この字を見て胸をざわつかせた人も少なくなかったのでないか。「今年の漢字」のことである。日本漢字能力検定協会が12日、「災」に決まったと発表した
▼気持ちを明るくする漢字でなかったのは残念だが、ことしを象徴する一文字としては納得の結果だろう。北海道や大阪での地震、西日本豪雨、大型台風、記録的猛暑―。ニュースで「災」の字を見聞きしない日はないくらい相次いで天災に見舞われた年だった。中でも道民は9月の北海道胆振東部地震を恐ろしい経験としてまだ深く記憶にとどめていよう。震源に近い厚真町を中心に41人もの方々が亡くなり、いまだ多くの住民が不便な生活を余儀なくされている。何もかも止まった大規模停電も忘れることはできない
▼そのブラックアウトを検証していた電力広域的運営推進機関の委員会も12日、最終報告をまとめた。中間報告で出した早期の緊急時負荷遮断量追加に加え、苫東厚真火力と京極揚水を適切に組み合わせた運用などを対策として示している。最終報告で目を引いたのは泊原発再稼働後のシミュレーションだ。今回のように最も過酷な条件で泊3台が動いていた場合、やはりブラックアウトの可能性はあるものの、北電が実施中の周波数低下リレー端末更新が進めば心配はなくなるそうだ。安心材料が増えるのは最適な電源構成を考える上で好ましい
▼人や社会はこうしてつらい経験から学び、乗り越えることで強くなっていくものなのだろう。暗い印象ばかりの「災」の字だが、そう思えば少しは「今年の漢字」にも意義を見い出せよう。