コラム「透視図」

雪だるま

2016年09月16日 09時49分

 ▼小さな雪玉を雪山の上から転がすとどんどん大きくなる。雪だるまを作るときにも使う方法だから、北国の住人なら誰でも経験のあることだろう。借金が知らぬ間に膨らんでいくことの例えとして、「雪だるま式に」との形容もあるくらいだ。このところの東京で次々起こる劇場型の出来事をはたから見ていると、そんな雪だるまが巨大になり、手が付けられなくなっていく風景が浮かんできて仕方がない。

 ▼まずは東京五輪の施設群である。とりわけ新国立競技場の選考は大もめにもめ、ついには選考自体を白紙にしてやり直した。ことしに入ると舛添要一前都知事が公私混同疑惑で辞職に追い込まれ、都知事選が行われることに。途中、「都議会のドン」なる人物も登場して観客をざわつかせたが、最後に都民の心をつかんだのは小池百合子氏だった。どれもこれもお祭りのような騒ぎ。やれやれこれで幕引きかと思いきや、今度は築地市場の豊洲移転で新たな地下空間問題が噴き出した。

 ▼どうやら東京都政劇場には終幕というものがないらしい。全国ネットのワイドショーや報道番組は連日、新市場地下に盛り土がないことを鬼の首でも取ったように伝えている。このドタバタを外から眺め、都民の皆さん少し勢いがつき過ぎてやしませんか、と眉をひそめている人も多いのでは。聞くと都の対応が稚拙なのは事実だが、新市場が機能・安全面で要求性能を満たしているか調べてから騒いでも遅くはなかったろう。まあ、雪だるまを作るのが好きな人たちに何を言っても。


最近の若者

2016年09月15日 10時19分

 ▼古代遺跡を発掘し、残されていた文字を苦労して解読してみると、「最近の若い者はまるでなっとらん」と書かれていた、というのは有名な笑い話である。いつの時代も年寄りと若者の間には深い川が流れているということか。年寄りも昔は若者だったはずなのだが。以前、第一生命のサラリーマン川柳でこんな作品を読んだ。「OA化結局なじめずOB化」(老兵)。やはり川を渡る時期はあるとみえる。

 ▼一方、2015年度の現代学生百人一首(東洋大学)では、「八人の思いをのせたロボットがその手を伸ばす夢を掴みに」(八戸工高3年 荒瀬将文)の作品を目にした。当時は夢物語だった鉄腕アトムのようなロボットが、もはや身近な存在なのだろう。現代の若者はインターネットやスマホもやすやすと使いこなす。そんな彼らの姿を横目で見ながら「最近の若者は」と批判し、殊更世代間の断絶を強調するのは無益なことだ。むしろ若者が力を発揮できる場を用意した方がいい。

 ▼政府が12日、GDP600兆円の目標を実現するため、「未来投資会議」の初会合を開いたと聞き、未来への投資とはつまり、子どもや若者のための投資だろうと考えた次第。柱の一つはIoTやロボット技術、人工知能を産業に活用していく「第4次産業革命」だそうだ。若者の得意分野で雇用の受け皿が増えれば、今の賃金格差や不安定な就労状況も改善されよう。会議成功の暁には若者が、遺跡ならぬWebに「最近の年寄りは超クール」と文字を打ち込んでいるかもしれない。


リオパラ五輪

2016年09月14日 09時30分

 ▼素朴だけれど心に深く染み入る作品を数多く残した童謡詩人金子みすゞの一編に、「海とかもめ」があるのをご存じの人もいるのではないか。こう始まる。「海は青いとおもってた、かもめは白いと思ってた。/だのに、今見る、この海も、かもめの翅も、ねずみ色。/みな知ってるとおもってた、だけどもそれはうそでした」。くもりのない真っすぐな目でいつもの風景を見ていてふと気付いたのだろう。

 ▼みすゞほどの感性はないが、リオ・パラリンピックで躍動する選手たちの姿をテレビで見ていて、障害者と社会的弱者を「=」(イコール)で結んでいた自分の思い込みが、うそだったことに気付かされた。スポーツ用の義足を装着してトラックを走り抜ける陸上競技、相手が見えないまま戦う柔道、車いすでコートを駆け回るテニスやバスケットボール…。障害の程度によって細かくクラス分けされた種目の中で、選手たちは力を尽くし輝いていた。そこに弱者の影はみじんもない。

 ▼競技後のインタビューで、結果が満足のいくものであってもそうでなくても選手たちは必ず同じことを口にした。「諦めなければ夢はかなう」「頑張れば可能性は広げられる」。その言葉は障害のある人にもない人にも等しく向けられていたに違いない。相模原市の「津久井やまゆり園」が建て替えられることになったそうだ。入所者は新たな施設でまたそれぞれのパラリンピックを戦うことができるだろう。事件を起こした元職員も自らを呪縛するうそに、早く気付くといいのだが。


