コラム「透視図」

連休は美術館

2016年04月28日 09時38分

 ▼内閣官房参与として芸術文化政策の立案に関わった経験を持つ劇作家・演出家の平田オリザ氏は、消費不況を乗り越える手段についても一家言あるようだ。『芸術立国論』(集英社新書)に書いている。「モノ」が幸せをもたらしてくれない今、人々が切実に求めているのは「美しい自然環境や人生を豊かにしてくれる芸術作品」だとし、そういった文化を広範に創造することで経済を活性化すべきという。

 ▼なるほどその通りかもしれないと納得したのは、先日行った道立近代美術館の横山大観展が相当なにぎわいだったからである。生々しい話で恐縮だが、これなら芸術が消費を動かす力になるというのも決して大げさでない。さすが近代日本画の巨匠と感心した。今回はきらびやかで豪華なびょうぶ「紅葉」や輝く富士を描いた「神国日本」など、島根県の足立美術館が所蔵する名作50点を公開している。筆者のような門外漢が見ても圧倒されるのだから、愛好家にはたまらないだろう。

 ▼あすから黄金週間である。仕事で忙しい人もいようが、近場の美術館なら何とかなるのでないか。たまには日常を離れ芸術に触れてみるのも悪くない。連休中も函館美術館「フランス近代美術をめぐる旅」、旭川美術館「つかまえる風水森をめぐるイメージ」、帯広美術館「篠山紀信展 写真力」など各地で楽しみな展示がある。家族らと経済活性化に貢献してみるのもまた一興である。


新エンブレム

2016年04月27日 08時47分

 ▼陸軍の軍医でもあった森鴎外は、1884(明治17)年から5年間、衛生学を学ぶためドイツに留学した。当時の経験に想を得た小説を幾つか残しているが『うたかたの記』(90年)もその一つ。主人公が街で出会った花売り娘に心を奪われる話だ。娘の顔を見た瞬間の心の揺れをこう表現している。「濃き藍いろの目には、そこひ知らぬ憂ありて、一たび顧みるときは、人の腸(はらわた)を断たむとす」

 ▼鴎外はドイツ女性の美しい目を読者に伝えるため、日本の伝統色である藍色を採用したのである。小説の出来事に近いことがあったとしても不思議はない。そのとき故国の青く澄んだ海を思い出し、吸い込まれるような気になったのかも。こちらの作品も藍色の目に見えないだろうか。25日にようやく決まった東京五輪・パラリンピックの新エンブレムである。既に発表されていた4候補から選ばれたのは、藍色だけを使って日本らしさを強調したデザインのA案「組市松紋」だった。

 ▼製作したのはデザイナーの野老朝雄氏。五輪とパラリンピック、二つのエンブレムは45個の同じピースで組み立てられているそう。「平等」の意味を込めたらしい。最初は地味に思えたが、眺めているうち、色鮮やかな他案にはない「わびさび」の美しさが見えてきた。白地に藍色はよく映える。日本手拭いにも合うだろう。外国客にも喜ばれるのではないか。五輪の準備は波乱続きだが「藍より青し」の例えもある。このシンボルの下に結集し、大会を期待以上の色に染め抜きたい。


春の一日

2016年04月26日 09時06分

 ▼先の日曜日、春の陽気に誘われ、近所の琴似発寒川沿いの遊歩道と西野緑道を歩いた。函館では同日、五稜郭公園のソメイヨシノが開花したが、散歩しながら眺めると札幌もあと一息のよう。ただ紅梅が幾本かまぶしいくらい鮮やかに咲いていて、目を楽しませてくれた。河川敷からは親子連れや仲間同士でピクニックに興じる歓声が響く。焼肉のおいしそうな香りも漂う。暖かで穏やかな春の一日である。

 ▼同じ春の一日ではあるが、暖かで穏やかどころでなく、熱く激しい場所もあったようだ。衆院の補欠選挙が行われた北海道5区である。自民党が候補擁立を見送った京都と違い、こちらは与党陣営と野党陣営の正面対決。双方が次々と幹部を送り込む総力戦の様相を呈した。当のボクサーより、互いのセコンドやコーチの方がさかんにパンチを繰り出していたようだ。結果、花を咲かせたのは自民党新人の和田義明氏。町村信孝前衆院議長の「弔い合戦」で後継ぎとして面目を保った。

