コラム「透視図」

道徳教育

2016年10月12日 09時40分

 聖人君子になりたいわけでなくとも、まともに社会生活を営もうと思えば道徳の観念は必要だろう。「鉄は熱いうちに打て」とばかり、義務教育に道徳の授業もできた

 ▼文部科学省が告示する小学校の学習指導要領を見ると、低学年向けにはこんなことが書いてある。「よいことと悪いこととの区別をし、よいと思うことを進んで行うこと」「うそをついたりごまかしたりしないで、素直に伸び伸びと生活すること」。中学年向けには「過ちは素直に改め正直に明るい心で生活すること」とある。道徳は実践してこそだが、最近あったこのことには少なからず考えさせられた

 ▼稲田朋美防衛相と菅義偉官房長官の事務所が白紙の領収書をもらい、自ら金額を書き込み政治資金収支報告書に添付していた件である。国会で不適切との指摘を受けた両氏は「法的には問題ない」とかわし、高市早苗総務相も同じ見解を示した。永田町では政治資金パーティーで会費を支払う際、白紙の領収書をもらうのが慣例なのだそう。自分で金額を入れるのでは領収書という名の錬金術になりかねない。その事実自体にも驚くが、一層重大な問題は国権の最高機関で、明らかにおかしなことを「問題ない」と答弁する道徳感覚である

 ▼子どもたちは国会を「よいことと悪いこととの区別」がつき、「うそをついたりごまかしたり」せず、「過ちは素直に改め」る大人たちが集まる場だと思っているだろう。実は都合の悪いことはごまかし、過ちも認めようとしない政治家が多いなら、まず政治家向けの学習指導要領がいる。


温かい言葉

2016年10月08日 09時30分

 秋も深いこの時期になると毎年思い出す一首がある。「『寒いね』と話しかければ『寒いね』と答える人のいるあたたかさ」(俵万智)。きょうは寒露。「おはよう」のあいさつに、「寒くなりましたね」の一言が加わるようになった

 ▼数日前まで関東以西では真夏日が続いていたが、本道は早くも雪の便りである。おとといからきのうにかけ利尻山や石北峠、旭岳温泉で雪が降った。朝晩のストーブが恋しい季節だ。札幌管区気象台によると、あしたの夜あたりから急激に気温が下がるという。最低気温はいよいよ本道全域で一桁台に突入である。向こう1週間も低気圧や寒気の影響で、降ったり晴れたりの不安定な天気が続くらしい

 ▼「女心と秋の空」。そんな決まり文句も思い浮かぶが、ことしは「ゲス不倫」との言葉が生まれるくらい男心がふらつく話ばかり多かった。言わぬが花である。ふらつくといえば冬タイヤの準備は万全だろうか。峠越えには用心が必要だ。これから大いに忙しくなる人もいよう。きのうの道議会で国の2016年度2次補正を活用する道の追加予算が可決された。経済対策を中心とする総額1228億円の補正である。大規模な台風被害復旧予算も程なく続く

 ▼例年なら日ごと寒さが増していくだけの時期だが、ことしは、こと工事に関しては過熱気味の様相を呈することになりそうだ。ただ季節は待ってくれない。昼間の時間は短く気象条件も過酷になる。危険の芽も増えよう。「寒いね」「無理しないで」。せめて温かい言葉の掛け合いで安全に作業を進めたい。


仕事争奪戦

2016年10月07日 09時30分

 スーパーで商品を籠に入れてレジに並んだとき、「何やら見慣れぬ機械があるな」とは思っていた。店員さんはいつも通り価格を読み取った後、「お支払いはこちらで」。以前はなかったその機械は無人精算機だったのである

 ▼最近、幾軒かでそんなことが続いた。それぞれ異なる系列の店でのことだから、同時に進んでいる流れだろう。正直言って、買い物の最後に妙な肩透かしを食った気分ですっきりしなかった。商売で最も大切なところは商品とお金を交換する部分だろう。いくら効率性と合理化を旨とするスーパーであってもそれは変わらない。客が欲しいものを手に入れ、店が利益を得る現場なのだから、自然、お互いに笑顔と感謝の言葉も出る。わずかばかりとはいえ心の交流もあろう

