コラム「透視図」

台風15号の強風

2019年09月11日 09時00分

 江戸時代の絵師歌川広重が江戸から京都までの宿場風景をいきいきと描いた浮世絵に「東海道五拾三次」がある。永谷園のお茶漬けに付録として入っているカードの絵を思い出す人も多いだろう

  ▼このうち44番目の「四日市」は、三重川のほとりの一本道を草木が大きく揺れるほどの強風が吹き荒れている場面。その中を歩く一人の旅人はかっぱを必死に押さえ、もう一人は飛ばされた編み笠を慌てて追いかけている。風景に動きを持たせることで、本来は目に見えないはずの風を見えるようにした広重の技だろう。この名浮世絵師の表現する風情とは趣を異にするが、今回の強い台風15号でも見えないはずの風が見えるようになった出来事が多々あった

 ▼君津市で東京電力の送電用鉄塔2基が倒壊したのをはじめ、市原市ではゴルフ練習場のネットと支柱が倒れ住宅複数を直撃、羽田空港の駐車場では改修中の工事用足場が崩れた。不幸なことに強風にあおられて転倒し、頭を打って亡くなった女性もいたという。千葉県は特に被害が大きかったらしい。最も驚いたのはやはり市原市の山倉ダムで発生した水上メガソーラー火災である。映像で見るとかなりめくれ上がったり折り重なったりしていた

 ▼投資回収率の高さから急増したメガソーラーだが安全性や環境面で配慮不足の施設もあり、地震や豪雨のたびに事故が伝えられる。自然に優しい開発がなされているかいま一度点検が必要だろう。ともあれメガソーラーを含め構造物は、広重が風の絵に使えないくらいしっかりと安定していてほしいものである。


10月から消費税

2019年09月10日 09時00分

 山登りをする人はお分かりと思うが、「偽ピーク」と呼ばれるものに出くわすことがたまにある。山頂の手前にあるそれとよく似た形状のとんがりのことだ

 ▼これがなかなか登山者泣かせなのである。偽ピークを山頂と思って息も絶え絶えにたどり着いてみると、その先に本物がそびえ立っているという具合。もう山頂までそれほど遠くではないものの、体力を使い切ってへとへとの中でのこの距離はかなりこたえる。消費税も似たところがありはしないか。増税まであと20日あまり。息切れへの不安がにわかに高まりつつある。8%から10%への上積みは2%にすぎない。ただ8%の偽ピークで青息吐息だった消費者には、そこから山頂へ続く2%の道のりが数字以上に険しく感じられよう

 ▼ほとんどの飲食料品が軽減税率の対象になるとはいえ、生活に欠かせない電気やガス、上下水道、灯油にはそのまま上乗せ。もとより家具や家電、エコカー減税対象外の車といった値が張る商品は2%でもばかにならない。来月から10%が適用され、ほどなく冬である。特に電気代や暖房費がかさむ本道はじめ積雪寒冷地にとっては別の意味でも寒い冬となろう。光熱費関係は経過措置もありすぐに上がるわけではないが、猶予もせいぜい1、2カ月だ

 ▼いざ始まると日本経済に大ブレーキがかかってもおかしくない。そうならないよう、政府も疲れた国民を頑張って登らせる分厚い補正予算を組むのだろう。そうして必死にたどり着いてみると、その向こうで財務省がさらに高い15%の山頂をそびえさせていたりして。


日ロ首脳会談

2019年09月07日 09時00分

 ロマン主義詩人の代表格とされる島崎藤村の詩集『若菜集』に、「逃げ水」と題する一編があった。藤村らしい叙情あふれる作品である

 ▼冒頭の部分を引く。「ゆふぐれしづかに ゆめみんとて/よのわづらひより しばしのがる/きみよりほかには しるものなき/花かげにゆきて こひを泣きぬ」。夕暮れ時に過ぎ去った恋の思い出にふけろうと、二人しか知らない秘密の場所へ行き泣いていた、というのである。失くした恋を、追っても追ってもつかまえられない逃げ水になぞらえているのだろう。安倍首相も目の前に見えてすぐにつかめそうに思っていた水が、再び遠くに離れてしまったように感じているのでないか。北方領土問題を含む日ロ間の平和条約締結の件である

