コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 232

西日本豪雨から2週間

2018年07月18日 07時00分

 西日本に甚大な被害をもたらした雨が異常な兆候を示しはじめた今月5日から、きょうで2週間たつ。この間、ニュースを見るたびに増えていく犠牲者数に、暗たんたる思いでいた

 ▼ただ、そんな傍観者のものでしかない同情の言葉を並べるのがはばかられるくらい現地の状況はひどい。政府の発表によると17日現在、死者222人、行方不明17人。家屋浸水や倒壊、流失は数知れない。平成最大の豪雨災害だという。なぜこれほどの被害になったかの詳しい検証はこれからだが既に幾つか分かっていることもある。一つ目は雨が過去に例のない降り方をするよう変わってきたこと、二つ目は高齢化や災害想定のミスといった要因で避難が遅れたこと、そして三つ目が少し前にも書いたが治水事業の停滞である

 ▼この先、対策を進める上で最も大切なのは治水だろう。国や自治体が方針を示せばすぐに実行できることである。空に降り方を指図することはできないし、高齢化対応や人々の意識改革はそう容易でない。悲しい現実を知った。各種報道によると、小田川堤防決壊で大きな被害が出た岡山県倉敷市真備町では、今秋から同川などの整備に着工する予定だったという。古い砂防ダムが流失し多くの死者が出た広島県坂町小屋浦では2年後、新しいダムが完成するはずだった

 ▼工事がもう何年か早ければ事態は違っていたろう。もちろん治水で全てが解決するわけではない。しかし現在の治水予算は20年前の3分の1。費用対効果が声高に語られた結果がこれである。削減した分で日本は何を得たのだろう。


50周年と150年

2018年07月17日 07時00分

 集英社の漫画雑誌『週刊少年ジャンプ』が今回の2018年33号で50周年を迎えたという。子ども時代を共に過ごしてきた人も多いのではないか

 ▼当初からの読者なら永井豪さんの『ハレンチ学園』や、とりいかずよしさんの『トイレット博士』を懐かしく思い出すに違いない。当方も自分では買えなかったため、年上の友人に借り親の目を盗んで読んでいた。今ならとても発行できない内容である。だが面白かった。68年の創刊以来、人気作は引きも切らず。『こちら葛飾区亀有公園前派出所』、『北斗の拳』、『ドラゴンボール』、『スラムダンク』、『ワンピース』―。漫画史に残る名作も枚挙にいとまがない。そこで描かれるのは勇気、冒険、仲間、笑いといった少年たちの尽きせぬ願い、変わらぬ夢である

 ▼発行部数は95年3・4合併号で最多653万部に上りギネス記録にも載ったという。現在は約180万部だがそれでも同種雑誌の中では断トツである。それにしてもなぜこれほど読まれているのか。実は毎週愛読しているためその理由は見当がつく。一番は新しい才能の発掘である。これほどの雑誌に今でも毎週、ほぼ無名の作家の作品が載る。優れたものばかりでないがあえてリスクをとり、挑戦と成長の場を用意しているのだ

 ▼本道はことし命名150年。『ジャンプ』よりかなり先輩になるが、新しい才能を発掘し自ら変化を起こす気概は十分だろうか。14日から記念行事が集中する「北海道150年ウイーク」も始まった。浮かれるだけでなく50周年の後輩に学ぶべきところは学びたい。


タイの少年ら生還

2018年07月13日 07時00分

 米国のテレビドラマ『スパイ大作戦』が好きで子どものころによく見ていた。原題は「ミッション・インポッシブル」(不可能な任務)。来月6作目が公開となるトム・クルーズ主演の同名映画の元となったドラマである

 ▼毎回困難な指令が伝えられ、それを綿密な作戦と最先端の技術を駆使して遂行していく。指令伝達時の「なお、このテープは自動的に消滅する」の言葉は当時多くの子どもたちがまねしたものだ。リーダーは指令を聞くとまず任務に最適なメンバーを集め、周到に準備した上で作戦を実行した。不測の事態にも臨機応変に対応。いつも胸のすく思いがしたものだ

