本道でもレギュラー番組を持つ人気お笑いコンビ「サンドウィッチマン」は売れないころ、東京の古いアパートの1DKで一緒に暮らしていたそうだ。思い出を語っているのを何度かテレビ見た。その期間、なんと10年に及んだという
▼よく言えばルームシェアだが、実際は生活費を切り詰めるための苦肉の策。下積み時代の芸人にはこの手のエピソードが多い。どちらかの部屋にもう一方が転がり込んでくるらしい。近頃はもっと前向きなシェアハウスが広がりを見せつつあるようだ。気の合った仲間や目標を同じくする者が住宅設備を共同で使い、合理的に暮らす形である。最近は自動車や自転車のシェアもよく聞く。世の流れは所有から共有へと向かっているのかもしれない
▼おとといは「北方領土の日」。返還要求全国大会など関連ニュースを見ながら、四島もシェアハウスのように日ロで新しい共有の形がとれないものかと夢想していた。敵対しているなら無理だが平和条約の下では考える余地もあろう。近代以前は世界中に共同統治領があった。英仏、米独といった国々が同じ地域で主権を握っていたのだ。植民地主義のあだ花で、多くは国として独立して統治も終わった
▼もちろん北方領土にそのまま適用はできない。ただ、2だ4だと水を掛け合っているだけでは交渉が進まないのも事実。島民の故郷も固有の領土も遠のくばかりだ。地域発展の共通目標を持つ両国が主権をシェアする。自国優先主義がはびこりつつある世界に融和を象徴するそんな先進の枠組みが一つあってもいいのでないか。