便りがないのは良い便り―。そんなことを思いながら長めの秋をのんびり過ごしてきたのだが、どうやらその猶予期間も終わりに近づいているようだ。本道にとうとう冬の便りが届いたのである。きのう、稚内と旭川、網走の各気象台が今季の初雪を観測した
▼雪かきの苦労もさることながら、家計を直撃するこのところの灯油高である。本格的な冬の訪れを告げる「便りがない」のを喜んでいた人も少なくあるまい。それにしてもずいぶんと遅い初雪でないか。平年に比べ稚内で23日、旭川で22日、網走で14日も差があったそうだ。中でも稚内は1939年の統計開始以来、最も遅い記録だという。ことしは台風に暴風雨、猛暑と天気の神様が空の上で余計な仕事にかまけ過ぎ、雪を忘れていたのかもしれない
▼これに触発されたわけでもなかろうが、今度は海の神様まで余計な仕事を始めたようだ。熱帯太平洋東部の海面水温が平年より高くなるエルニーニョ現象が発生したのである。先週、気象庁が発表した。同庁によるとエルニーニョ発生中の本道の冬は、気温が例年並みかやや低め、降雪量が日本海側で少なめになるのだそう。幸いにも影響は小さい。一方、東日本の太平洋側では大雪の降ることがあり、実際2年前には首都圏が大混乱に陥った
▼ともあれエルニーニョがあろうとなかろうと、冬の便りが届けばもう季節が逆戻りすることはない。あとは厳しい冬にまっしぐらだ。「百万の寄せ手のごとく冬が来る」佐々木虹橋。冬の軍勢に立ち向かうために、そろそろ諦めて防備を固めるとしようか。