テストと聞くと学校時代を思い出し、いまだに身が縮むという人も多いのでないか。先生から答案用紙を返される瞬間の期待と不安の記憶は幾つになっても忘れらないものである
▼点数が悪いと分かっているときには足取りも重く、教壇までの短い距離を随分遠く感じたものだ。「これは親に見せたら大目玉を食うな」と父母の顔がちらついたりして。まあ、勉強せずに遊びほうけているのだから当然の結果なのだが。子ども詩集『ことばのしっぽ』(中央公論新社)で小学1年生のこんな詩を見つけた。「わたしは てすとで 60てんを とったことがあります おとうさんにみせたら おとうさんは おこりました 100てんを みせたら こんどは おにいちゃんを おこりました」(うえはらかよこ)
▼なかなか厳しいお父さんである。お兄ちゃんはそれほど勉強が好きでないのかもしれない。テストの出来も悪かったのだろう。妹は頑張って100点を取ったのに年上のお前が―。とんだとばっちりだ。きょうで11月も終わり、あすから12月。ことし取り組んできたあれこれの答案用紙が返される月である。さて、年初めに設定した目標のどれだけを達成することができたろう。100点でないからといってお父さんに怒られるわけでもないが、採点するのは先生でなく自分なだけにごまかしは利かない
▼まあじっくり顧みるまでもなさそうだ。「一年の計は未達に十二月」友成セツ子。そんなところだろう。いまさらジタバタしても仕方がない。現実の人生では60点も取れれば至って上出来である。