老朽化していれば別だが、雪国では降雪によって建物がつぶされることはほとんどない。適切な積雪荷重を定めた建築基準法に則って建てられているからである。建物に限らない。多くの設備に雪国ならではの工夫が凝らされている
▼それが当たり前と考えているため、こんな発表を聞くと不思議に思う。製品評価技術基盤機構(NITE)によると、太陽光発電のパネルが氷雪で大量に破損しているというのである。2018年度から4年間を調査した結果、実に43件、約7万5000世帯分の発電出力に相当する破損事故が起きていた。東北が23件と最も多く、本道の9件がこれに続く。およそ8割は雪の重さで架台が壊れる事故。パネル自体が損傷した例も少なくなかった
▼「雪に雪降ってをるなり奥会津」和田順子。弱い架台で重い雪に対抗など、素人が横綱に挑むようなもの。利益を保障する固定価格買取制度はできたが安全を担保する法整備はされなかったため、簡単に形だけ作る業者が現れたわけだ。雪ばかりではない。傾斜地や風の通り道にパネルを敷いた揚げ句、豪雨や強風で破壊の憂き目に遭う例も全国で相次ぐ。脱炭素を錦の御旗に掲げ、再生エネルギーを偏重してきた国策の失敗だろう
▼日本初の電力会社「東京電燈」設立からきょうで140年。電力が切実に必要とされる事情は昔も今も変わらない。再エネは新しい大きな戦力だが、それは原子力や火力、水力と支え合ってこそだ。原子力の60年運転延長も決まった。電気料金高騰の今こそ、再エネの位置付けをもう一度見直したい。