 ▼こちらは現実だが、タイ北部の洞窟から13人の少年らを救出する任務も困難極まるものだった。どう乗り越えるか常に考えていたからだろう。全員が無事生還を果たしたとき、救出を指揮した地元チェンライ県のナロンサク知事は、「これはチーム・タイにとってミッション・ポッシブル(可能な任務)だった」と総括したそうだ。チーム・タイとは自国はもちろん世界中から集まったダイバーの精鋭チーム。雨水流入や酸素濃度低下、少年らの体力減退で時間的猶予のない中、思い切った作戦と万全の用意で一気に救出を成し遂げた。不可能を可能に変えたわけである

 ▼少年らも持ちこたえた。遭難地点から洞窟出口までは約5㌔。ダイバーと一緒とはいえ、脱出のためには暗い水の中を30分も進まねばならない箇所があったという。洞窟で18日間耐えた後にである。一つの賭けでもあったがドラマでもこううまくはいくまい。


出光と昭和シェルが統合

2018年07月12日 07時00分

 道産米は昔と比べて格段においしくなった。そう感じている人は多いに違いない。鳥も食べない「鳥またぎ」とばかにされていた時代もあったのだから、変われば変わるものである

 ▼「ゆめぴりか」と「ななつぼし」は食味が特に優れた特Aランクの常連。秋田県県南「あきたこまち」や新潟県佐渡「コシヒカリ」など名だたる産地米にも引けを取らない。量だけでなく味でも勝負できるのが今の道産米の強みである。「もちもち食感が好き」「粒立った固めが最高」。人により好みはいろいろだが選ぶ楽しみがあるのも米の魅力だろう。どれも同じ味なら価格で競争するしかなく、行き着く先は激しいシェア争いだ

 ▼実際それに明け暮れてきたのが石油元売り各社である。ガソリンや軽油の品質はどの社もほぼ同じなため利益を上げるには販売量を増やすしかない。どうしたか。合併や再編でシェアを拡大したのである。規模の効果に加え、設備や人員を集約して生まれたコスト削減分も有効に活用できるわけだ。その動きがとうとう独立独歩を堅持してきた出光興産にも波及した。同社と昭和シェル石油が10日、来年4月に経営統合することで合意したと発表したのである

 ▼出光興産創業者出光佐三といえば戦前から戦後にかけて、時の政府や諸外国と渡り合い日本を盛り立ててきた人物。とはいえ現在、ガソリンを求める客はそんな伝説より1円でも安いスタンドの方を喜ぶだろう。味は変わらないのだから当然である。世知辛い世の中だが、これだけガソリンが高止まりしているのではどうしようもない。


人手不足倒産

2018年07月11日 07時00分

 落語の「化け物つかい」をご存じだろうか。ご隠居さんが主人公なのだがとにかく人使いが荒いため、何度奉公人を雇っても1日で辞めてしまう

 ▼そのご隠居さん、化け物屋敷とうわさの家に引っ越した途端にまた奉公人に逃げられた。不便になると思っていたところに現れたのが一つ目小僧。これ幸いと次々に雑事を言いつける。女の幽霊が出ると繕い物、大入道には力仕事をあてがう。化け物たちは休む間もない。ある夜、大きなタヌキが涙ぐんで進み出た。全てこいつが化けていたらしい。聞くと暇をもらいたいとのこと。ご隠居が問いただすと、「こう化け物つかいが荒くっちゃあ、とても辛抱ができません」。落語はここで終わるが奉公人がいなくなったご隠居さんは困ったろう

 ▼今の日本でも、働き手が集まらなければ苦労するのは同じである。帝国データバンクが9日、2018年上半期の人手不足倒産が3年連続して前年同期比を上回ったと発表した。負債1億円未満の倒産は2倍に増えたという。仕事はあっても従業員がいないのでは話にならない。業種別ではサービス19件、建設18件、運輸・通信12件がワースト3。ここ5年半の件数を累計してさらに細かく見ると道路貨物運送、老人福祉、木造建築工事の順に倒産が多い

 ▼経営者もご隠居さんのように偏屈でこき使っているわけではなかろうが、それらの業種がやたらと忙しいのは事実である。昨今の売り手市場の中ではいかにも分が悪い。政府が旗を振る働き方改革も中小零細には簡単でないはず。さて、あなたの会社はどうだろうか。


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