コラム「透視図」

ゆうばりの映画祭

2016年02月27日 09時40分

 ▼ゆうばり国際ファンタスティック映画祭の季節がまた巡ってきた。夕張市の財政破綻後に再生した映画祭は、長く親しまれてきたメーン会場アディーレ会館が老朽化により閉館するという新たな困難に直面していた。選んだメーン会場は、山の上にある夕張北高を改装した「合宿の宿ひまわり」の体育館だった。鈴木直道市長が「バスケットボールもできる映画祭の会場」と笑いをとっていたユニークな会場だ。

 ▼ことしのオープニング上映は、平山秀幸監督の「エヴェレスト 神々の山嶺」。前人未到のエベレスト南西壁冬期無酸素単独登頂に挑む登山家の羽生と、その姿を追う山岳カメラマンの深町の生き様を描く作品。岡田准一、阿部寛、尾野真千子は、邦画で初めて標高約5000mでの撮影に挑んだ。CGでは決して感じられない臨場感ある映像が、映画を盛り上げる。あまりの迫力に見終わっても言葉が出ない。世界に誇れる山岳映画の誕生。その妥協のない制作姿勢に、深く感動した。

 ▼平山監督は上映の前に「夕張に、10年ぶりに新作を持って帰って来れたことが何よりうれしい。夕張はヒマラヤと同じくらい寒く、ふぶいていた。ふぶかなければ夕張ではないと思った」と話していた。吹雪の中、山の上の会場で山岳映画の上映が行われるとは。ハンディをプラスに変えた、こんなにもスリリングな映画祭があるだろうか。市民が「お帰りなさい」と迎え、映画人とファンが気さくに交流する楽しく温かな夕張の映画祭は、一方では困難に果敢に挑戦する映画祭でもある。


二・二六事件

2016年02月26日 09時11分

 ▼子どものころ「正義」という言葉は身近なものだったが、「大義」は聞いたことがなかったように思う。もっとも正義とはいっても、月光仮面や仮面ライダーといった「正義の味方」の話で、当時は正義も大安売りの感があった。先の大戦を思い起こさせる大義は戦後、日本の奥深くに沈められたようだ。その大義を勇ましく掲げ、軍部が暴走するきっかけにもなった二・二六事件からきょうで80年である。

 ▼この事件は、困窮する農村を放置する政府に義憤を感じた青年将校たちが、国家改造のために立ち上がったクーデターとされる。「君側の奸」として現役閣僚を殺害した上、宮城を占拠して天皇の同意を得ようとの狙いだったらしい。しかし天皇はこの暴挙にいささかも心を寄せることなく怒り、クーデターは失敗に終わった。ところがこれ以来、軍部は決起の再発をちらつかせながら政財界を脅し、軍部独裁の地歩を固めていったというのだから、歴史というのは皮肉なものである。

 ▼作家佐藤優氏は『大人のための昭和史入門』(文春新書)で、二・二六事件をイスラム過激派組織ISとの類比で解釈する。不正がはびこる社会を革命で理想の場所にしたいとの大義は、いつの世でも若者には魅力だというのだ。「大義に殉じるという思想は強い感染力をもつ」と警鐘も鳴らす。正義の味方に憧れるくらいならかわいいものだが、大義の大安売りが始まると、命もたたき売られる。ISを見てもそうだろう。愚を繰り返さぬために、事件から学べることは少なくない。


理想の上司

2016年02月25日 09時17分

 ▼新千歳空港で23日、日航機が機体の雪を解かすため誘導路に引き返したところ、エンジンから煙が出て乗客乗員165人が緊急脱出したという。こんなニュースを聞くと、2月下旬とはいえまだ厳しい冬のただ中にいることを思い知らされる。その一方で、この春就職する新入社員が下ろしたてのスーツに身を包んで現れ、ぎこちなくあいさつしている姿などを見ると、春遠からじと意を強くしたりもする。

