コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 182

ホワイト国除外

2019年08月06日 09時00分

 個人で住宅や車といった大きな買い物をするとき、金融機関のローンに頼る人も多いに違いない。そこで気になるのが金利である。特に返済が長期にわたる場合、1%の違いもばかにならない

 ▼少しでも金利を低くするにはどうするか。まずは優遇項目を探すのが近道だろう。例えば給与振込のための口座がその金融機関にある、公共料金の支払いに使っているなど。そういった取引があれば最優遇金利が適用される。貯金はなかなか増えないが借金はどんどん膨らむもの。店頭金利より幾らかでも低いのは助かる。金融機関としても優良顧客を獲得できるメリットは大きい。そのため信用度に応じ、顧客をいわば「ホワイト」認定しているのである

 ▼政府が2日、輸出運用管理の優遇措置を与える「ホワイト国」から韓国を除外したことで、文在寅大統領が日本に怒りをつのらせているらしい。お門違いだろう。優遇項目もないのに、最低優遇金利を適用すべしと要求する人はいない。すこぶる単純な理屈である。各種報道によると文大統領はこの決定を受け、「加害者の日本が盗っ人たけだけしい」「今後発生する事態は全て日本の責任」などと激しく反発。韓国ではデモや日本製品の不買運動も起こっているそうだ。少し冷静になれないものか

 ▼軍事転用可能な物資が横流しされると分かっていて輸出する国がどこにあろう。「ならず者国家」の手に渡らない保証もないのである。韓国に求めているのは何も難しいことでない。日本にもう一度、信用という口座を開いてほしい。ただそれだけのことである。


Z世代

2019年08月05日 09時00分

 日本を代表する小説家三島由紀夫は大正14(1925)年生まれのため、昭和とともに歳を重ねた。陸上自衛隊市ケ谷駐屯地籠城事件で亡くなったのが昭和45年、45歳の時。昭和と対峙(たいじ)した作家といわれるゆえんである

  ▼その三島が小説『絹と明察』(新潮社)で登場人物に、若者に対するこんな文句を語らせていた。「若さが幸福を求めるなどというのは、衰退である」。時代の雰囲気というものだろう。今の若者がそんな言葉を聞けば、昭和の人間が何を勝手なことをと不満を漏らすのでないか。急激な高齢化により機会や収入など若者の不利が目立つ現代である。彼らは安定志向で戦いを好まない。夢に懸けるより確実に手に入る幸福を求める傾向が強いようだ

 ▼「Z世代」というらしい。90年代半ば以降に生まれ、低成長や不況のころに子ども時代を過ごした世代を指す。米国社会発祥の言葉だが日本も状況はほぼ同じ。やりくりに苦労する親を見て育ったため現実的でリスクを嫌うのが特徴だ。ただ、それは消極的で意欲に欠けるのとは違う。米誌『ニューズウィーク』で読んだのだが、「近年まれに見る有能かつ生産的な世代」になる可能性を秘めているのだとか。社会的な問題意識が高く、もうけることより自分の好きなことや大事なことに注力する性質がプラスに働くからだそう

 ▼どこの会社にとっても人材不足は深刻で、採用には頭を悩ませていよう。これから世に出ようとする、まさにその最前線にいるのがZ世代である。意識を変える必要があるのは昭和世代なのかもしれない。


かんぽ生命

2019年08月02日 09時00分

 純朴な見た目に抜群の歌唱力。1980年代に活躍した高田みづえさんを覚えている人も多かろう。ヒット曲の一つにサザンオールスターズの楽曲をカバーした『そんなヒロシに騙されて』(桑田佳祐作詞作曲)があった

 ▼「おまえが好きだと 耳元で言った そんなヒロシにだまされ 渚にたたずむ 踊りが上手で ウブなふりをした そんなヒロシが得意な エイト・ビートのダンス」。歌い出しはそんなだった。久々にこの歌を思い出したのは、誠実そうな見た目に抜群の信頼を誇る人々の不祥事が話題になっているからである。出来事にタイトルを付けるとすれば、「そんなかんぽに騙されて」というところだろうか

