コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 210

改元

2019年01月01日 00時00分

 ことし5月、元号が改まる。普段は特に意識することなく暮らしているが、何かきっかけがあると自分や日本にとってどんな意味を持つのか自然と考えてしまう。それが元号というものだろう。日本人にとって存在感は思いのほか大きい

 ▼さて、あなたにとって平成の30年間はどういった時代だったろうか。昭和の半分ほどとはいえ短くはない年月である。平成生まれの人が既に人口の4分の1を占めるくらいなのだ。皇后さまが昨年の春に作られた歌がある。「語るなく重きを負ひし君が肩に早春の日差し静かにそそぐ」。重責を担いながらも不満一つ言うでなく、一心に国民のためを思い働く天皇陛下のたたずまいを詠んだ一首であるという

 ▼陛下のみならず、多くの国民の平成をまさに象徴するような歌でないか。大戦こそなかったものの決して平穏な時代ではなかった。始まって早々バブルが崩壊し経済は低迷。悪い事は続くものでその後は北海道南西沖、阪神淡路、東日本、熊本と悲惨な震災が相次いだ。「人生離別なくんば 誰か恩愛の重きを知らん」。蘇東坡の詩の一節である。災害はつらく悲しい出来事で二度とごめんだが、人の強さや優しさを深く知る機会になったのも確かなこと。世界中からたくさんの励ましが寄せられ、助け合いの精神も美しく花開いた

 ▼新しい元号が何かはまだ分からない。デフレ経済、少子高齢化、国際関係、多くの課題も積み残されたままだ。ただ、新しい時代が平成で大きく育った強さや優しさといった土台の上に築かれることは間違いない。自信を持っていい。


来年の干支は「己亥」

2018年12月28日 07時00分

 「もういくつねるとお正月」。そんな童謡をふと口ずさんでしまう年の瀬である。振り返ると地震や気象災害に悩まされ、北朝鮮の軟化に淡い期待を抱き、米中の貿易戦争に付き合わされた2018年だったのでないか

 ▼「戊戌(つちのえいぬ)」は準備の整った事業が一気に成長し果実を得ると示していたのだが。さてこうなると気になるのは来年のこと。恒例により「干支(えと)」が物語るところを紹介したい。来る2019年は「己亥(つちのとい)」である。「己」とは三本の平行線をかたどった字で、筋道が正しく整っているさまを意味する。また十干では生命を育む滋養豊かな土の性質を有し、そこから全ての土台となる自分自身「おのれ」を象徴するようになったという

 ▼一方、「亥」はブタやイノシシの骨をかたどった字で、そこから導かれる意味は物事の根本である。さらに木の字を横に従え「核」の字を派生させたことでも分かる通り、強い生命力が種の中に凝縮されて存在する状態を表す。豊かな土と生命力の塊があるのだから良い年にならないわけがない、と思いたいが話はそう簡単でない。性質でいうと「己」と「亥」は土と水で、互いに相手を上回ろうと争う関係にある。つまり「おのれ」が力任せに暴走すると、何もかも台無しになってしまうかもしれないのだ

 ▼ただ、調和を大切にしながら筋道正しく努力すれば、翌20年に大輪の花を咲かせる立派な種が育まれると「己亥」は教える。どうやら新しい年はさらなる飛躍に備え、力をためる年といえそうだ。心してかかりたい。


年の瀬に株価急落

2018年12月27日 07時00分

 国際金融市場の中心だったころの英国に留学していた影響もあるのだろう。夏目漱石は投資に積極的だった。1916(大正5)年に亡くなったとき、遺産のほとんどは株式だったくらいである

 ▼『吾輩は猫である』では登場人物にこんなことを言わせていた。「奥さん小遣銭で外濠線の株を少し買いなさらんか、今から三四個月すると倍になります。ほんに少し金さえあれば、すぐ二倍にでも三倍にでもなります」。2倍、3倍とはいかないまでも、ここ数年の日本の株式市場もずいぶんと投資家の懐を温めてきたのでないか。それが年の瀬も押し迫ったこの時期に驚くほどの急落である。25日には1年3か月ぶりに日経平均株価が2万円割れ。きのうは終値で若干戻したものの、1万8948円の年初来安値も更新した

