当社のすぐ近くにある交差点が工事中のため、仮の横断歩道が少し斜めに付けられていた。真っ直ぐでないとはいえ角度は緩く、渡ってもさほど違和感はない。それを見て最近ニュースで知り、気になっていた話題を思い出した
▼あえて横断歩道を斜めにした交差点が愛知県にあるというのだ。車で左折するとき手前側が鈍角になる形で設置されている。通常形との傾き差は12度。気付かずに渡る歩行者も多いらしい。これが事故防止に目覚ましい効果を発揮しているそうだ。その秘密は運転者の視野角にあるという。交差点を曲がる際、斜め横断歩道の方が通常形より容易に必要な範囲を見渡せるのである
▼イメージはしにくいが図に書くと分かりやすい。右左折時の運転者の視点からそれぞれの横断歩道両端に線を伸ばしてみる。比べると斜め形の方が視野角が狭いのは一目瞭然。つまり横断歩道上の通行状況を把握するのに労力が少なくて済むのである。そこで生まれた小さな余裕が見落としの危険を減らす。交差点事故は国内死亡交通事故件数の50%以上を占める。ことし4月に高齢男性の暴走によって母子が死亡した東京都豊島区の事故も、5月に園児ら16人が死傷した大津市の事故も交差点だった
▼加害者の責任を問うのは当然だが、横断歩道を斜めにするような簡単な工夫で事故を減らす方法ももっと研究されていい。中京テレビはこの横断歩道で人身事故が従来の約3分の1になったと伝えていた。秋の全国交通安全運動が始まっている。これを機に一人一人があらためてできることを考えたい。