カタカナ語がどうにも苦手で、という人は案外多いのでないか。音は聞こえているのに、正確に覚えられないし意味もつかめない。他の人にその言葉を伝えたくても、うろ覚えのため見当違いのことを言ってしまったりして
▼福井県立図書館で実際にあった、本の題名の問い合わせが面白い。例えば「男の子の名前で『なんとかのカバン』って本あるかしら?」。お分かりだろうか。司書さんもずいぶん悩んだようだ。答えは『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』。利用者になじみのある言葉は「カバン」の部分だけだったのだろう。あやふやな情報から正解を導き出す司書さんの能力には感心するほかない。『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(講談社)で目にした話である
▼それにしても昨今は、以前に増してカタカタ語が安易に使われすぎてはいないか。本は趣味だから仕方ない。ただ生活に直結する政治や経済で当たり前のように使われると理解が追い付かない。けむに巻かれる気もする。最近耳に障ったのは国会でも話題になった「リスキリング」だ。リスでも殺すのかと思ったら働く人の学び直しだという。日常的に使っている人を見たことがない
▼トランスフォーメーション系の言葉からも怪しさがにじむ。DXはデジタル、GXはグリーンが頭に付くが、具体的に何をどう変えるか分かっている人はほとんどいない。新たなカタカナ語でひともうけをたくらむ者に踊らされているだけでないか。そう思うのは時代に取り残されている証拠か。だとするとリス何とかをしなければ。