コラム「透視図」

トヨタとNTTが提携

2020年03月26日 09時00分

 英文学者の外山滋比古さんが著書『知的創造のヒント』(ちくま学芸文庫)で、補色の面白さに触れていた。違う色の絵の具を、混ぜるのでなく隣り合わせに並べると、眺めて見たときにそれぞれの色が持っていないような輝きが出るというのである

 ▼例えば「緑色と紫色をパレットの上で混合すれば、にぶい灰色になるが、点描によって並置すると輝いた真珠色に見える」そうだ。組み合わせの妙というものだろう。こちらも今まで見たことのない輝きを放つことになるのだろうか。全く違う色を持つトヨタ自動車とNTTが24日、資本・業務提携を結ぶと発表した。互いに2000億円を出資し、高速大容量通信を基盤に自動運転やエネルギー最適化を実現する最先端の「スマートシティー」構想を進めるという

 ▼トヨタは既に静岡県裾野市で、ICT端末となる「コネクティッドカー」を核にした未来都市建設計画を打ち出している。ここにNTTの情報技術を実装し、街づくりのノウハウを蓄積するらしい。全ての人と車と家をインターネットでつなげて調整するため交通事故や渋滞は起こらず、二酸化炭素の排出もない。国際標準のシステム構築に向け、世界が今最もしのぎを削っている分野の一つである

 ▼日本のトップ企業2社が組むことで、この分野でも一歩先を行く巨大IT4社「GAFA」に対抗できる形が整う。ただ、最先端の街には新しいインフラがいる。さらに多くの企業の参画が必要となろう。違う色を持った企業が一つのキャンバスに並ぶ点描画がどんな絵になるか、楽しみである。


株を守る

2020年03月25日 09時00分

 めったに起こらない幸運に頼って暮らすことほどばかばかしいことはない。それを教える中国の故事「株を守る」を知らない人はいないだろう。こんな話である

 ▼宋国に田を耕して生計を立てている男がいた。ある日、畑の中の切り株にウサギがぶつかり、首の骨を折って死んだ。これはうまい具合だとその日から男は働くのをやめ、楽してウサギが手に入るのを願いながら日々株を眺めて過ごすようになるのである。現実にそんな人がいるわけない、と思いがちだが案外そうでもないらしい。一部野党が国会でまた森友学園問題を持ち出しているのである。3年余り安倍首相を追及し続け、首相関与の事実は出てこなかったものの一定のイメージダウンには成功したため、あのウサギよもう一度といったところだろう

 ▼土地取引に絡む文書の改ざんに携わった近畿財務局職員の手記が公表されたのを受け、政府に再調査を要求したのだ。手記には秘密の暴露のような目新しい事実がなかったにもかかわらずである。首相主催の「桜を見る会」で政権が小揺るぎもしなかったのも腹に据えかねていたに違いない。ただ、野党はウサギがつまずくのを座して待つだけの敵失頼みから、そろそろ脱却した方がいい

 ▼今は新型コロナウイルスによる景気悪化や生活困窮、弱者へのしわ寄せなど政治が取り組まねばならない仕事が山ほどある。逆に考えれば政府をただしつつ、野党の見識を国民に知らしめる絶好の機会でないか。この期に及んで選ぶ国会戦術が「株を守る」では、宋国の男同様、世間から笑われるだけだ。


どうなる東京五輪

2020年03月24日 09時00分

 関東大震災では推定マグニチュード7・9の巨大地震が首都圏を直撃した。1923年のことである。建物はことごとく崩壊し、一面焼け野原と化した。全壊や全焼、流出した家屋は29万棟、死者は10万人を超えたという

 ▼当時の映像を見ると本当に想像を絶する。ところが日本はどん底から驚異の復興を遂げる。1940年に東京で開かれるはずだったオリンピックには、その姿を世界に広める目的もあったらしい。ご存じの通り日中戦争の勃発により日本は開催地を返上する。間もなく第2次世界大戦が始まったためこの40年と44年のロンドンは中止になった。奇妙な巡り合わせだが、東日本大震災から復興しつつある日本を国際社会にアピールする狙いがあったことしの東京五輪にも暗雲が垂れ込めている

 ▼新型コロナウイルスの世界的感染拡大で、7月の開催が危ぶまれているのだ。列強が足並みをそろえて日本に圧力を加えた戦前のABCD包囲網ではないが、見直しの動きは日ごとに強まってきている。各国の対策が正面撃破から感染ピークを抑えて集団免疫を獲得する長期戦に変わってきた以上、4カ月後に終息しているとは考えにくい。アスリートも練習や調整には苦労していると聞く

 ▼事ここに至っては仕方がなかったのだろう。安倍首相はきのうの参院予算委員会で「国際オリンピック委員会の決定は尊重する」と延期を容認する考えを示した。〝平和な社会を推進する〟五輪精神を実現するには、まずコロナからの復興を成し遂げることである。その先頭にホスト国の日本が立てるといい。


