コラム「透視図」

アートで発見

2016年01月22日 09時01分

 ▼展示会場に入り順路に沿って進むと絹谷幸二氏の「日月燦々北海道」がまず目に飛び込んできた。道立近代美術館で開催中の「アートで発見HOKKAIDO」である。芸術とは無縁の身故、何も楽しめないのではと思ったが杞憂(きゆう)だった。「日月」は四季折々の自然や人々の生活を色鮮やかに描いた絵画。3点組で1枚およそ縦2m、横2・6mの大作だ。絵の力なのか見ていると心が湧き立つ。

 ▼その横では札幌出身の日本画家片岡球子さんの「屈斜路湖」が静かに存在感を放っていた。ミュージアム新書『片岡球子』(奥岡茂雄)によると、片岡さんは「ゲテモノの絵」と評されながらも、「ひたすら真っ正直に」画業と向き合う人だったという。この絵は樹木や山が金色の太線で縁取られ、華やかだ。今回の展示会では「山と水」「人と街」「雪と氷」など7つのテーマに沿って絵や彫刻、版画が並べられているのだが、いろいろな表現の形を見ることができて飽きさせない。

 ▼見終えて帰ろうとしたとき「日月」が再び目に入った。同じ絵だが最初より迫力を感じる。離れた場所から眺めたため視野が広がり、3点の絵を一望できたからだ。近過ぎると見えないものもあるということか。きっと観光もそうだろう。目の前にあるのに道民には見えない本道の魅力がまだあるはず。国交省は19日、2015年訪日外国人旅行者が前年比47%増の1973万人と発表した。本道を訪れている人も多い。離れた所にいる人の方が、案外魅力を発見し易いのかもしれぬ。


大寒

2016年01月21日 09時04分

 ▼きょう21日は旧暦二十四節気の大寒である。道理で寒い日が続くはずだ。重ね着する衣服を一枚増やし、という人も多かろう。「着ぶくれて首なき老人ひとかたまり」(松尾佳良子)。高齢者ばかりではない。老いも若きもコートの襟を立て、フードやマフラーで首を隠している。寒さで首が縮まり体もこわばっているから、後ろから眺めるとロボットが歩いているようだ。これも冬の風物詩の一つだろう。

 ▼寒風に耐えながらうつむき加減で歩いていると、われ知らずこのわらべ歌を頭の中で繰り返していたりする。「おおさむこさむ/山から小僧が泣いてきた/なんといって泣いてきた/なんといって泣いてきた/寒いといって泣いてきた」。気をそらすのなら暖かい季節の歌の方が良さそうなものだが、なぜか思い浮かばない。実際、寒中のこの時期は泣きたくなるほど寒いことが何度もある。心情が歌になったというべきか。暦の上で大寒の次は立春のはずだが春の姿は全く見えない。

 ▼ここ数日、日本中を悩ませた寒波が今冬一番だったと聞き、やはり春まだ遠しと実感した。この荒天に泣かされた人も多かったろう。これまで雪を降らせなかった天の帳尻合わせでもあるまいが、太平洋側を中心に大量の雪が降った。18日には東京でも積雪が6cmに達し、交通が大幅に乱れたとのこと。道内でも19日から大雪が道東を見舞った。週末にはさらに強い寒波が来るらしい。急な用事でもなければ着ぶくれてまで出掛ける必要はない。家で熱かんでも楽しんでいるとしよう。


本とペン

2016年01月20日 09時53分

 ▼女性も教育を受けるべきとの信念から行動し、それを認めないイスラム原理主義組織タリバンに頭を撃たれたマララ・ユスフザイさんをご存じだろう。勇気ある女性である。回復したマララさんは2013年に国連本部で演説し、テロや戦争を根絶するため世界中の人々にこう語り掛けた。「1人の子ども、1人の教師、1冊の本、そして1本のペンで世界は変えられます。教育こそが唯一の解決策です」。

