コラム「透視図」

化かし合い

2016年11月10日 10時18分

 キツネとタヌキは世に長く生きると不思議な力を持つようになる、との言い伝えが古くからあるのはご存じだろう

 ▼『日本妖怪大事典』(水木しげる、角川文庫)には、キツネは「人や物に化けたり、幻術でたぶらかしたり、あるいは姿を見せずに人に取り憑いたり」するとある。タヌキもまた同じ能力の持ち主。似た者同士だからなのか時に化け比べをしたり、どちらが上手に人をだませるか競争したりするようだ。米国の大統領候補だった人物を動物に例えるのは失礼と承知した上で言わせてもらえば、今回の大統領選がキツネとタヌキの化かし合いのように見えて仕方なかったのである。まあ、どちらがキツネでタヌキなのかは想像にお任せするが、スキャンダルの暴き合いに悪態合戦だ。あれでは米国民もさぞや肩身が狭かったに違いない

 ▼きのう、その「泥仕合」にとうとう決着がついた。8日行われた投票で、共和党のドナルド・トランプ氏が勝利したのである。米国第45代トランプ大統領が誕生する。多分今ごろ、わが国の政財界関係者はこぞって頭を抱えているのではないか。何せ自国優先主義を臆面もなく打ち出している人物なのだ。安全保障面では他国の「ただ乗り」をやり玉に挙げ、TPPについては米国経済を衰退させるだけの愚策と切り捨てる。イスラム教信者や移民の拒絶に加え、エリート層への攻撃も激しい

 ▼一方で「強いアメリカ」を実現するための具体策は、一向に見えてこないのである。どうも化かされているような気がしてならない。正体が何かは分からないが。


落語のような政治

2016年11月09日 10時20分

 雑な言葉遣いをしたばかりに、物事も人間関係もひどく面倒なものにしてしまう。落語「大工調べ」はそんな噺である

 ▼借金のかたとして大家に大切な道具箱を取られた大工の与太郎が、棟梁の助言を受け謝りに行く。ところが与太郎は棟梁の口調そのままのべらんめえ調で、「長い物には巻かれとけ」との楽屋話まで言い放つ始末。怒った大家と知恵を付けた棟梁も険悪になり、ついには奉行所で白黒つけることに。いくら借金のかたとはいえ、大工から商売道具を奪うのはどうかしている。ただ「本当は悪いと思ってないが取りあえず謝ってやる」との態度では大家も腹の虫が治まるまい。与太郎と同水準とは考えたくないのだが、最近、政界でもこの落語と似た話があった

 ▼環太平洋経済連携協定(TPP)議案の強行採決に言及し批判を浴びた山本有二農林水産大臣が、いったんは陳謝したものの、すぐ「冗談を言ったら首になりそうになった」などと一連の騒動をちゃかすかのような発言をした件である。つまり山本大臣も、悪いと思ってはいないが取りあえず謝っておく口だったのだろう。冗談としては全く笑えないばかりか、TPPに懸念を抱く人々を怒らせる言動だ。これだけが理由ではないが、結果、与野党の対立は深まり与党が目指していた8日の衆院通過も見送られた

 ▼政治日程のことはさておき、気になるのは山本大臣の関心である。農林水産業の発展より永田町の内輪会の方にあるのではないか。毎度ばかばかしい話は落語で十分。政治家からはもっと国民に向いた話を聞きたい。


早すぎた大雪

2016年11月08日 09時12分

 きのうは立冬だった。とはいえまだ11月の初め。例年なら本道も、そろそろ雪に備えようかと考え出すくらいのころだろう

 ▼そんな心の隙を突いた6日未明からのこの大雪である。雪かき道具は、冬靴は、車のタイヤはと、あたふたしたお宅も多いのではないか。「立冬や白骨都市の観覧車」和田悟朗。観覧車だけならその美しさに感嘆の声も上がろうが、街を厚く埋め尽くす重たい雪を前にしてはため息しか出ない。冬型の気圧配置が強まったところに北極由来の寒気が入り込んだとのこと。寒い部屋でクーラーを最大にしたようなものだろう。自然に向かって文句を言うわけにもいかぬが、迷惑な話である

