ことわざに「雨晴れて笠を忘る」がある。雨が降っている間は体の一部のようになっていた笠なのに、晴れたときにはもう頭の中から消えていたというのである。現代なら笠でなく傘だろう。当方もいったい何本買い直したものやら
▼どうやら人は忘れっぽい生き物のようだ。傘に限らない。電気もである。胆振東部地震から1年が過ぎ、それが当たり前に届けられるありがたさを忘れかけていた人も多いのでないか。台風15号の影響により暴風が吹き荒れた千葉県全域で停電が発生していると聞き、昨年本道で起きたブラックアウトの記憶がよみがえった。生活を支え、人の命を守る電気が断たれ、情報も物流も回らない。便利な暮らしも足元は案外もろいことを実感させられた
▼千葉県では発生から4日たったきのう午後5時現在でなお31万軒以上が停電していた。東京電力はもとより、北海道電力など全国から技術者が続々と現地に駆け付け、自衛隊や消防、警察と協力しながら早期復旧に努めているそうだ。道民がそうだったように県の方々もきょう回復するか、あしたこそはと祈るような思いだろう。酷暑の中でエアコンが使えず、冷蔵庫も役立たない。水が出ない所もあるというから事は緊急を要する
▼送電塔が2本倒れ、電柱損壊は数知れず。倒木のため現場に近付けない所も多く、作業は難航を極めているのだとか。一日も早く安全な暮らしが戻るよう願うばかりである。日本ではいつ災害に襲われるか分からない。晴れている日も傘のありがたさを忘れず、もしものときの備えもしておきたい。