コラム「透視図」

巨大空港

2016年10月19日 09時40分

 奇抜な発想で知られる作家筒井康隆の『現代語裏辞典』(文春文庫)に、「空港」の項の説明としてこうあった。「垂直離陸できる航空機ばかりになればただの空き地」。なるほどその通り。思わずニヤリとさせられたが、どうやら現実は逆方向に進んでいるらしい

 ▼『ニューズウィーク日本版』(10月11日号)の「未来の空港」特集によると世界は今、メガ・ハブ空港という巨大化競争の時代に入っているのだとか。現在はまだどこにもないが、年間1億5000万人以上の旅客処理能力を持つ空港を通称でそう呼ぶ。羽田の2倍の能力だ。同誌が「モンスター」と言うように途方もない規模である。近い将来、ドバイやイスタンブールで供用開始を予定しているという

 ▼そんな華々しい計画がある半面、世界の空港の4分の3は収益を上げていないというから驚く。黒字を目指して手を打ちたくとも地理的制約や増便の難しさ、施設拡張の限界、騒音など空港特有の課題が数多く目の前に横たわり簡単ではない。ところで、利便性の向上と魅力づくりが必要なのは、国内の地方空港も同じである。本道でも、新千歳と釧路、稚内、函館、旭川、帯広、女満別の7空港の運営権を一括で民間委託する取り組みが進む

 ▼先日も北海道経済連合会など道内経済4団体が国土交通省と道に、一体的運営で地域活性化の最大の果実が得られるよう提言・要望書を提出していた。つまり7空港を一つの巨大空港に見立てるわけだろう。楽しみである。どれだけの可能性がこの空港から未来に向け離陸していくのか。


熊本地震半年

2016年10月18日 09時39分

 拝啓 騒がしかった気候もようやく落ち着きを取り戻してきた晩秋の折、熊本の皆さんはいかがお過ごしでしょうか

 ▼あの震度7の大地震からはや半年が過ぎました。毎日の暮らしは、生活の糧は、そしてインフラは、順調に復興しつつあるのだろうかと気に掛かっています。東日本大震災の記憶もまだ生々しく残ることし4月、日本国内で再びあんな惨状を目にすることになろうとは、一体誰に想像できたでしょう。聞けば亡くなった方は、14日現在で震災関連死も含め121人に上っているとのこと。せめて被災後にけがや病気で亡くなる関連死がもっと少なければと悔やまれます。被害の大きさ、深刻さと同時に、被災者ケアの大切さも強く考えさせられたことでした

 ▼9カ所の避難所にいまだ188人の避難者がいることにも驚かされます。ことしは追い打ちをかけるように豪雨も相次ぎました。さらに復興に水を差す阿蘇山の爆発的噴火。軽々しいお見舞いの言葉もはばかられるほどの試練が続きますね。北海道もこの8月、上陸と接近合わせて6個の台風に襲われました。河川が氾濫して家屋や田畑が泥水にのまれ、交通網もズタズタです。亡くなった方もいます。甚大な被害でした。復旧には相当な時間とお金、労力が必要でしょう。あらためて身に染みています。牙をむいた自然は恐ろしい

 ▼今私たちは思いを等しくする者として一層願わずにいられません。熊本の皆さん頑張って。体調を崩しやすい季節の変わり目です。くれぐれもお体には気を付けて毎日をお過ごしください。    敬具


魔法の鏡

2016年10月15日 09時30分

 映画『ハリー・ポッターと賢者の石』(原作=J・K・ローリング)には、人の心の奥底にある願望を映し出す魔法の鏡「みぞの鏡」が物語の重要な小道具として登場する

 ▼主人公のハリーはそこに自分がまだ赤ん坊だったころ死に別れた両親の姿を見つけ、現実でないと知りながら鏡の魔力に捕われていく。見たいと切望しているものが目の前に映し出されるのだから、ハリーでなくとも離れ難くなるに違いない。さて、この枠組みについても、皆それぞれ見たいものだけを見ているのではないか。環太平洋経済連携協定(TPP)のことである。承認案と関連法案がきのう、国会で審議入りした。政府はアジア太平洋に大きな自由経済圏をつくれば、日本経済を今後も持続的に成長させていけるとばら色の未来を描く

