コラム「透視図」

東京都知事選

2016年07月15日 09時13分

 ▼和田アキ子さんの迫力ある歌声で1972年に大ヒットした名曲「あの鐘を鳴らすのはあなた」は、「あなたに逢えてよかった あなたには希望の匂いがする」と始まる。つい口ずさんでしまう人もいよう。新しい時代への期待を表す歌だが、作詞家阿久悠は著書『歌謡曲の時代』(新潮文庫)で、「暗い時代の中で書いた」と記していた。浅間山荘事件、テルアビブ空港テロと陰惨な出来事が続いた年だ。

 ▼この歌を思い出したのは、「希望の匂いがする」誰かを求めている今の東京都にぴったり合う気がしたからだろう。東京都知事選がきのう告示された。立候補を届け出たのは新人21人だったそうだ。見ると、ジャーナリスト、自民党の元防衛相、元総務相の前岩手県知事などなかなか多彩な顔ぶれ。悲惨な事件が相次いだわけではないが難問は山積している。舛添要一前知事の辞職に絡み都政は混乱し、東京五輪準備のドタバタも火はくすぶったまま。首都直下型地震対策も気になる。

 ▼本道は投票に関係ないとはいえ、日本の首都の顔選びである。無関心ではいられない。「都」より「党」のことを優先させるかのような政治家の裏舞台ばかり見せられると、心配にもなる。折しも英国の新首相に就任したテリーザ・メイ氏は強い指導力の発揮と新しい将来像の提示を決意表明したという。一国の首相でないにせよ都知事も重職である。さて、候補者たちの覚悟の程はどうか。「あの鐘」を鳴らした後で、議会と官僚に音を上げるようでは都民から希望がまた遠ざかる。


仲裁裁判決

2016年07月14日 09時30分

 ▼リーダーシップや国際的な協力関係について教えている米国のマーク・ガーゾン氏は、中国の大学での講義中、学生にこう質問されたそうだ。「私たちは嫌われているの?」(『世界で生きる力』英治出版)。北京五輪の開催を目前に控え、中国政府のチベット僧弾圧が世界から批判を浴びているときだったらしい。学生は報道で目にする諸外国の中国への風当たりの強さに、疑問と不満を持っていたのだ。

 ▼学生としてはそうとしか考えられなかったのだろう。さらにこう質問を重ねた。「私たちが発展しているから怒っているのでしょうか?」。もちろん問題は別のところにある。情報が十分でない学生なら分からなくても仕方ないが、国際社会の一員である現在の中国政府まで、何も聞かないふりをするのはいただけない。主権を主張していた南シナ海の「九段線」がオランダ・ハーグの仲裁裁判所によって、「法的根拠なし」と判決を下されたことに受け入れ拒否を表明した件である。

 ▼中国も批准している国連海洋法条約にのっとった正式な判断を認めないというのだから、各国から批判されるのも当然だ。かくれんぼをしていて鬼に見つかってしまったとき、「見つける方が間違っている」と文句をつけるようなもの。仲間に入れてもらえなくなるだけだろう。ガーゾン氏は学生たちに「多様な意見によって、みなさんはより賢くなり、この国はより安全になる」と伝えたそうだ。学生たちからは強い賛同の声が上がったらしい。中国政府には耳の痛い言葉でないか。


梅雨明け待つ

2016年07月13日 09時20分

 ▼一体いつまで降り続けば気が済むのか。天気予報を見るたびそんな思いにさせられているからだろう。「梅雨明けの待たるる日々と書き出しぬ」(野口南枝)の句が目に留まった。ことしはこの句に詠まれた心境に共感する人が多いだろう。九州地方にまた大雨の予報が出ている。3月14日の熊本地震発生からあすで3カ月たつ。なかなか収束しない地震と相次ぐ雨で、地盤は相当に緩んでいるに違いない。

