コラム「透視図」

秋の臨時国会

2016年09月27日 12時14分

 ▼今月初めのこと。車を運転しながら何となくラジオを聞いていると、安倍晋三首相の動向を伝えるニュースが耳に入ってきた。「安倍首相は明日、羅臼を訪問する予定です」。これには驚いた。その日、首相は中国にいて、前の日はロシアでプーチン大統領と会談。それであしたが羅臼とは、何と忙しいことか―。ところがよく聞いてみると羅臼でなくラオスの勘違い。ASEAN首脳会議への出席だった。

 ▼自分のそこつさを棚に上げるつもりはないのだが、そんな聞き間違いをしてもおかしくないくらい、首相は国内外を飛び回っている。実際、14日には一連の台風被害を視察するため本道にも来ていた。第二次、三次内閣での訪問国・地域数は今月とうとう、延べにして100を超えたそうだ(外務省まとめ)。さらに、18日からは第71回国連総会出席で米国に向かい、その足で日本の首相として初めてキューバを訪問した。在任期間が長いこともあり着々と外交成果を積み上げている。

 ▼安倍首相の背中には羽でも生えているのではないか。もっとも、その羽もしばらくは封印である。きのう、秋の臨時国会が始まった。アベノミクスの加速、二次補正予算、環太平洋経済連携協定(TPP)の承認と重要課題が目白押しだ。今度は国会に腰を据え、日本経済の再生に取り組むことになる。所信表明演説では「未来」と「世界一」の言葉を何度も繰り返し、国民に、共に挑戦することを呼び掛けていた。さて、お手並み拝見である。そろそろ日本経済にも羽が生えていい。


イグ・ノーベル

2016年09月24日 10時00分

 ▼とっぴな発想に笑いたくなるが、妙に考えさせられもする研究に贈られるイグ・ノーベル賞の受賞者がことしも決まった。日本人では、東山篤規立命館大教授と足立浩平大阪大教授の2人が「知覚賞」に輝いている。上体を前に倒し、股の間から後ろを見ると視覚が変化することを証明したという。「股のぞき効果」というらしい。思わず「で、それが何か」と言いたくなるが、そこがこの賞のいいところ。

 ▼「それでも地球は回っている」と叫ぶ変わり者がいないと、世の中は進歩しない。それに、誰も目を向けないところに興味を持ち、精力的に研究するなんて素敵ではないか。股のぞきといえば京都の天橋立を眺める古くからの習慣が思い浮かぶ。長く続いてきた裏には視覚の変化という娯楽性があったわけだ。地球が回るほどのことでもないが、理由を知れば面白い。すぐ何か役立つこともなさそうだが、そのうちノーベル賞の大村智教授の微生物研究のように大化けするかもしれぬ。

 ▼このイグ・ノーベル賞、驚いたことに日本人が2007年から10年連続して受賞しているらしい。日本の研究者といえば真面目な印象だが、案外ユーモア感覚が優れているのか。多分そうではなく、真面目が高じていわゆる「オタク」になっているのだろう。それはそれで日本らしいが。ちなみに昨年は、バナナの皮がなぜあれほど滑るのかの研究で物理学賞を受賞したそうだ。最近、日本銀行の金融政策も滑りがちである。来年はこの謎の解明で経済学賞を受賞したりは、しないか。


夕暮れ時は

2016年09月22日 09時40分

 ▼現代短歌の旗手、穂村弘さんに夕暮れ時を歌ったこんな作品がある。「校庭の地ならし用のローラーに座れば世界中が夕焼け」。暮れ始めた校庭でふと目を上に向けると、空全体に燃えるような夕焼けが広がっていたのかもしれない。そんな美しい光景に思わず息をのむことは、誰にでもあるのでないか。ところがこの夕暮れ時、いわゆる薄暮時は車を運転する者にとって「魔の時間帯」ともいわれている。

 ▼徐々に暗くなっていくため視力と認識に差ができるらしい。はっきり見えるほど明るくはないのに、運転者はまだ見えるから大丈夫だと思っているのである。ヘッドライトがついていないことも多いため、歩行者も車に気付きにくい。筆者も運転していて、横断しようとする歩行者にヒヤリとしたことがある。透明人間が突然目の前で姿を現したように、「おいおい、一体どこから出てきた」となった。もちろん透明人間がいるわけもない。魔の時が視覚に影響を与えていたのだろう。