 ▼その小さな取引の締めが、「アリガトウゴザイマシタ マタノゴリヨウヲオネガイシマス」の電子音では何とも味気ない。笑顔も感謝も入り込む隙間がないではないか。まあ、当方の考えが古いだけかもしれないが。人の仕事を機械に置き換える動きが今、急激に進んでいる。レジのように単純なものだけでなく、AI(人工知能)やロボット技術の進展で相当複雑な作業もこなせるらしい。人と機械が仕事を奪い合う時代だ。世界経済フォーラムは年初に、最先端技術が融合する「第4次産業革命」により、5年先には主要国・地域経済圏で710万人が職を失うとの予測を発表していた

 ▼時流にあらがうのは難しいが、人が笑顔を失わぬ革命をと願うばかり。先のレジではもう、少し消えかけていた。


麻薬との戦い

2016年10月06日 09時30分

 メキシコの激烈な麻薬戦争を題材にしたミステリー作品にドン・ウィンズロウの『犬の力』(角川文庫)がある

 ▼人の命に露ほどの敬意も払わぬ残酷な殺し合いの描写に読むのが苦しくなり、何度ページをめくる手が止まったか分からない。麻薬組織は子どもでも老人でも情け容赦なく殺す。取引の邪魔になるからだけでなく、気分次第で簡単に命を奪う。ただの作り話ではないらしい。どうやらそれが現実のようだ。麻薬は売り手に金、買い手に快楽をもたらす。どちらも人を狂わせるものだ。まん延すれば社会は安定を失う。同じ麻薬問題の深刻化に悩むフィリピンでは、解決に意欲を燃やすロドリゴ・ドゥテルテ氏に国民は全てを託した

 ▼5月の大統領選で「麻薬関係者10万人を殺害する」とまるで犯罪小説のような公約を掲げて圧勝したのである。公約は実行に移され、就任後3カ月で約3000人を殺害したそうだ。国民の多くは「英雄」とたたえているらしい。ただ国際的には、やり過ぎとの声も多い。つい先日も自らの「麻薬撲滅戦争」をアドルフ・ヒトラーのユダヤ人虐殺になぞらえ、数百万人の中毒者を「喜んで虐殺する」と発言し非難を浴びた。口うるさい米国に対してはオバマ大統領を名指しし、「地獄に落ちろ」と言う始末。いやはや

 ▼とはいえ中東で過激派などの掃討を進める欧米も似たようなことをしていないか。その国にはその国なりの理があろう。自国が麻薬で荒れ果てるのは見たくないはず。氏の暴言や国際関係を雑に扱う態度はいただけないが、真意は見定めたい。


16年ノーベル賞

2016年10月05日 09時46分

 すぐもうかる話があるのに、手間と時間をかけて製品を作ったり人を育てたりするのは無駄なこと。程度の差こそあれ、そんな会社が増えているのは事実だろう

 ▼特に米国でその傾向が強いようだ。昨年、がんやエイズを治療する医薬品の権利を買い取り、1錠当たりの価格を13㌦から750㌦につり上げた会社が話題になった。医薬品業界だけではない。金融やITをはじめ、あらゆる分野で同じことが起きている。株主は短期利益ばかり追及し、達成できない経営者は首を切られる。目先のことにしか関心のない経営者が増えるのも当然である

 ▼日本でもその風潮が広がっているようだ。会社が採用に当たり即戦力を求めるようになったのもその表れでないか。効率よく利益を上げるためには、人を一から育てるコストも余計というわけ。どこかゆがんでいよう。そんな風潮の中である。性急な成果を狙わず基礎研究に励み、ついにノーベル賞を受賞したとの報に、胸のすく思いをした人も少なくなかったはず。ことしの生理学・医学賞に決まった東京工業大の大隅良典栄誉教授である。生命維持の根源的仕組み「オートファジー」を解明したそうだ。日本人のノーベル賞受賞が続く。いずれも長年の地道な研究が認められてのこと

 ▼教授は記者会見で、「『役に立つ』という言葉が社会をダメにしている」と語っていた。数年後に事業化できることにばかり目が向いているが、「『本当に役に立つ』ことは10年後、20年後、100年後に分かるのかもしれない」。科学分野だけのことだろうか。


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