かっこいい

2020年03月23日 09時00分

 春分の日が過ぎ3月も下旬に入った。新型コロナウイルス騒動で気もそぞろになっている間も、月日は確実に巡っていたようだ。来週からは新年度が始まる。新人を迎え入れる職場も多いのでないか

 ▼「初仕事コンクリートを叩き割り」辻田克巳。「初仕事」は新年の仕事始めのことで冬の季語だが、この句は古い殻を破り新たな環境に飛び込む新人の決意を表しているようにも読める。今はさぞ気合が入っていよう。仕事について記憶に残っている話がある。成人式でのことだ。一人の若者がクロネコヤマトの仕事着のまま会場に入ってきた。受付の人が聞くと、「休むとお客さんに荷物を届けられなくなるから仕事の合間に立ち寄った」とのこと

 ▼式典が終わると急いで立ち去ろうとする若者に、受付の人はこれから記念写真の撮影があると伝えた。すると若者は「こんな格好だから…」と辞退しようとしたという。受付の人はすかさずこう言ったそうだ。「何言ってるのよ!あなたが一番かっこいいですよ」。宮崎中央新聞社の水谷もりひと編集長が著書『日本一心を揺るがす新聞の社説2』(ごま書房新社)で紹介していた逸話である。仕事に誇りと責任を持つ若者も立派だが、それに気付き声を大にして「かっこいい」と伝えた受付の人も実に素敵だ

 ▼建設現場なら作業服、事務や営業ならスーツ、介護ならジャージと仕事着にもいろいろある。新人たちもこの春から、そのどれかで身を包むことになるのだろう。それがどんな格好であれ、誇りを持って一生懸命働いている姿は間違いなくかっこいい。


新型コロナが世界の弱さあらわに

2020年03月19日 09時00分

 ことわざでいう「蟻の穴から堤の崩れ」はちょっとしたことが大変な事態を招くとの意味だが、物体は弱い所から壊れていく事実を示してもいる。木材が細い所から折れ、紙が薄い部分から破れるのを誰しも経験していよう。百均の充電ケーブルの端部がすぐに壊れるのもそこの作りが雑だからに違いない

 ▼一見問題がなさそうな物でも外から大きな力が加わるとすぐに弱点があらわになる。案外隠せないものである。これは社会も同じ。今は新型コロナウイルスが世界の弱い所をあぶり出している。欧州は感染爆発を起こしたイタリアが顕著だが、衛生意識の低さに加え、政府の感染予防対策より個人の意思を優先させる国民性が裏目に出た。EU域内で人の行き来が自由なのも災いしたらしい

 ▼非常事態宣言が出された米国では信じられるのは自分だけとばかり銃が普段の数倍売れているという。また中国は初期の段階で事実を隠蔽(いんぺい)し、世界に感染を広げるという共産党独裁の一番悪い部分が出た。ただ最も危ういのは日本を含め各国が共通して持つ不確かな情報に踊らされる弱さだろう。この程度の感染拡大でリーマンショック以上ともいわれる金融危機など本来起きるはずがない。過剰な自粛により経済活動も停滞を強いられている

 ▼病気をなめてはいけないが、恐れすぎてパニックに陥ってしまっては冷静な判断ができない。現下の世界はそんな危険な状態に近付きつつあるのでないか。うかうかしていると、新型コロナウイルスでなく疑心暗鬼の穴から世界の堤は決壊するかもしれない。


ヘッドライン

ヘッドライン一覧 全て読むRSS

航空写真や建設予定地の位置情報などを重ねて表示できる地図ベースの情報サービスです。
  • 川崎建設
  • オノデラ
  • web企画

お知らせ

閲覧数ランキング(直近1ヶ月)

当別太に新駅 当別町とロイズがJRに要望書
2020年03月06日 (4,315)
コストコ 石狩湾新港に道内2店目を検討
2019年12月12日 (3,315)
百年記念塔の解体近づく 価値認める建築家有志が反発
2020年03月15日 (2,554)
道央圏連絡道路泉郷道路8.2kmが開通 札幌開建
2020年03月11日 (1,950)
新型コロナウイルス感染症で産業用マスクが品薄
2020年02月06日 (1,679)

連載・特集

連載 おとなの養生訓new

おとなの養生訓
第180回は「マスク」。まだ感染して いない人の予防としては無意味です。 感染防止にはこまめな手洗いを。

連載 深掘り new

深掘り
地域発展には欠かせない、新技術と それを発展させたビジネスの創出。 〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想や アイデアを紹介します。

連載 ノボシビルスク シベリアのビジネス発信地

ノボシビルスク シベリアのビジネス発信地
本道企業から注目を集めるノボシビルスク。高度人材の輩出地、新ビジネスの発信地の最前線をレポートする。