コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 179

トヨタとスズキが資本提携

2019年08月30日 09時00分

 日本経済の底力の源泉が中小企業にあるというのは神話のようなものだ―。小西美術工藝社社長を務める経済評論家デービッド・アトキンソン氏は『日本人の勝算』(東洋経済新報社)でそう分析する

 ▼中小企業は高度成長期に雇用の受け皿が大量に必要になって増えたもので、当時、屋台骨だったのは間違いない。ただ今では経営資源が分散されることで逆に生産性向上を阻害する要因になっているとの指摘である。では神話を抜け出し現実を生きるにはどうすればいいか。アトキンソン氏の処方箋は企業規模の拡大だ。学校が統廃合するように企業も集約の方向に進み、人や技術、知識、資金を効率的に運用して新しい価値を生み出すべきだという

 ▼中小企業はもちろん、世界市場の中では大企業もこの例外ではない。トヨタ自動車とスズキの狙いも同じだろう。おととい、両社が資本提携に合意したと発表した。これでトヨタ連合、日産・三菱連合、ホンダの国内自動車業界3陣営の競争は一層激しさを増す。自動車業界は今、自動運転やICT活用、電動化といった最先端技術の開発で異業種からの参入が相次ぐ大変革期。そんな中、スズキとしては単独では難しい自動運転技術を共同開発でき、トヨタとしてもスズキが圧倒的シェアを持つインド市場に飛び込める。経営資源をそれぞれの得意分野に集中できるメリットは計り知れない

 ▼人口が減り市場が縮小に向かう国内では特に、自動車に限らずさまざまな業界でこれから合併や提携、グループ化の流れが進むのだろう。神話の出る幕はなさそうだ。


厚労省改革に若手提言

2019年08月29日 09時00分

 童話作家宮沢賢治の代表作『銀河鉄道の夜』にはいささか奇妙な人物が幾人か登場する。「鳥を捕る人」もその一人。天の川の岸辺でツルやサギをつかまえる商売をしている人である。この世界ではお菓子のようで大層人気らしい

 ▼この鳥捕りがひと仕事終えて客室に戻ってきたときのせりふが昔から好きだった。「ああせいせいした。どうもからだにちょうど合うほど稼いでいるくらい、いいことはありませんな」。無理せず、かといって怠けたりもせず、足るに必要な分だけ働くのが充実感を得る秘訣(ひけつ)ということだろう。やさしい言葉で働き方の極意を教えられた気がしたものである。厚生労働省の若手職員が言いたいこともつまりそれでないか

 ▼現状に強い危機感を抱いた若手職員の検討チームが26日、同省を変えるための緊急提言をまとめ、根本匠大臣に提出した。果たすべき使命とままならぬ現実とのはざまで苦しみ、過剰労働で燃え尽きる人が後を絶たない事態を打開しようとの試みである。チームには「生きながら人生の墓場に入った」「毎日いつ辞めようか考えている」といった悲痛な声が続々と寄せられたそうだ。年金、少子高齢化など懸案は多いのに、深刻な人手不足や古い組織風土が業務を妨げる。時間無視の一部国会議員もそれに拍車をかけているのだとか

 ▼働き方改革の先頭に立つ官庁が、全省庁の中で最も「ブラック」とは情けない。職員だってひと仕事終えて、充実感とともに「ああせいせいした」と言いたかろう。墓場での仕事が国民のためになるとは到底思えない。


スタンプで痴漢防止

2019年08月28日 09時00分

 遊園地や有料イベントなどに行った際、急に用事ができて途中でいったん会場の外に出なければならないときがまれにある。さて用事は済ませた。再入場しようとポケットを探ると入れておいたはずの半券が見当たらない。参った―。そんな経験のある人、結構多いのでないか

 ▼最近は便利な仕組みを採用しているところがあって、会場を出るとき手にスタンプを押される。不思議なことにその時点では跡が見えない。ところが再入場時にブラックライトを当てると印影が浮かび上がり、入場資格を証明できるのである。「隠しインキ」と呼ぶそう。有色のスタンプを使っている会場もあるが、これなら半券を失くす心配もないし目にもうるさくない

