6日未明に北海道地震が発生してから、昔からよく聞くこの言葉の意味を思い知らされている。「本当に大切なことは、失って初めてその価値に気づく」。ほかでもない電気のことである
▼当たり前にあったものが、文字通り一瞬にして消えてしまった。ほとんどのお宅が同じ状況だったろう。午前3時8分ごろ、激しい揺れにたたき起こされ真っ暗闇の中に放り出された。夜明けまでの2時間のなんと長かったこと。道内全域が停電するなど前代未聞である。一つの町内が停電するのとは訳が違う。常温保存できない生鮮品は供給元から家庭まで全て駄目になり食事もままならない。公共交通が止まり信号機も点灯しないため都市機能はまひ。大きな島が丸ごと孤立してしまったようなものだ
▼最も困ったのは情報収集である。テレビがつかないのは仕方ないが、頼りにしているスマホのバッテリーはどんどん減っていくのに充電するすべがない。高齢者は特に、ただ余震におびえているしかなかったのでないか。厳冬期でなかったのが唯一の幸運だろう。暖房を失い身動きもとれなければ大惨事になってもおかしくなかった。それにしても一発電所の停止がなぜこんな致命的事態に発展したのか。本道の電力事情がこれほどもろいものだったとは
▼つぶさに検証し、泊原発含めシステムを根本から見直す必要があろう。事は命にかかわる。どうやらわれわれは電気のある生活のありがたみを忘れ、無関心になりすぎていたようだ。後から大切さに気付くより、失う前にいろいろと手を尽くしておくべきだった。