 ▼和田氏にはぜひ新風を期待したいが、さて今回の補選、夏の参院選の前哨戦として通常ならもっと騒がれたはず。そうならなかったのはこの週末、国民の関心が熊本地震の被災者に集まっていたからだろう。余震はなかなかやまず、大雨にも見舞われた。捜索活動は困難を極め、住民の避難に乗じた空き巣や窃盗事件まで発生しているそうだ。被災者らの心労はいかばかりか。少し前まで現地の人も穏やかな春の散歩を楽しめていたろうに。一日も早く、そんな日が戻ってくるといい。


うそのデータ

2016年04月23日 09時10分

 ▼今でこそ人情味あふれる時代小説を数々世に送り出している山本一力さんだが、意外にも若いころ「限りなく嘘をついた」そう。『わたしの失敗』(文春文庫)で知った。原因は浮気。そのため2度結婚に失敗しているらしい。つじつまを合わせるにはうそにうそを重ねるしかない。一力さんは当時を「少しでも偽ったら、そのごまかしは弓矢となり、後々まで自分に突き刺さってくる」と振り返っている。

 ▼不正を主導したとされる開発担当者も、今頃は自分に突き刺さった矢の痛みに耐えかねているのではないか。20日に発覚した三菱自動車の燃費データ偽装問題のことである。自動車の燃費を実際より良く見せ掛けるため、タイヤなどの走行抵抗値を意図的に低く国土交通省に提出していたとのこと。10kgと表示されたコメを買ったのに、袋の中には9kgしか入っていなかったようなものだろう。購入者がだまされたと言って怒るのも当然である。上げ底の商品をつかまされたに等しい。

 ▼供給先の日産に指摘されて分かったというのだから、モラルに乏しい企業と批判されても仕方ない。以前リコール隠しもあった。車種はまだ増えそうだが、筆者もかつて三菱車に乗っていたことがある。選んだ理由は性能と信頼の高さだ。その両方をなげうってまで守りたかったものとは何か。担当者だけの責任ではあるまい。一力さんは3度目の結婚のとき、こう考えてうそをやめたそうだ。「片方が嘘つきだったら、進む道は真っ暗だ」。まずは社内の闇に光を当てることだろう。


新フレーズ

2016年04月22日 08時58分

 ▼道産子であれば昔から耳になじんでいて、少し聞いただけですぐにそれが何か分かってしまうフレーズがある。例えば「お、ねだん以上」ニトリ、「一番そばに」ツルハ、「おはようとともに」道新スポーツ、という具合。つい口ずさんでしまう人もいよう。商品名を前面に出す形もあり、「出てきた出てきた山親父」の千秋庵、「三方六の柳月」など挙げればきりがない。耳慣れは身近さの証明でもある。

 ▼いずれも会社や商品を消費者に強く印象付けるものだろう。ニトリなら納得できる品質の良さを、ツルハなら生活に寄り添う姿勢を、道新スポーツなら情報が朝早く手元に届くことを、それぞれその言葉に乗せて伝えている。本来の目的とは方向が別なのだが、共通のご当地CMの記憶を持つ道産子同士、妙な仲間意識を覚えるのも一つの効果といえようか。そんなことを思い出したのも今月初め、北海道の新たなキャッチフレーズ「その先の、道へ。北海道」が決まったからである。

 ▼ある言葉が会社の顔になるのと同様、「その先の」は今後の北海道を体現するものになるのだろう。従来の「試される大地 北海道」は拓銀破綻の翌年1998年にできたからか、試練に立たされる北海道、との受け止め方も多かったように思う。そういう意味では当時を的確に捉えていたのかも。ともあれ北海道新幹線とともに走り出したこともあって、新たなフレーズからは、未来に向け可能性が開かれていく勢いを感じた。もちろん、それが「試される」のはこれからなのだが。


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