 ▼朱肉のいらないはんこで知られるシヤチハタ(名古屋市)がこの特殊な「UV発色インキ」を活用し、「迷惑行為防止スタンプ」を開発。痴漢対策に乗り出すという。電車などで被害を受けたり目撃したりしたとき、さっと取り出し不届き者の手にポンと押印する。そのままだと見えないが、後でブラックライトを当てると〝手のひらマーク〟が浮かび上がる寸法だ。この証拠が目に入らぬか、というわけである。同社の「キャップレス9」と同形で、女性の小さな手にもすっぽりと収まるサイズ。ブラックライトも内蔵している

 ▼頼れる用心棒になりそうだが一つだけ気になるのは冤罪(えんざい)のこと。混んだ電車で間違って押印されてしまったらと想像すると恐ろしい。卑劣な痴漢にだけ反応する特殊インキがあればいいのだが、さすがにそれは無理か。


韓国がGSOMIA破棄

2019年08月27日 09時00分

 世間には話の通じない人というのがいるものだが、中には相手を困らせるためわざと意地悪なことを言うたちの悪い人もいる。落語の『居酒屋』もそんな噺

 ▼酔っぱらって入ってきた客に小僧が尋ねる。「さかなは何にしましょう」。客は「いるって言ったかね」。小僧が「じゃあいらないってことですね」と戻ろうとすると、「いらないとは言ってない。少しは俺に考えさせろよ」。はなから絡むつもりなのである。揚げ句に「品書きの最初にある口上を一人前持ってこい」だの、「棚の上のさかなが見にくいから棚をこっちに寄せろ」だの無理難題を言い出す始末。どうにもこうにも手が付けられない。最近の韓国もこの酔客と似たようなところがある

 ▼韓国が23日、日韓両国で軍事機密漏えいを防ぐため結んだ軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄を日本に通告したのもいい例だろう。韓国の言い分は「日本が輸出規制を強化した」「日本が後でGSOMIAを破棄すると韓国の面目がつぶれる」から。お笑い芸人サンドウィッチマンの一節を借りると、「ちょっと何言ってるか分からない」。輸出に関しては韓国がずさんな管理を適正化すれば済むことだし、GSOMIAに至っては日本に破棄する理由がない

 ▼酒でなく反日気分に酔って絡んでいるとしか思えないのである。居酒屋の小僧と同様、日本も難儀させられている。落語では最後に酔客の兄貴分が出てきて連れ帰る。韓国の兄貴分といえば同盟を組む米国ということになろう。ただ、ここまで酔っていては呼び掛けも耳に届くかどうか。


森ビルが日本一の超高層

2019年08月26日 09時00分

 見上げればいつでも眺めることのできる近県の人ばかりでなく、日本人なら老若男女問わず誰でも口ずさめる歌だろう。文部省唱歌の「富士の山」のことである

 ▼タイトルを聞いて頭の中で自然と歌が再生された人もいよう。一番はこんな歌詞だった。「あたまを雲の上に出し 四方の山を見おろして かみなりさまを下に聞く 富士は日本一の山」。高さといい均整のとれた立ち姿といい、まさに日本一の山である。森ビル(東京)が東京都港区の虎ノ門・麻布台地区市街地再開発で、高さ日本一となる地上約330㍍の複合ビルを新築するそうだ。四方のビルを見下ろす都心の新たなランドマークの誕生である。超高層建築で高さ日本一と聞くと興奮を覚える人も多いのでないか

 ▼区域面積8・1㌶に及ぶ再開発のメインタワーで規模は64階、延べ46万平方㍍。52階までがオフィスや商業施設、インターナショナルスクール、54階からが約90戸の住宅になる。最上階の高さは東京タワーの先端とほぼ一緒という。世界一の超高層は米映画『ミッション・インポッシブル6』の舞台になったドバイのブルジュ・ハリファで828㍍。かなり開きはあるが地域性を無視して高さだけ比べても仕方あるまい

 ▼再開発では他に高層2棟と低層1棟を配し、生み出した空間を最大限緑化。非常時のエネルギー自給能力や帰宅困難者の受け入れスペースも用意するなど、災害の多い日本で安心して働き、暮らす工夫が盛り込まれている。均整のとれた全体像もなかなかのもの。富士山のように世界に誇れる街になるといい。


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