 ▼6日までの累積降雪量は、多い所で朱鞠内60cm(平年値15cm)、ぬかびら源泉郷54cm(同0cm)、西興部56cm(同3cm)もあったのだとか。札幌中心部も6日午前で23cmの降雪を記録。1953年の統計開始以来、11月上旬に20cm以上降るのは初めてというから、やや愚痴が過ぎたとしてもやむを得まい。「ふんはりと雪の田畑の起伏かな」黒川能女。雪もただ観賞するだけなら風情もあるが、生活に支障を来したり事故を招いたりするのはいただけない。実際、今回の雪が原因で死亡交通事故も起きていると聞く

 ▼あすからは急速に発達する低気圧の影響で、再び大荒れの天気になるそうだ。きのうはちょうど10年前、佐呂間の工事事務所で9人が竜巻に遭い亡くなった痛ましい災害の日でもある。このところ本道は相次ぐ台風上陸など異常気象続き。できるだけ心の隙を突かれぬよう用心を。


隣国の伏魔殿

2016年11月05日 09時50分

 東京都が移転計画を進める豊洲市場の盛り土問題で、石原慎太郎元都知事が「東京は伏魔殿だ」と言ったのはまだ記憶に新しい

 ▼「悪事・陰謀などが陰で絶えずたくらまれている所」(『広辞苑』第三版)の意味で使ったのだろうが、新施設の安全性や機能にほぼ問題がないと分かってきた今となっては、その言葉も落ち着き所を失った。と、思っていたら、何とお隣の国がその言葉を引き受けてしまったようである。韓国の朴槿恵大統領が親友の民間人女性に機密を漏らし、助言を仰いでいたことが明るみに出た件だ。それだけでも重大な事態だが、その女性は大統領との親密な関係を利用して数々の不正も働いていたという。大統領側近も深く関与していたというから、国政の中枢である大統領府がまさに伏魔殿と化していたわけである

 ▼検察の特別捜査本部は3日、職権乱用共犯と詐欺未遂の容疑で女性を逮捕。きのう、朴大統領も記者会見で疑惑について謝罪し、捜査には誠実に臨むことを表明したそうだ。理解に苦しむのは、発覚してすぐ朴大統領が秘書官ら側近8人を更迭して、問題をやり過ごそうとしたことである。これでは取り巻きが全て勝手にやったと言わんばかりではないか。しかもそれで収まらないと見ると今度は独断で野党に近い学者を新首相に指名し、当の野党から総スカンを食う始末

 ▼打つ手がことごとく責任逃れのように見える。国民も怒り心頭に発していよう。韓国ではよく政権末期に大統領絡みの醜聞が起きるが、魔がぬくぬくと育ちやすい環境でもあるのだろうか。


寂しい学校給食

2016年11月04日 09時40分

 おいしいものを食べると、ほっぺたは落ちないまでも自然と頬が緩んで笑顔になる。どなたにも経験のあることではないか。その年の新米を初めて口にするときもそうだ

 ▼先日立ち寄った北広島市内のくるるの杜に岩見沢の「情熱米ななつぼし」があり、早速購入した。わが家でことし最初の新米である。炊きたてのそれは香り高く、まずそれだけを頬張ってみたが口に新米特有の新鮮な甘みが広がり抜群においしい。新米そのものの味を堪能した後は一緒に買ってきた平飼い卵で卵かけご飯を楽しんだ。割ると黄身は色が濃くぷくりと盛り上がっている。ご飯にしょうゆを回し、かき混ぜずそのままのせた。この方が濃厚な黄身の味を感じられるのである。すぐに茶わん2杯を平らげた。食欲の秋とはよく言ったもの。新米も大いに貢献しているに違いない

 ▼いつもならこの時期、学校給食もその新米になり子どもたちの食育にも役立っているはずなのだが、札幌市内の一部の小中学校ではそうもいかないようだ。学校施設のボイラ用煙突でアスベストを含有した断熱材の落下が見つかり、給食を調理できなくなったのである。1日現在、給食の提供を受ける子学校も含め約30校、1万3000人の児童生徒が簡易給食で我慢を強いられているそうだ。パンと牛乳におやつ程度というから、育ち盛りの子どもたちには少なかろう

 ▼市教委のずさんなアスベスト調査が原因とのこと。飛散すると危険な物質ゆえ安易に処理するわけにもいかないが、一日も早くおいしい給食で子どもたちの笑顔を取り戻したい。


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