コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 20

はやりのカタカナ語

2023年02月22日 09時00分

 カタカナ語がどうにも苦手で、という人は案外多いのでないか。音は聞こえているのに、正確に覚えられないし意味もつかめない。他の人にその言葉を伝えたくても、うろ覚えのため見当違いのことを言ってしまったりして

 ▼福井県立図書館で実際にあった、本の題名の問い合わせが面白い。例えば「男の子の名前で『なんとかのカバン』って本あるかしら?」。お分かりだろうか。司書さんもずいぶん悩んだようだ。答えは『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』。利用者になじみのある言葉は「カバン」の部分だけだったのだろう。あやふやな情報から正解を導き出す司書さんの能力には感心するほかない。『100万回死んだねこ 覚え違いタイトル集』(講談社)で目にした話である

 ▼それにしても昨今は、以前に増してカタカタ語が安易に使われすぎてはいないか。本は趣味だから仕方ない。ただ生活に直結する政治や経済で当たり前のように使われると理解が追い付かない。けむに巻かれる気もする。最近耳に障ったのは国会でも話題になった「リスキリング」だ。リスでも殺すのかと思ったら働く人の学び直しだという。日常的に使っている人を見たことがない

 ▼トランスフォーメーション系の言葉からも怪しさがにじむ。DXはデジタル、GXはグリーンが頭に付くが、具体的に何をどう変えるか分かっている人はほとんどいない。新たなカタカナ語でひともうけをたくらむ者に踊らされているだけでないか。そう思うのは時代に取り残されている証拠か。だとするとリス何とかをしなければ。


北朝鮮がICBM発射

2023年02月21日 09時00分

 人の精神的な成長を研究する発達心理学のテーマの一つに、「試し行動」がある。聞けば思い当たる人も多いに違いない。主に子どもに見られるもので、わざと周囲を困らせたり、いたずらをしたりして親の反応を確認する行為である

 ▼物を投げて壊し、所構わず暴れ、泣きわめく。子どもが悪いことをすると、親はそれに反応せざるをえなくなる。つまりは無理やり自分に関心を向けさせ、愛情を計っているわけだ。親と十分な信頼関係が築けていないと感じている子どもに、そんな問題行動が生じる場合が多いらしい。とにかく構ってもらいたくて必死なのである。そんな子どもと同じ「試し行動」を繰り返しているのが北朝鮮でないか

 ▼迷惑な話だが、米国の関心を引こうと派手な火遊びが止まらない。18日にICBM(大陸間弾道ミサイル)級の1発を発射。本道松前町渡島大島の西約200㌔のEEZ(排他的経済水域)内に着弾させた。函館市からもミサイルのせん光が見えたというから穏やかでない。きのうも短距離弾道ミサイル2発を発射し、EEZ外に落とす示威行動に出ていた。おまけに金正恩総書記の妹、金与正氏が同日、米国の行動いかんでは太平洋を射撃場にする頻度が上がると警告。米国を直接「口撃」した

 ▼国際社会の関心は今、ロシアのウクライナ侵略に集中し、バイデン米大統領も北朝鮮への興味は薄い。米国と対等と見せかけることでしか、存在意義を示せない金体制である。よほど構ってほしかったのだろう。子どもではないのだ。「試し行動」からは卒業した方がいい。


1カ月予報

2023年02月20日 09時00分

 深夜に道路から重機のごう音が聞こえてくると、こんな遅い時間に除雪を頑張ってくれているんだと感謝の気持ちが湧く。外は暗く、一日のうちで寒さが最も厳しい時間。楽な仕事ではない。住民の大きな期待に応え、安全に細心の注意を払うことが求められる

 ▼除雪作業に携わる人がいてくれるおかげで、雪国に暮らすわれわれはいつも通りの生活を送れるのだ。今季の積雪の状況を見るとその思いを一層強くする。17日現在の積雪深は札幌こそ平年並みなものの、石狩市厚田で平年比162%、小樽で111%、美唄で143%、岩見沢で129%など大雪に見舞われている地域が多い。除雪従事者は毎日が大車輪だろう。気も体も休まる時があるまい

