コラム「透視図」

9月入学

2020年05月01日 09時00分

 仲間と共に数々の危機を乗り越え成長する少年の姿を描いた『ハリーポッター』シリーズを映画や小説で子どもと一緒に楽しんだ人も多いに違いない。一話目の「賢者の石」にこんな場面があったのを覚えているだろうか

 ▼それは8月の最終日のこと。ハリーは次の日にキングスクロス駅へ行かねばならない。ただ、一人で行くには遠過ぎる。そこで居間に下り、バーノンおじさんに車で送ってほしいと頼むのである。なぜ駅に向かう必要があったかというと、ホグワーツ魔法学校行きの汽車に乗るため。ハリーは9月の新入学が決まっていたのである。日本人ならここは少し違和感のある部分かもしれない。日本は入学といえば4月だ。ところが欧米ではほとんどの国が9月なのである

 ▼日本もことしから9月に変えようとの声がにわかに高まってきた。新型コロナウイルスの感染拡大で休校措置が長引いていることを踏まえ、この際前半はあきらめて、いっそのこと世界標準に合わせてしまおうという話らしい。全国知事会が4月29日のテレビ会議で国に検討を促す提言をまとめ、安倍首相も同日の衆院予算委員で選択肢として視野に入れる意向を表明した。歯車が今秋の入学に向け一気に回り出した感がある

 ▼行政の長たちのあまりに短兵急な進め方に、学校現場は青ざめていよう。内心のつぶやきが聞こえるようだ。「そんなことができるわけない」。もし実行するにしても数年掛けて計画的に進めるべき問題だろう。それとも全国の知事さんたちは、全ての懸案を一挙に片付ける魔法でもお持ちなのか。


虫の居所

2020年04月30日 09時00分

 日本人は古来、虫の姿や鳴き声に風情を感じてきた。清少納言が『枕草子』に「虫は、すずむし。ひぐらし。てふ。松虫。きりぎりす。はたおり。われから。ひをむし。蛍」と一つ一つ名を挙げ、めでていたくらいである

 ▼一方で体の中には別種の虫が住んでいると考えていたようだ。「虫の居所が悪い」というあれである。虫が感情を刺激するため、虫が好かなかったり、腹の虫が治まらなかったりするわけである。この虫、活動を始めたことに本人も気付かないし、ましてや外からは全く見えないから始末が悪い。仏文学者の河盛好蔵も著書『人とつき合う法』(新潮社)で、人間同士のつき合いの中でも「〝虫のイドコロ〟というヤツがいちばん厄介で、あつかいにくい」と嘆いていた

 ▼今、日本中でそんな虫の居所の悪い人が増えているように見える。あながち気のせいでもあるまい。新型コロナウイルスのせいで外出や業務が制限されたり、必要なマスクや消毒液が手に入りにくくなっているからだろう。最近は「自粛警察」なる言葉もあるそうだ。〝人と人との接触8割減〟にこだわるあまり、守っていないとみると怒り出す人が少なくないのだとか。「この時期に店を開けているなんて」「子どもを公園で遊ばせるな」といった具合

 ▼一緒にいる時間が長いため夫婦や親子のけんか、家庭内暴力も目立つという。どうやら新型コロナには腹の虫に取り付いて人や社会を破壊する性質もあるらしい。体だけでなく虫の居所まで心配せねばならないとは憎いウイルスである。早く虫の息にしてやりたい。


院内感染

2020年04月28日 09時00分

 戦場の天使と呼ばれた英国のフローレンス・ナイチンゲールを知らない人はいないだろう。近代看護学や公衆衛生学の基礎を築いたほか、病院設計にも非凡な才能を発揮した人である

 ▼中でも印象深いのは19世紀中期のクリミア戦争への従軍でないか。ナイチンゲールは戦闘の傷より療養中の感染症で死亡する兵士が多いことに気付く。当時の野戦病院は衛生環境が劣悪なため、院内感染が爆発的に発生していたのだ。新型コロナウイルスの感染拡大で今最も懸念される事態の一つがこの院内感染である。日本看護協会が先週発表した「全国の院内感染の状況」(20日現在)によると、19都道府県の54施設で783人が確認されているという。本道も北海道がんセンターや札幌呼吸器科病院など数カ所で起きている