 ▼きょうは秋分の日である。「はなれゆく人をつつめり秋の暮」(山上樹実雄)。昼が夜に変わるまでの時間はますます短く、いま歩いていた人の姿もすぐに見えなくなる。交通事故の危険性が高まる時期だ。注意を促そうと、きのう、秋の全国交通安全運動が始まった。「透明人間」になりがちな子どもと老人の事故防止が重点だそう。歩行者らが危険を察知しやすいよう、運転者には早め点灯と適切なハイビーム使用を求めている。光で「魔」をはらおうというわけだ。励行したい。


こち亀終わる

2016年09月21日 09時09分

 ▼この口上を聞くと、どこかとぼけているが温かいあの笑顔を思い出さないわけにはいかない。「私、生れも育ちも葛飾柴又です。帝釈天で産湯使いました根っからの江戸っ子」。ご存じ松竹映画『男はつらいよ』の「寅さん」である。物語の中の人物だが、26年も続くシリーズともなれば、もし横町ですれ違ったとしても違和感はなかったろう。つらいときに元気をもらった人も、少なくないのではないか。

 ▼寅さんがいなくなって21年。その間も下町を拠点に大活躍していた葛飾のもう一人の人気者が最近、舞台を降りた。漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」で連載していた『こちら葛飾区亀有公園前派出所』(作・秋本治)の「両津勘吉」こと「両さん」である。1976年から17日発売号の最終話まで40年、一度の休載もなく続いてきた。突然の終了には驚いたが、作者によれば「不真面目でいい加減な両さんが40年間休まず勤務したので、この辺で有給休暇を与え」ようと思ったとのこと。

 ▼人並み外れた悪知恵と体力を持つ両さんが巻き起こす事件に、どれだけ笑わせてもらったことか。時折ある人情話も魅力の一つ。中でも両さんの子ども時代、女性臨時教員の見送りに東電千住火発の巨大煙突から感謝の垂れ幕を掲げる「おばけ煙突が消えた日」(89年)は名作だった。寅さん、そして両さん、常に元気をくれた下町のヒーローが去っていくのは寂しい。愛すべき不完全な人間と、それを包み込む世間のおおらかな雰囲気や下町の人情まで、どこかに消えていくようで。


傀儡がえし

2016年09月17日 09時50分

 ▼長編時代漫画『カムイ伝』で知られる白土三平の作品に、「傀儡(くぐつ)がえし」がある。「傀儡」とは操り人形のことで、人の心を自在に操って戦いを有利に進めるのが「傀儡の術」だ。甲賀の美女丸は任務遂行のため村の娘を「傀儡」に仕立てた後、術の本質についてこうつぶやいていた。「人を自分のつかいよいように作りかえるのさ」。物語では敵対する術者との息詰まるだまし合いが描かれる。

 ▼忍術といえば日本のお家芸だと思っていたら中国も負けてはいなかったようだ。国を挙げて他国に「傀儡の術」をかけていたらしい。時事通信が先日、伝えていた。聞くと中国政府と深い関わりを持つ中国企業が、オーストラリアの複数の政治家に多額の献金をしている実態が明らかになったのだとか。政策決定に中国の意向が反映されかねない、と憂慮する声が出ているそうだ。経費を肩代わりしてもらい、南シナ海問題で中国寄りの発言をする議員まで現れたというからあきれる。

 ▼なぜそんなことがといぶかる人もいよう。日本はもちろん米国、フランス、英国など民主主義国には外国人からの政治献金を禁止する法律がある。ところがオーストラリアにはそれがないそうだ。そこに中国が目を付けたらしい。それにしても金で他国の政治家に影響を与えるとは…。これまた時代劇だが、越後屋と悪代官のようではないか。白日の下にさらされれば、国際関係で最も大切な価値である信頼を失う。先の物語で甲賀の美女丸が身を滅ぼしたのも術への過信からだった。


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