高校時代、窪田結衣はリーダー格の女子にいじめられていた。といっても現実の事でなく伊坂幸太郎の短編「メイクアップ」の話
▼グループのダンス発表で違う曲を教えられたり、ひどいうわさを流されたり―。会社で友人に打ち明けると、それが「プチ番長」の定番だという。「恰好いいとか、ださいとか、その判定をするのも、何をやるのかを決めるのも、わたしです、ってポジションをいつの間にか取ってる」。結衣が新商品を担当したとき、驚いたことに広告会社から営業に来たのがその女子だった。会っても結衣とは気付かない。一見野心的だが物腰は柔らかく気遣いもこまやか。人が変わったのかと思いきや、ほどなくうそやうわさで状況を操ろうとする本性が明らかになる
▼「三つ子の魂百まで」ということか。神戸市立東須磨小で20代の男性教師に壮絶ないじめを繰り返していた30代から40代の先輩教師4人も、突然いじめ体質になったわけではあるまい。報道で見る限り妙に手慣れた様子である。加害者は校内で影響力を持つ男性3人、女性1人。女性が「プチ番長」だったらしい。激辛カレーを目にすり込む、被害教師の新車の屋根に上って蹴る、「LINE」で別の女性教師に性的メッセージを送るよう強要する…
▼ここまでくるといじめでなく犯罪だろう。いい大人が、そして子どもにいじめの非を説くべき教師が何をしているのか。情けないのはそれだけでない。学校は問題を闇に葬ろうとした。先の小説で結衣は言う。「いじめっ子ほど、堂々と生きてる」。そんな学校でいいのか。