 ▼5日にウラジオストクでプーチン大統領と首脳会談を開いたものの、交渉を前に進めることはほとんどできなかったようだ。2016年の日本、17年のAPECでの首脳会談あたりまでは事態が大きく進展しそうに思えていたのだが。今は首相がプーチン氏に、一方的にラブコールを送っているように見える。早期返還を願う日本にとってはやきもきさせられる話でないか。今回、両首脳が合意したのは「未来志向」で交渉を続けることだけだったそうだ

 ▼プーチン氏は最近の変動著しい大国間のパワーバランスを眺めて、もう少し日本に「未来」という逃げ水を見せておこうと判断したのかもしれない。ロシアは昔からしたたかな国である。日本も陰で「泣きぬ」では話にならない。ロシアに本物の水を出させる方策を練らねば。


防災関係予算

2019年09月06日 09時00分

 暗い中に稲光が走ると周囲が一瞬明るくなり、見慣れた風景もどこか異様に感じられる。昼でも気持ちの良いものではないが夜だと恐ろしさが増す。「いなびかりみなとみらいに空地あり」太田良一。3日の横浜ではそれが延々と続いたらしい。皆気の休まる暇もなかったろう

 ▼雨の降り方も激しく、一時は大雨警報も発表された。横浜駅は水浸しになり市内では内水氾濫も発生。横浜ではめったにないことだそうだ。豪雨被害のニュースが引きも切らない。三重では5日明け方までの6時間雨量が200㍉を超え、土砂災害警戒情報が出された。先月26から29日にかけても佐賀や長崎、福岡を中心に雨が降り続き、厳重な警戒が呼び掛けられたばかり。その都度、堤防決壊や土砂崩壊、床上浸水、農地被害におびえねばならない

 ▼自然災害には大きく分けて天から来るものと地から来るものの二種類ある。天由来のものの代表格が雨なら、地由来のもののそれは地震だろう。胆振東部地震からきょうで1年である。思いはどうしても災害に向く。気になるのは防災関係予算。実に心もとない。小泉政権が2005年度に3兆円に減らし、民主党政権が10年度に過去30年間で最低の1兆3000億円にまで削った。東日本大震災で上積みされたものの、再び減り本年度当初は2兆円台半ば。災害復旧に多くが費やされるため予防に十分手当てできないのが実情だ

 ▼頻発する豪雨、予測される巨大地震。いつか見た映画を思い出す。ゴジラが襲ってくると分かっているのに、防御する手段がまるで足りていなかった。


どの国で働きたい?

2019年09月05日 09時00分

 英金融大手HSBCホールディングスが先日発表した「海外駐在員が住みたい・働きたい国ランキング」の結果を見て、いささか考えさせられた。33カ国中、日本がビリから2番目だったのである

 ▼しかも調査対象は先進国ばかりでない。いわゆる発展途上国も含まれている。日本はどの国よりも素晴らしいなどと言うつもりもないが、まさか32位とは。ちなみにベスト3は順にスイス、シンガポール、カナダだった。各国は生活の質や収入、政治的安定性、キャリア形成、子どもの教育といった多くの指標で比較され、それを総合したスコアで順位が決められる。個別の指標を見ると日本は政治的安定性が6位、生活の質と経済的安定性が13位。これだけ見るとさほど悪いわけではない

 ▼ところが収入とワークライフバランス、子どもの教育は何と最下位の33位。子どもの友達のつくりやすさも32位と際立って低い。長引くデフレによる収入の低迷や働き過ぎ、閉鎖的な社会環境が日本の評価を下げているようだ。身近な国としてはインド18位、米国23位、フィリピン24位、中国26位など。例えば中国は生活の質と心身の健康が著しく低いものの収入は極めて高く、子どもの成育環境も悪くない

 ▼日本はことし4月、深刻な人手不足解消のため入管法を改正。外国人材受け入れ増にかじを切った。ただ、国際社会の目はこの順位の通りである。研修に名を借りた外国人の低賃金労働も名を落とす一因になっていよう。来月からは消費税も上がる。政府は受け入れの旗を振る前にもっとやることがあるのでないか。


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