 ▼大きな被害が出なければいいのだが。本道にいてさえ心配になる。きのうからきょうにかけての雨は、元台風1号の湿った空気が九州付近に流れ込んだためらしい。気象庁も「雷を伴い非常に激しく降る所がある」と大雨被害や土砂災害に警戒を呼び掛けている。地震の次は大雨と、地域を守る建設業者らも身を休める暇がないのではないか。梅雨明けは平年、九州北部が7月19日、同南部が14日ごろという。そろそろとはいえこればかりは天を仰いで待つしかない。全くもどかしい。

 ▼一連の地震についてはほっとする話題も出てきた。政府地震調査委員会が11日、熊本や阿蘇で震度5強程度の余震が発生する可能性は低下したと発表したのだ。これで梅雨も明ければ復旧復興に本腰を入れられる。一方、熊本県災害対策本部によると10日現在、93避難所で4966人が依然不便な生活を強いられているとのこと。発災直後から多くの被災者を支えてきた曲「見上げてごらん夜の星を」(永六輔作詞、いずみたく作曲)に勇気をもらう日々は、もうしばらく続きそうだ。


若者の参院選

2016年07月12日 09時10分

 ▼詩人河井酔茗に「ゆづり葉」の一編がある。木の葉の新旧交代を世の中に例え、子どもたちにその流れを優しく教えるものだ。「子供たちよ/これは譲り葉の木です/この譲り葉は/新しい葉が出来ると/入れ代つてふるい葉が落ちてしまふ」と語り始め、都会や書物などいずれ「凡てのものがお前たちに譲られるのです」と諭す。今回、18、19歳の若者たちに譲られたのは選挙権だったということだろう。

 ▼新しい有権者は譲られたものを手に何を思ったのか。取りあえず投票してみた人もいれば、慣れないものに戸惑っているうち一日が終わってしまった人もいよう。はなから興味がないからと無視を決め込む人がいてもおかしくない。各党と候補者をしっかり研究してから投票した人はそう多くないのでは。もっとも有権者全体でもそんな人は奇特な部類に入るだろうが。若者たちにしてみれば勝手に期待され、投票率が低いからとまた勝手に失望されるのは納得いかないかもしれない。

 ▼第24回参院選の結果はもうご存じの通り自民121議席、公明25議席で与党の圧勝。自公とも改選前を上回り、非改選と合わせて参院の半数を制した。対立軸を示したはずの民進は、本道で底力を見せつけたが全国では改選前議席に届かなかった。野党で気を吐いたのは、おおさか維新と共産くらいか。政治という「ゆづり葉」が若者たちに受け入れられていないのなら問題だが、多分そうではない。若者たちにはどの政党も枯れ葉に見えているだけだろう。それもまた深刻な話だが。


中間考査

2016年07月09日 09時10分

 ▼それを思い出させてくれるな、とお叱りを受けるかもしれないが、ことしも既に半分が終わった。年始に「ことしこそは」と新たな計画を立てた人も少なくなかったはず。さて、その中間考査の自己採点はいかがだったろうか。当方も数字に強くなろうと中学校数学のやり直し本を買い込んだものの、初日に少し開いただけでその後どこへやら。赤点は間違いなしである。全て計画通りの人がうらやましい。

 ▼そもそも月日の流れが早過ぎると文句の一つも言いたくなるが、まあ単なる負け惜しみだと分かってはいる。それにしても、年を重ねるごとに1年が短くなっていく気がするのはどうしたことか。「砂時計の天地を変うる一瞬も砂したたりて過去となる時間」(道浦母都子)。確かに存在する今という時間も、つかみ取ろうとしたときにはもう過去の砂山に埋まっている。世の中の出来事も同じだろう。ことしもこの半年、随分いろいろなニュースがあった。幾つか掘り出してみよう。

 ▼1月は軽井沢で痛ましいスキーバス転落事故があった。2月は米国大統領選でトランプ劇場が幕開け。3月は民進党発足もあったが道民としては北海道新幹線開業だろう。4月は最大震度7を記録した熊本地震を忘れるわけにいかない。5月は伊勢志摩サミット。6月は英国のEU離脱だろうか。後半も各方面で大きな動きが相次ぐことはまず間違いない。折り返し早々のあす10日はいよいよ参院選の投票日である。いわば今の政治の中間考査。貴重な採点の機会だ。無駄にはすまい。


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