コラム「透視図」

学生百人一首

2016年01月29日 09時01分

 ▼東洋大学の第29回「現代学生百人一首」入選作品100首が発表された。一つ一つ眺めていくと、ついぞ忘れていたみずみずしい思いが懐かしく胸をよぎる。「通学路寝ぐせが揺れるそよ風にノンフィクションの「今日」が始まる」(能代高2年佐藤瑞穂)。若いころは人生経験が少なく、台本を書くこともできない。きっと毎朝、新たな出発点に立ち、少し不安は感じながらも目を輝かせているのだろう。

 ▼今回は全国から約5万7000首の応募があったそうだ。戦後70年でもあり、平和への願いを歌に託した作品も多かったという。数首引いてみたい。「教科書をあと何ページめくったら本当の平和はおとずれるのか」(米沢興譲館高2年渋谷拓)。平和でなく戦争ばかり載っている教科書はもどかしいだろう。「七十年そんなに長い月日かな忘れていくのは罪ではないか」(都立府中高3年岩塚彩咲日)。忘れまいとする強い決意が戦争を遠ざける。そんな心の叫びが聞こえるようだ。

 ▼外国の地で犠牲になった人を思いやる歌もあった。「戦争は今年節目の七十年今も待ってる戦地の遺骨」(駒込学園駒込中1年高石幹太)。今フィリピンを公式訪問している天皇、皇后両陛下も同じ思いだろう。天皇陛下はアキノ大統領主催の晩さん会で先の大戦に触れ、日米間の戦闘によって多くの人の命が失われたことを「日本人が決して忘れてはならない」と語ったという。平和とは、友好とは…。日本人誰もが、「ノンフィクションの今日」を試されている気がしてならない。


AIロボット

2016年01月28日 08時51分

 ▼特命外交部隊に所属するタケシ・コヴァッチは密命を受け、新たな体に人格や身体情報を「デジタル人間移送」される。任務実行の舞台は地球だ。英国作家リチャード・モーガンのSF小説『オルタード・カーボン』(アスペクト)の物語設定である。外交といえば聞こえはいいが要は紛争解決のため投入される特殊部隊のこと。人間の情報を別の体にダウンロードできるようになった27世紀の世界を描く。

 ▼現実離れしたアイデアを楽しむのがSFの面白みの一つである。ところがこれ、それほど遠い未来の話でもないのではと思わせられるニュースがニューズウィークWeb版に出ていた。米国防総省の国防高等研究計画局が、前線の兵士をサイボーグに変える技術の開発を進めているというのだ。脳にチップを埋め込み、外から情報を送って行動をコントロールする仕組みらしい。戦場用の思考や感情をプログラムとして用意し、脳にダウンロードするということか。怖いことを考える。

 ▼先頃開かれた世界経済フォーラム年次総会のダボス会議では、政財界の有力者や科学者が、人工知能(AI)を備えた自律型ロボット兵器の開発に警鐘を鳴らしたという。コンピューターが戦争の様相を大きく変えつつあるようだ。そんな物騒な現状を知ると、25日の産業競争力会議での議論には少しほっとさせられる。日本のAI活用は車の自動走行やドローンといった新産業育成に向けられているからだ。高度なAIで確実に人間を殺すロボットなどSFの世界だけで十分である。


北海道分県論

2016年01月27日 09時54分

 ▼NHKの連続テレビ小説『あさが来た』に出演していたディーン・フジオカさんが大層な人気らしい。役柄なのだろうが優しく行動力があり、顔立ちも端正とくれば女性ならずともほれる気持ちは分かる。少し前の回でそのディーンさん演じる五代友厚が絡んだ事件として、開拓使官有物払い下げが取り上げられていた。本道の話題が出た途端、ドラマを見る目にがぜん熱を帯びるのは道民だから仕方ない。

 ▼事件は薩摩藩の黒田清隆と五代が結託し、破格の条件で官有物を民間に払い下げようと画策したものとされる。藩閥政治の弊害ともいわれたがドラマでは、五代が大阪の商人たちをまとめ、民間の力で開拓を立て直そうとしたいわば英雄物語として描かれていた。なるほど人の心の中までは読めないものだ。そういう解釈もあるかと感心した。それで思い出したのが2008年のかんぽの宿売却騒動である。どちらも膨大に投資したものを安値で売る羽目に陥った。同じ構図に見える。