 ▼漱石も存命なら多くの投資家と同様、やきもきしながら成り行きを見詰めていたに違いない。ことし10月には2万4000円を超えていた株価である。相当な含み損を抱えた投資家もいよう。株安の原因はトランプ米大統領の政権運営にあるらしい。メキシコ国境の壁建設予算が議会で通らず一部政府機関が閉鎖されたり、中国との貿易戦争が長引いたり。先行き不透明感から金融界に不安が広がっているのだとか。米国がくしゃみをすれば日本が風邪をひくグローバルなご時世である

 ▼以前読んだサラリーマン川柳(第一生命)を思い出す。「株下がり持たぬ男が株を上げ」。そんな憎まれ口をたたきたくなる気持ちも分かる。さて皮肉屋の漱石ならこの事態、一体どう表現したろうか。


インドネシアの噴火津波

2018年12月26日 07時00分

 温泉へ行き、満杯の浴槽に一気に身を沈めると湯が勢いよくあふれ出す。自分の作った波紋が向こう側の縁まで静かに広がっていく。のんびりとしたひとときでないか

 ▼ところが実はこれ、噴火による火山の崩壊で津波が発生する仕組みと同じ。規模と場所が違えばこれほど悲惨な災害になるのである。インドネシア政府が24日、22日に発生した津波の原因をアナク・クラカタウ山の噴火によるものと断定したそうだ。クラカタウ山はスマトラ島とジャワ島に挟まれたスンダ海峡のほぼ真ん中にある。火山活動によって海底で巨大な地すべりが起き、それが膨大な量の海水を持ち上げたらしい。津波は音速に近い速さで進むため一瞬にして両島沿岸に達し、人々や家屋を飲み込んだ

 ▼噴火はいつものことで、大きな揺れのような前触れもなかったため住民らは水が来るまで津波に気付かなかったという。死者は370人以上、行方不明者も120人を超えているそうだ。一人でも多く無事が確認されるといいのだが。噴火を原因とする津波は少ない。ただ日本でも1640年の駒ヶ岳(北海道)で700人以上、1741年の渡島大島(同)で1467人、1792年の雲仙岳(長崎県)で1万5000人の死者が出ている。いずれも噴火で崩れた山体が海に流れ込み、津波を生み出したものだ

 ▼現在は危険がないとはいえ、インドネシアの津波も決して対岸の火事でないということだろう。日本も火山国である。活火山は気持ちの良い温泉を届けてくれるが、ときに信じ難い災厄も運んでくるから油断ならない。


創作四字熟語

2018年12月25日 07時00分

 急転直下降って湧いた千載一遇の好機を逃さず、獅子奮迅の勢いで一気呵成(かせい)にこの難局を乗り越えよう―。ここまで重ねるのはいささかやり過ぎだが、流れにぴたりとはまれば言葉に迫力が増すのが四字熟語の魅力である

 ▼たったの四文字で一つの展開を表現できる上、歯切れ良い音も耳に心地良い。そんなところが毎年注目される理由でないか。ことしも住友生命保険の「創作四字熟語」が発表になった。優秀作10編を見るとなかなかバラエティーに富んでいる。ただ、道民としてはやはり「地震暗来」(疑心暗鬼)に目を止めないわけにはいかない。地震も悲惨だったがその後のブラックアウト(大規模停電)にはほとほとまいった

 ▼連続する真夏日や台風を映した「猛夏襲来」(蒙古襲来)、「台量発生」(大量発生)も多くの人の実感だろう。近年の気象は異常というほかない。その一方で感動もあった。サッカーW杯の「一蹴懸命」(一生懸命)と高校野球の「金農感謝」(勤労感謝)である。本道の世相を反映した熟語を筆者も考えたのでご笑覧いただきたい。地震は本家に任せそれ以外で、まずは「火事多難」(多事多難)。1月末に札幌の自立支援施設、今月に平岸の店舗と大きな火事で明け暮れした一年だった

 ▼「知事清々」(多士済済)。高橋はるみ知事は大仕事を終えすっきりした気分だろうか。そして何といっても「五輪夢中」(五里霧中)。平昌冬季五輪での道産子選手の活躍に連日、狂喜乱舞した。来年は無事息災で楽しい話題ばかりが百花繚乱(りょうらん)だといい。


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