 ▼新入社員が期待し不安にも感じていることといえば、仕事内容と会社の雰囲気、加えて上司の人柄であろう。明治安田生命保険が22日発表した「理想の上司」アンケートによると、2016年春の新入社員は、男性1位に松岡修造さん、女性1位に天海祐希さんを選んだそうだ。松岡さんは熱血で頼もしく指導力があるところ、天海さんは頼もしく姉御肌で知性的なところが支持されたとのこと。社内の上席で自らを省み、「自分は程遠いな」と、肩を落とした人も多いのではないか。

 ▼『現代日本人の意識構造 第八版』(NHK放送文化研究所)を見ると、今の20代の仕事意識の中心にあるのは収入でなく、「仲間と楽しく働ける」ことと「世の中のためになる」ことだという。本気で仲間を励まし続ける松岡さん、宝塚やドラマで多くの人に勇気を与えてきた天海さんの姿勢が、若者のそんな心に強く響いたのかもしれない。目指すべき人物がいるのは素晴らしいことだ。ただ若者よ、一つ覚えておいて。会社に入れば分かるが、「普通の上司」も結構頼りになる。


民本主義

2016年02月24日 10時19分

 ▼大正デモクラシーを先導した人物の一人、東京帝国大学教授の吉野作造は信念の人であると同時に、誰とでも仲良くなれる温和な人でもあったようだ。日本刀を持ち、殺気立って乗り込んできた青年が話を聴いて心服し、最後には弟子入りを希望したことまであったらしい。故郷の宮城県大崎市古川にある吉野作造記念館HPで紹介していた。その吉野が「民本主義」を提唱して、ことしで100年になる。

 ▼政治を「一般民衆の為め」とした民本主義の主張は、大変な議論を巻き起こしたそう。まだ特権階級が幅を利かせていた時代である。理論を説いた論文「憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず」は1916(大正5)年、『中央公論』1月号で発表された。同誌は100周年を機に、ことし1月号でその全文を復刻掲載している。吉野がこの中で特に大事としているのが「我に民選議員を與えよ」の主張だ。普通選挙の実現には、一般の政治参加が不可欠だったのである。

 ▼国会で今、議論しているのがまさにその政治参加の仕組みだ。衆院選挙制度改革で、定数配分をどうするか調整を進めているのである。ただ少し気になるのは定数削減にばかり目を奪われ、国政と遠くなる地域が出てくること。それは例えばTPP対策を練る上でもマイナスになろう。多少時間はかかっても地域の声が届く方策を探るべきでないか。最悪なのは党利党略だけで決着することだ。議員の立場は政治家のためでなく「一般民衆の為め」にある。吉野の言葉をかみしめたい。


人口減少対策

2016年02月23日 09時11分

 ▼昭和初年から40年頃までの子どもたちの息吹を感じ取ることができる『親から子に伝えたい 昭和の子どもたち』(学研)という写真集がある。モンペ姿での授業や遠足、川遊び、鬼ごっこ、紙芝居に群がるたくさんの顔…。さまざまな風景が切り取られているが、その特徴は一言で表せる。にぎやか、だ。家の中に外に、そして学校にいつでも大勢の子どもがいた。同30年代生まれの筆者の記憶もそうだ。

 ▼少子高齢化による人口減少は、そんな風景も過去に閉じ込めてしまったようだ。道が最近発表した2015年国勢調査結果速報によると、10月1日現在の道内人口は5年前の確定値比12万人減の538万人だそう。北見市の人口が丸ごと消えたことになり、事態は深刻というほかない。年齢構成を示すいわゆる人口ピラミッドは、高齢者が多く子どもが少ないためこまのような形だ。日本にまだ余力があるから回っているものの、そうでなければとっくに倒れていてもおかしくはない。

 ▼高橋はるみ知事も人口減少問題には危機感を持って取り組んでいるようだ。19日明らかにした新年度予算案では、子育てや子ども支援のための予算を厚くしている。道の財政事情は依然厳しいが、新年度もTPP対策や老朽インフラの維持更新、新幹線効果の全道波及と、懸案がずらり。ただ、豊かな未来を手にしたいのなら、子どもへの投資を欠かすわけにいかない。子どもは地域に希望の種をまき、にぎやかさを取り戻す。知事には全国が驚くようなアイデアと施策を期待したい。


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