 ▼一方、本道はじめ農業を基幹産業に据える地域では、いろいろな面で回復不能な打撃を受けるのではとの疑念がいまだ強い。鏡に映っているものが違うのでは議論がかみ合わないのも当然だ。日本が戦後、高い経済成長を遂げたのも自由貿易のおかげである。資源がない国の正しい戦略だった。ただ当時は大量生産・大量消費、今は付加価値・差別化の時代だ。本道は現在、高い価値を持つ農産物を軸に大きな成長戦略を描くが、TPPはその根底を崩しかねない

 ▼政府が見ている鏡の像が、本道には見えないのである。ところで魔法の「みぞの」鏡は「のぞみ(望み)」を逆さまにしたもの。見たいものしか見ないでいると、いつか現実に足元をすくわれることを暗示している。


幸せな結婚

2016年10月14日 09時55分

 詩人萩原朔太郎に、思想芸術や社会の諸相について丹念に批評した著書『虚妄の正義』(1922年)がある

 ▼内容は多岐にわたるが、結婚に関してはこうあった。「男と女とが、互に相手を箒とし、味噌漉しとし、乳母車とし、貯金箱とし、ミシン機械とし、日用の勝手道具と考へる時、もはや必要から別れがたく、夫婦の実の愛情が生ずるのである」。どうやら朔太郎さん、あまり幸せな結婚ではなかったようだ。詩人の結婚のことはさておき、ビジネスの世界ではこの考え方にも見るべきところがあるのではないか。トヨタ自動車とスズキが「お見合い」をしたそうだ。12日、業務提携の検討に入ると発表した。世知辛い世の中を渡っていくため、互いの必要を満たす良き伴侶が欲しかったということだろう

 ▼自動車業界は現在、駆動系の電化や自動運転技術、排ガス規制、新興国市場開拓などで激変期にあり、世界的な競争環境が厳しさを増していると聞く。独り身で生きていくには難しい時代なのである。今回はスズキがトヨタにプロポーズしたらしい。鈴木修スズキ会長が旧知の間柄で信頼し合う仲でもある豊田章一郎トヨタ自動車名誉会長に相談したのだとか。それにしても9月初めにその話をして、10月半ばの発表だから、よほど相性は良かったとみえる。当面は環境や安全技術で提携を考えていくとのこと

 ▼ところで今は対等な立場のようだが、いわゆる「格差婚」でもある。一方的に使った揚げ句、用が済んだら離縁とならぬよう、互いに「実の愛情」を育んでもらいたいものだ。


スーパーマン

2016年10月13日 09時40分

 目撃者たちのこの一連のやりとりを知らない人はたぶん、それほど多くないだろう。「空を見ろ!」「鳥だ」「飛行機だ」「いや、スーパーマンだ!」

 ▼崩壊の危機にひんした母星クリプトンから地球に逃れてきた主人公が、超人的力で大活躍する米国のヒーロー物語である。筆者は子ども時分にアニメ版を見た記憶しかないが、日本で最初のテレビ放映は1950年代後半ごろに輸入された実写ドラマだったという。スパイダーマンやバットマンなど米国の漫画雑誌、いわゆるアメコミから生まれたヒーローは他にも多々あれど、幅広い年代に知られ、愛される存在といえばスーパーマンが一番でないか

 ▼道具も仕掛けもなく自然体で強い。その分かりやすさが支持される大きな理由の一つだろう。こうした飛び抜けた能力を持つ正義のヒーローが米国では珍しくない。ところが同じ西側先進国でも、英国やフランスといった欧州にはほとんどいないそうだ。強さに価値を置く米国ならではの現象なのかもしれぬ。そんな米国気質が作り出した活劇とみれば納得もいく。大統領選候補ドナルド・トランプ氏が数々の暴言にもかかわらず、多くの支持を得続ける不思議のことである。最近も楽屋裏で女性蔑視発言をしていたことがワシントン・ポストにすっぱ抜かれた。第2回テレビ討論会でのヒラリー・クリントン氏への個人攻撃も低俗だった

 ▼「強いアメリカ」を求めてトランプ氏を支持していた人々もそろそろ、彼は「スーパーマン」でなく、ただの「鳥」だったと気付き始めているのでないか。


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