 ▼官有物事件はその後政争の具となったが、これをきっかけに国会開設の動きが活発になり、民権運動も進展するのだから何が幸いするか分からない。一方で北海道は事件の翌年、開拓使が廃止され、函館、札幌、根室の3県制度に移行したが人口の不均衡でこれも頓挫。130年前のきのう26日、北海道庁に一元化された。最近、道議会会派自民党・道民会議有志が過去何度目かの分県議論を始めた。開拓の志再びというところか。活性化のためにはいろいろな可能性が探られていい。


10年ぶりに

2016年01月26日 08時50分

 ▼寒中の今頃を表す季語に「冴ゆ」がある。「冴ゆる夜のこころの底にふるるもの」(久保田万太郎)のように使われる。りんとした雰囲気を持つ言葉だ。『ザ・俳句歳時記』(第三書館)によれば「寒さが極まって、澄んで透き徹るような感じ」という。この時期よく晴れた日など、さえた空気に気持ちまですっきり洗われたような思いのするときがある。胸のすくような出来事があった日ならなおさらだ。

 ▼大相撲初場所で大関琴奨菊が初優勝した。日本出身力士が賜杯を受け取ったのは実に10年ぶりのことだという。「出掛けるに身支度しかと冴ゆる朝」(稲畑汀子)。千秋楽の24日朝、琴奨菊関の家にもそんな風景があったのではないか。勝負がかかった一番では気合をみなぎらせ、大関豪栄道を土俵際で一気に突き落とした。技が決まった瞬間、テレビの前で歓声を上げた人も多かったに違いない。横綱3人に土をつけた取り組みもそうだったが、今場所は前へ出る相撲がさえ渡った。

 ▼インタビューで琴奨菊関は晴れやかにこう話した。「土俵上の勝ち負けより、自分が決めたことをやり切る気持ちでいた」。強みを生かすべく体づくりと技磨きを徹底したそうだ。外国人力士の健闘も見事で相撲界になくてはならぬが、やはり日本出身力士の活躍はうれしい。高校野球で強豪校の試合を楽しみながら、地元の応援にも熱が入るようなものか。地元といえば、北海道日本ハムファイターズが日本一に輝いたのも2006年のことだ。こちらも10年ぶりに、とならないか。


実は…

2016年01月23日 09時00分

 ▼このセリフに聞き覚えのある人も多かろう。「ある時は片目の運転手、ある時はインドの魔術師、またある時は大富豪…、しかしてその実体は」。片岡千恵蔵主演の映画「七つの顔の男」多羅尾伴内シリーズの決まり文句である。変装して悪者を倒し後で正体を明かす「実は」の形式だが、原型は歌舞伎の「やつし」にあるという。富澤慶秀氏の『だから歌舞伎はおもしろい』(祥伝社新書)に教えられた。

 ▼人気商売である歌舞伎が長い歴史を生き抜いてこれたのは、昔も今も人の心をつかんで離さないそんな技を持っていたからだろう。巧みな作劇術である。新年の話題の一つにその年の周年企業があるが、いわゆる長寿企業が幾星霜を乗り越えてこれたのも、歌舞伎同様、多くの人に認められる魅力があったからに違いない。本紙も1月1日付で道内に本社を置く建設関連の周年企業を伝えている。最高は120周年だそう。その数字が映し出しているのは、地域や顧客との信頼関係だ。

 ▼資本主義が高度化した今の社会で、企業を同じ形のまま維持するのは難しい。最近相次いでそのことを考えさせられる報に触れた。政府系ファンド産業革新機構が東芝に白物家電事業の買収を提案しているという。シャープの家電事業との統合を見据えた動きだ。パソコン事業では東芝と富士通、ソニーから分社したVAIOが統合に向かうらしい。昔の名前は今いずこ、となるのかもしれぬ。見知らぬ会社名が出てきたと思ったら「実は」。そんなことが当たり前の世の中ではある。


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