん中に直球を放り込んできましたね―。そんな印象を持った人も少なくないのでないか。日本漢字能力検定協会が毎年〝漢字の日〟(12月12日)に発表する「今年の漢字」である。「令」に決まった
▼新天皇即位による改元で「令和」の時代となったことに、明るい未来への希望を感じる人がたくさんいたようだ。今回は全国から21万6325票の応募があり、3万427票を獲得して断トツの1位だったという。何せ30年ぶりである。ことしの世相を代表する漢字としては誰もが納得する一字だろう。2位が「新」、3位が「和」だったことを見ても、改元がいかに人々の胸に深く染み込んだかが分かる。これを機に悪い流れを変えたい、との願いもあったに違いない
▼その気持ちは逆の意味で4位以下の漢字に表れていた。順に記すと「変」「災」「嵐」「水」、そして「風」「天」「税」である。一目瞭然だがどれも災害に関する漢字である。消費税増税も、まあ、庶民にしてみれば天災みたいなものだ。ことしも台風には悩まされた。中でも関東甲信から東北にかけて、長時間にわたり豪雨をもたらした10月の19号。堤防決壊や内水氾濫で多くの人が被災した。傷痕はほとんど癒えていない。「今年の漢字」に災害関連の字が並ぶのも当然だ
▼思い返すと昨年を代表する漢字も「災」だった。もともと自然災害の多い国とはいえ、大きいのがこう毎年では身がもたない。時代は令和になった。大きな災害はここでやめにしてもらいたい。漢字に込められたこのど真ん中直球の願いも天に届けばいいが。