 ▼必要な人員も安全具も全く足りない中で、日ごと増えていく感染者に対応せざるを得なかった指定病院が戦場下のような状況に置かれたのは想像に難くない。医療に携わる方々の心労はいかばかりか。本来なら患者のとりでとなるべき病院でウイルスが広がると、逆にウイルスの供給源となるばかりか医療崩壊も招く。それを一番理解しているのは医療関係者だが、感染しても症状の出ない人がいるため侵入を止められないのが現実だ。しかも保有者に自覚がないというのだから一層たちが悪い

 ▼いかにナイチンゲールといえども今回の新型ウイルスには手を焼いたのでないか。この戦場でわれわれにできることがあるとすれば感染しないことである。医療者への負担を減らし難局を切り抜けたい。


連休は読書でも

2020年04月27日 09時00分

 最近は家にいてもテレビを見る気がしない。そう思っている人も多いのでないか。ニュース番組はどれも最初から最後まで新型コロナウイルスの話ばかり。娯楽番組は密閉、密集、密接の3密を避けるため出演者が互いに距離を取っていて面白さも半減である

 ▼これは新聞も同じで、岐阜県警が23日、ホームレスの高齢男性を殺害した容疑で少年ら5人を逮捕した事件もベタ記事扱い。いつもなら社会面トップだろう。世の中の情報全てに新型コロナがまん延しているかのようだ。まあ文句を言っても仕方がないと、この際テレビや新聞に割いていた時間を読書に充てることにした。早速買ってきたのは過日亡くなったコメディアン志村けんさんの著書『志村流』(三笠書房)である

 ▼一読、やはり一芸に秀でた人は仕事や人生を語っても深い味があると感心させられた。たとえばこんな一節。「ずっとカッコ悪い生き方していて、それが二十年続いたら、むしろそれは十分カッコイイことで、評価すべきなんだ」。近頃の若者は何を考えているか分からん、と嘆くおじさん世代への言葉もある。「昭和の三十センチのものさしは、二十一世紀ではもはや三十センチではなくなってしまったっていうこと」。時代とずれた物差しを使っているのはどちらか気づけとチクリ

 ▼志村さんは言う。「たまたま読んだ本が発想の転換のヒントになったり」する。今週から大型連休に入る。遊びには行けないしテレビもつまらない。ならばこの機を生かして読書にいそしみ、コロナ後の復興に向けヒントを探すのも悪くない。


新たな津波想定

2020年04月24日 09時00分

 いずれも最大震度6だった1993年の釧路沖地震と94年の北海道東方沖地震、二つを経験したことは以前、当欄で触れた。液状化や揺れによって道路や港、河川堤防といったインフラに大きな被害が出たのはご存じの通り
 
 ▼ところがもともと地震が多い土地柄で耐震対策もしっかりしていたからだろう。幸いにも家屋や人には思ったほど被害が出なかった。もう一つ良かったのは津波がほとんどなかったことである。次はそんな幸運に恵まれないかもしれない。内閣府の有識者検討会が21日、日本海溝・千島海溝沿いの北海道沖から岩手県沖で巨大地震が発生したときの津波想定を発表した。釧路市では最大20・7mの津波を予測しているそうだ。えりも町では27・9m、広尾町では26・1mと背筋が寒くなるような数字が並ぶ

 ▼筆者は釧路沖地震発生当時、釧路市中島町に住んでいた。市のハザードマップを見ると高さ10mの津波が沿岸を襲った場合、この地区は5―10m浸水する。人ごとではなかったわけだ。5mといえば2階建て家屋がすっぽり水没する高さである。3年前に仙台市宮城野区の住宅街で見た光景を思い出す。友人に案内してもらい指し示された先を見ると、家の最上部に東日本大震災の津波が到達した跡があった

 ▼検討会は今回の想定について、「切迫性が高い」と警鐘を鳴らす。この震源域では数百年ごとに巨大地震が起きているため、前回が17世紀だった点を踏まえると油断はできないというのである。まずは関心を持って自分で調べ、備えることが大切だ。決して人ごとではない。


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