昔読んだSF小説に、『悪魔のハンマー』(ラリー・ニーヴン&ジェリー・パーネル、早川書房)という作品があった。いわゆる終末もので巨大隕石によって地球が壊滅的被害を受ける作品の先駆けである
▼アマチュア天文学者が未知の彗星(すいせい)を発見するところから物語は始まる。喜んでいたのもつかの間、その軌道が地球に向いていることが分かり世界は大混乱。皆の願いも空しく隕石は地球に激突した。この作品が優れているのは、残ったごく少数の人々の生きるための戦いを描いていることだ。終末だけでなく再生の物語にもなっているのである。1977年に発表された作品だが、既に隕石の衝突は危機を招くと広く知られていたのだろう
▼最近も新たな事実が判明した。地球の歴史上、生物が最後に大量絶滅したとされる1160万年前も、原因は隕石の衝突だったというのである。直径数キロの巨大隕石が海に落ちたらしい。海洋研究開発機構などの研究チームが先週、英科学誌に発表した。大量絶滅が過去何度もあったことは分かっている。ただ、この時代の原因はまだ解明されていなかった。研究チームは南鳥島付近の海底を調査し、隕石衝突を裏付ける物質を見つけたそうだ
▼別の研究だがこれもつい先日、東北大などが隕石から生命に欠かせない糖の分子を発見。地球生命の材料が宇宙から来た証拠をつかんだ。飛来した隕石が生命の絶滅と誕生、両方の物語に関わっていた事実が相次いで報告されたわけである。事実は小説より奇なり。やはり宇宙は奥が深い。当然ではあるが。