 ▼無知は憎しみや暴力の温床になるから、まず考える力を身に付ける必要がある。平易な言葉に込められた切実なメッセージが胸を打つ。そのマララさんが先月、米大統領選で共和党候補者指名争い首位のドナルド・トランプ氏を批判した。イスラム教徒の米入国禁止を氏が主張したからである。暴言で物議を醸す人物だが人気は高い。黙って見過ごすことができなかったのだろう。マララさんは「他者を差別する憎しみのイデオロギー」「憎悪に満ちた発言」と氏をいさめたのだった。

 ▼そもそも米大統領になろうという人が、一般のイスラム教徒と同教をテロに利用している勢力とを同一視するなどどうかしている。英下院は18日にトランプ氏の入国を禁止する請願を審議したが、そんな反発も出ようというもの。氏の発言はむしろ過激派組織を喜ばせるだけだろう。来年のきょう20日は新しい米大統領の就任式だ。まさかとは思うが氏が大統領の椅子に座り、無知で世界を混乱させても困る。今からでも遅くない。マララさんに本とペンをもらって勉強してはどうか。


家族の日常

2016年01月19日 09時07分

 ▼ミステリー仕立てに味付けされた小路幸也の人気下町家族小説『東京バンドワゴン』(集英社)シリーズは、食卓を囲んでの家族のにぎやかな会話が毎回一つの見せ場になっている。「おい、ソース取ってくれ」「大工さんって今日来るんだっけ」「卒業式に学生服着るの?」。そこで交わされるのは日常の何げない言葉ばかりなのだが、その温かな雰囲気が心地よい。家族が共にある幸せとでもいおうか。

 ▼そんな当たり前の家族だんらんを、一瞬にして壊してしまう悲しい出来事がまたあった。長野県軽井沢町で15日起こった大型バスの転落事故である。運転手のほか12人の若者が亡くなった。スキーなどを楽しむため深夜に現地へと向かう格安のバスツアーだったという。皆20歳前後の大学生である。夢もたくさんあったはずだ。無念だったに違いない。前日までは普通に言葉を交わしていただろう家族や友人らの悲憤はいかばかりか。原因究明は必要だが、失われた命は戻ってこない。

 ▼こちらの家族には一体何があったのか。11日に、3歳の娘を虐待した上で死に追いやったとして、母親と内縁の男が逮捕された。仲むつまじく暮らしていたとの評判も近所の一部にはあったようだが、実は監禁と暴力を繰り返していた。幼い子はどこまでも親を信じるもの。善良な魂を踏みにじる残酷な仕打ちには憤りを禁じ得ない。ことしは寒の入りから凍えるような日が続く上に、心まで寒からしめる事件や事故が相次ぐ。あらためて思う。温かい家族の日常の何と貴重なことか。


詰め合わせ

2016年01月16日 08時50分

 ▼江戸末期の歌人橘曙覧の歌集『独楽吟』に、「たのしみはたのむをよびて門あけて物もて来つる使ひえし時」がある。思わぬ贈り物が家に届いたときの喜びを歌ったらしい。当時の贈答品が何だったかは分からないが、今の歳暮や中元なら、詰め合わせが一般的だろうか。食べ物であれば単品でもおいしいものが幾種類か入っているのだからうれしい。ふたを開けたときの見た目の華やかさも楽しいものだ。

 ▼芸能界のアイドルグループも、そんな詰め合わせの妙があるのではないか。浮き沈みの激しいこの世界で、長年、人気「商品」であり続けるには、単品での魅力を増しながら全体の価値を上げていく工夫がいる。成功例の代表格は「世界に一つだけの花」などのヒット曲で知られる男性5人グループ「SMAP」だろう。現在もテレビはじめ各方面から引っ張りだこの彼らだが、13日にスポーツ紙が解散説を報じた。降って湧いた情報にはファンのみならず、多くの人が驚いたようだ。

 ▼ことしはCDデビューから25周年だそうである。ファン層が幅広いのもうなずける。テレビで見ない日はないくらいの活躍ぶりだから、もし本当に解散ということになれば、惜しむ声があふれるに違いない。分裂、離党、新党結成と、何やら忙しく派手な動きを見せている割に国民から冷めた目で見られている政界の住民には、うらやましい話だろう。与党と並び立つ存在感もないのでは新党も空しいのではないか。単なる寄せ集めを詰め合わせただけでは、もらってもうれしくない。


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