連続した警報

2016年09月13日 09時44分

 ▼きのうは本道のほぼ全域で青空を見ることができたようだ。久しぶりに穏やかな気持ちで一日を過ごせたという人も多いのでないか。「祝辞まづ祝ぎて台風一過かな」(松永恵子)。「台風一過」といえば悪天から解放され、晴れ晴れとした気分になることを表す言葉だが、ことしほどそれがしっくりこない年もない。一つ過ぎたと思ったらすぐに次、地面の乾かぬ間にまた次のがやってくるといった具合。

 ▼日本気象協会のHPで見たのだが、道内で2週間連続して出ていた警報が11日にやっと途切れたという。同日夕解除された羅臼町の大雨警報が最後だったそうだ。毎日どこかで警報が鳴り響くマンションに住んでいたようなもの。ただしこちらは自然が相手だから文句のつけようがない。8月12日からの1カ月間でも、警報の出ない日はたった4日だけだったという。この一連の台風の前に、被害は「56水害」を上回るのではとの予想を聞いたが、現実はその予想さえ超えてしまった。

 ▼8月に、本道へ上陸または接近した台風をあらためて時系列で並べてみると、9日5号、15日6号、17日7号、21日11号、22日9号、30日10号となる。近づくにつれ影響が出始め、過ぎた後も余波が残ることを考えれば、8月は丸々台風の腹の中にいたようなものだろう。川は決壊して泥が街や田畑をのみ、道路や鉄路は寸断された。亡くなった人もいる。今回は想定外だったが、次からは台風一過くらいで安心してもいられないということか。それにしても六過でようやく一息とは。


受信料の乱

2016年09月10日 09時40分

 ▼1637年に起こった島原・天草の乱は、キリシタン迫害に反旗を翻したものとして知られるが、根底には理不尽な重税に苦しむ農民の怒りがあったという。築城のため湯水のように出費し続けた藩主が、その埋め合わせで生活のあらゆる面に税を課していたのである。子を産めば「頭銭」、死者が出れば「穴銭」を取るなどはまだいい方で、棚を作れば「棚銭」、窓を付ければ「窓銭」を徴収したらしい。

 ▼とにかく名目を付けて徹底的に搾り取ろうとの魂胆だろう。これでは農民が生きていくことさえかなわない。一揆を起こされても当然ではないか。それを思い出したのは、さいたま地裁のワンセグ受信料訴訟でNHKが敗訴したとの報に触れたからである。NHKはテレビ視聴機能が付いた携帯やスマホの所有は受信設備の設置と同じとして、受信料の支払いを求めていた。さいたま地裁は先日、これに対し携帯などは設置に当たらないと、NHKの主張を退ける判断をしたのである。

 ▼NHKの存在意義や受信料自体に異議を差し挟むつもりはない。ただ取れるところからは取ろうという姿勢は、おごりと思われても仕方ないのでないか。受信料は義務である以上、税金と似た性格を持つ。ワンセグからも徴収するとの大きな規約変更であれば、消費税率を上げるときと同様に、あまねく丁寧な説明が国民に対し必要だったろう。そもそも携帯の販売店で、NHK受信料が発生すると聞いた覚えもない。今どき「下に~下に~」では、NHK藩も時代に取り残されよう。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

株式会社クリエイター
  • web企画
  • イイファス
  • 北海道水替事業協同組合

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

大林組、過去最高の690億円 19年度ゼネコン道内受注高
2020年05月07日 (2,303)
コストコ石狩倉庫店 21年春開業へ
2020年04月24日 (1,521)
ススキノラフィラ 20年5月に閉店 新ビルに建て替えへ
2019年10月18日 (1,458)
北海道新幹線のトンネル掘削は4.6万m、進捗率27%
2020年05月21日 (1,106)
日ハムBP起工式 大林組・岩田地崎JV竹中所長の思い
2020年04月14日 (1,002)

連載・特集

連載 おとなの養生訓new

おとなの養生訓
第183回は「ウイルスの弱点」。新型 コロナウイルスは石鹸で死滅します。 手洗いは有効な感染防止策です。

連載 深掘り

深掘り
地域発展には欠かせない、新技術と それを発展させたビジネスの創出。 〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想や アイデアを紹介します。

連載 大都市圏を狙う
カナモトの挑戦

大都市圏を狙う カナモトの挑戦
道内最大手のさらなる成長の鍵となる 〝ゼネラル・レンタルカンパニー〟の 展望を追いました。