 ▼かんぽ生命保険で加入者に不利益を生じさせる乗り換え契約が多数見つかった問題である。日本郵政グループはおととい、今月以降、約3000万件のかんぽ生命全契約を調査すると発表した。不適切だった可能性のある契約が、18万3000件に上ることが明らかになったためだという。ことし6月の公表当初は数万件程度で、経営陣も法令違反はしていないとうそぶいていた。ところが調べを進めるにつれ5万が9万となり、ついに18万件。今後の全件調査であとどれだけ増えることか

 ▼保険販売を担当する郵便局職員にかけられた過剰なノルマや、新規契約偏重の営業手当制度が現場の暴走を招いたらしい。それも気の毒だが何より許し難いのは、情報に疎く人が良いお年寄りを標的にしたことである。「あなたが心配」と「ウブなふり」をしたのかもしれぬ。信頼は地に落ちた。


小惑星ニアミス

2019年08月01日 09時00分

 すんでのところで辛くも難を逃れる、ということが世の中にはままあるものだ。落語の「紙入れ」もそんな噺の一つである

 ▼兄貴分の旦那の奥さんといい仲になってしまった新吉。旦那の留守を見計らい、奥さんの手引きで家に上がり込んだまでは良かったが、旦那が思ったより早く帰宅してしまう。「こっちよ、裏から出て」。奥さんが機転を利かせ、旦那が表から入ると同時に何とか裏口から逃げ出せたのである。これをちまたでは俗にニアミスという。かなり危うい場面だったもののギリギリ衝突は避けられた。道ならぬ恋が露見するのは当事者にとって穏やかならぬ事態だが、こちらのニアミスの話を聞けばそれもかわいいものに思えてくる

 ▼先月25日に直径130㍍の小惑星「2019OK」が地球のすぐ近くを通過していたというのである。米国とブラジルの天文学者らが発見し、29日に正式に確認した。ぶつかれば東京都と同じ範囲を壊滅させるくらいの破壊力があったらしい。ニアミスで助かった。地球から7万2000㌔の通過ポイントはさほど近くないようにも思える。ところが天文学的にはかすったも同然だそう。地球上にはこうした衝突によってできたクレーターが165個あるというから、現実に起こらないことではない

 ▼とはいえ米航空宇宙局(NASA)は、今後数百年は地球軌道と交差する小惑星がないことを確認している。ただその先は、人為的に小惑星の軌道を変える手段も考える必要があるようだ。そっと裏に誘導してくれる機転の利く奥さんもいないのだから仕方ない。


重い障害を抱え参院に

2019年07月31日 09時00分

 ほぼ2年おきに刊行される米ミステリー作家ジェフリー・ディーバーの「リンカーン・ライム」シリーズ(文藝春秋)を毎回楽しみにしている。ライムは高度な科学捜査と分析力で事件の真相に迫る犯罪コンサルタント。冷酷非情な犯人との息詰まる知能戦が読みどころである

 ▼このシリーズが他のミステリーと一線を画するのは、ライムが四肢まひ者であること。動くのは左の薬指と両肩、そして頭だけなのである。先天的な障害ではない。ニューヨーク市警時代、捜査中の事故で脊髄を損傷したのだ。世界最高の犯罪学者と呼ばれていただけに辞めてからも警察からの協力要請は絶えない。体は動かなくとも頭脳は活発に働いているのである

 ▼先の参院選で「れいわ新選組」から筋萎縮性側索硬化症の船後靖彦氏と脳性まひなどを抱える木村英子氏が初当選した。両氏とも重い身体障害があるが、障害者福祉の充実に尽力してきたという。これからはライムのように経歴を生かし国民の負託に応えてもらいたい。れいわ新選組の政策は耳触りの良い言葉ばかり並び、大衆迎合的な印象が強かった。一方で両氏は極めて現実的かつ具体的な存在だ。参院本会議場では早速、大型の車いすを使うためのバリアフリー工事が実施された。それだけでも多くの人に何がしかの気付きを与えたろう


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