10日閉幕した「ゆうばり国際ファンタスティック映画祭」は、最後の冬開催になるかもしれない。来年からは、夏開催に変更される。かつてタランティーノ監督が「夕張の雪は世界一美しい」と絶賛した冬の映画祭は、大きく様変わりする
▼ことしの映画祭のテーマは「ファンタを止めるな!」だった。昨年の映画祭で観客賞を受賞し、その後大ヒットした話題作「カメラを止めるな!」を意識したネーミングだろう。映画祭プロデューサーの深津修一氏は、冬にやると赤字が膨らむと率直に話し、理解を求めた。夏開催を契機に、幅広い層に開かれた新しい映画祭を目指す。ゆうばり映画祭らしいチャレンジだ
▼オープニング上映作品は「人間、空間、時間、そして人間」。古い戦艦に乗って旅に出た人々は、船が見知らぬ空間に浮いていることに驚き、パニック状態になる。混乱はエスカレートし、残酷な殺し合いに発展する。悲惨なストーリーだが、ノアの箱舟のような宗教的な寓話とみることも可能だろう。チャン・グンソクが主演しキム・ギドク監督がメガホンをとった
▼衝撃的な作品だが、監督を巡っても衝撃的なニュースが流れた。女優から暴行や性被害の告発を受けている。そのため、劇場公開のめどが立っていない。映画界のパワハラ、セクハラが批判されている中で、その作品をあえてオープニング上映に選んだ判断は、賛否が分かれるだろう。昨年は、ゆうばり叛逆映画祭との同時開催で驚かされたが、今年も映画祭のスタンス、映画公開の在り方に、一石を投じた。やんちゃな映画祭だ。