 ▼ただ、もう一踏ん張りである。今季は雪解けがかなり早いようだ。札幌管区気象台が16日発表した1カ月予報によると、18日から3月17日までは気温が高い確率50%で、特に25日からの2週目が暖かい。今季悩まされた日本海側の降雪も少ない見込みという。「雨降って春の雫となりにけり」稲葉南海子。きのうは二十四節気の春の二番目「雨水」だった。厳冬の色濃い例年は肌感覚と相当ずれのある節気だが、ことしは妙にしっくりきた。この週末が春のような暖かさだったからだろう

 ▼今季は日本列島を何度も大寒波が襲い、交通網だけでなく、燃料費高騰と相まって財布もひどく痛め付けられた。いつまで続くかと戦々恐々だったが何とか先が見えてきたようだ。「除雪車の夜通しうなる北の街」髙山典子。それも今は春を連れてくる音に聞こえる。


違法建築で被害拡大

2023年02月17日 09時00分

 多くの死者を出した歌舞伎町ビル火災を記憶にとどめている人は少なくあるまい。2001年9月に新宿区歌舞伎町の雑居ビルで発生した事件である。急性一酸化炭素中毒で44人もの利用客らが亡くなった。原因は放火とみられているが、真相は今も分かっていない

 ▼なぜこんなに多くの死者が出たのか。理由は避難通路にあった。各フロアをつなぐ階段が荷物やごみで埋め尽くされ、逃げ道をふさいでいたのである。しかもそれら雑多な物は火を全館に広げる役割も果たした。いくら消防法に避難通路の確保が明記されていても、建物のオーナーや管理者に理解がないのでは守れるはずの命も守れない。法は単なるお題目ではないのである

 ▼トルコ南部で6日発生した地震による被害も事態が明らかになるにつれ、人災の側面が大きかったことが分かってきた。トルコは建築物に日本と同程度の高い耐震基準を定めていたが、違法建築や手抜き工事がはびこり、基準を満たさない危険な建物も数多くあったという。死者は既に4万人を超え、安否不明の人も今なお大勢いる。報道によると高層マンションの1階を店舗にするため勝手に柱を撤去したり、建築費を安く上げるため鉄筋量を減らしたりといった行為が横行していたらしい

 ▼ひどい話ではある。ただ、歌舞伎町火災も現実に事が起こるまでは人ごとだったのである。人は誰でも、自分だけは大丈夫と根拠もなく信じているものだ。そんな当てにならない人間心理を補完するために法がある。今回の災害をトルコ特有の問題として終わらせてはいけない。


マスクどうする?

2023年02月16日 09時00分

 どんなに難しい手術も神業と呼ぶべき技術で成功させる天才外科医といえば、誰もが「ブラック・ジャック」を思い浮かべよう。もちろん実在の人物ではない。手塚治虫が生み出した医療漫画の主人公である。人の愚かさや命の尊さをドラマチックに描いた物語だった

 ▼とんでもなく高額の手術費を要求し、金を出すならどんな悪人の治療も引き受ける。しかも医師免許は持たず、他人の指示にも一切従わないときた。そんなブラック・ジャックも野外で緊急手術をする場合はありあわせの装備で間に合わせるが、手術室では白衣に帽子、マスクでしっかりと身を整える。やはりプロ。術後感染には細心の注意を払っていた。いつもは大胆不敵でもTPOはわきまえていたのである

 ▼一人一人がそんなめりはりを付ける状況に移行するということだろう。政府が先頃、新型コロナウイルス感染症の「基本的対処方針」を改定。来月13日からマスク着用ルールを大幅に緩めることにした。以前の日常にまた一歩近づく。新たな方針は屋内か屋外かにかかわらず、「個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねる」が基本となる。和をもって貴しとなす日本人は個の判断を苦手とするところがあるが、社会を元に戻すためには越えねばならない峠である

 ▼普段は外して生活し、感染が重大な結果を招く病院や高齢者施設では着用を忘れない。時と場合を見定めて判断する力が求められるわけだ。とはいえ混乱もかなりあるに違いない。手塚治虫なら「ブラック・ジャック」で今の世の中をどう描いたろうか。


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