ことし5月、元号が改まる。普段は特に意識することなく暮らしているが、何かきっかけがあると自分や日本にとってどんな意味を持つのか自然と考えてしまう。それが元号というものだろう。日本人にとって存在感は思いのほか大きい
▼さて、あなたにとって平成の30年間はどういった時代だったろうか。昭和の半分ほどとはいえ短くはない年月である。平成生まれの人が既に人口の4分の1を占めるくらいなのだ。皇后さまが昨年の春に作られた歌がある。「語るなく重きを負ひし君が肩に早春の日差し静かにそそぐ」。重責を担いながらも不満一つ言うでなく、一心に国民のためを思い働く天皇陛下のたたずまいを詠んだ一首であるという
▼陛下のみならず、多くの国民の平成をまさに象徴するような歌でないか。大戦こそなかったものの決して平穏な時代ではなかった。始まって早々バブルが崩壊し経済は低迷。悪い事は続くものでその後は北海道南西沖、阪神淡路、東日本、熊本と悲惨な震災が相次いだ。「人生離別なくんば 誰か恩愛の重きを知らん」。蘇東坡の詩の一節である。災害はつらく悲しい出来事で二度とごめんだが、人の強さや優しさを深く知る機会になったのも確かなこと。世界中からたくさんの励ましが寄せられ、助け合いの精神も美しく花開いた
▼新しい元号が何かはまだ分からない。デフレ経済、少子高齢化、国際関係、多くの課題も積み残されたままだ。ただ、新しい時代が平成で大きく育った強さや優しさといった土台の上に築かれることは間違いない。自信を持っていい。