コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 258

宇宙警備隊

2018年01月06日 07時00分

 円谷プロダクションの空想特撮シリーズに、地球の平和を乱す怪獣と戦うヒーローを描いた「ウルトラマン」(TBS)がある。毎週、テレビの前で胸を躍らせていた人も多いのではないか

 ▼あらためて説明するまでもなかろうが、ウルトラマンはM78星雲から来た異星人で宇宙警備隊の一員。普段は人間に体を借り生活しているが、地球に危機が迫ると変身し、科学特捜隊と共に迫りくる脅威をはねのけるのである。初代ウルトラマンが放映されて50年余り。いよいよ日本も現実に宇宙の脅威から地球を防衛する専従部隊の創設に乗り出すらしい。ただしこちらの敵は怪獣でなく、宇宙ごみ。防衛省が新年度予算案に、2022年度までに監視のための組織を発足させ、運用システムを構築する経費を盛り込んだという

 ▼ウルトラマン世代としては、「何だごみか」といささか拍子抜けの感は否めない。ただ事態が年々深刻の度を増しているのは事実。制御不能の人工物が既に約2万個も地球の軌道を回っている。ごみの正体は使用済みの人工衛星やロケットの部品だが、自治体のごみ収集車の経路には入っていないため増える一方なのだ。このままでは衛星や宇宙ステーション、船外活動中の宇宙飛行士に衝突する危険性が高まるばかり

 ▼そこで考案されたのがごみをレーダーで常に監視し、危険を察知すると同時に衛星軌道を修正する仕組み。脅威をはねのけるのでなくよけまくるというわけ。単純な方法のようだが実はこのごみ、速さはマッハ20以上。やはり怪獣を倒せるくらいの技術が必要なのである。


お年玉

2018年01月05日 07時00分

 お年玉をもらっていたのはもう随分昔のことになるのだが、その日のうれしさは今でも忘れない。「一葉の手の切れさうなお年玉」すずき波浪。当時、樋口一葉はいなかったものの、普段見られない偉人の顔をそのときだけは拝めたものだ

 ▼子どもには持ち慣れない大金を手にして何を買おうか楽しく悩んでいるうち、毎年いつの間にかなくなっていた。それを少しでも未来への投資に使っておけば、は後知恵である。お年玉といえば、雑誌『rockin’on』創刊メンバーで音楽評論家の松村雄策氏が書いた自伝的小説『苺畑の午前五時』(小学館)を思い出す。小3でポピュラー音楽に目覚めた主人公の亮二が、小6の正月にお年玉で「ポータブル電蓄を手に入れ」るのである

 ▼それから1カ月もたたずに、ビートルズが日本でレコードデビュー。全く新しい音楽と出会った亮二は、以来、ビートルズに傾倒していく。松村氏自身の経験だろう。お年玉が将来進むべき道を踏み固める役割を果たしたわけだ。お年玉を国の予算に見立てるのは適切でないかもしれないが、年の初めに大金の使い道を考える点では少し似ていよう。第196回通常国会が22日に召集され、2018年度予算案の審議が始まる

 ▼今の日本に、いつの間にか消化できていれば良しとする財政的余裕は全くない。国会には少子高齢化や地方経済の疲弊、軍事衝突危機など多くの問題を力強く解決に導く筋肉質の予算を期待したい。松村氏のポータブル電蓄のように、未来につながる道もできるだけたくさん用意できるといいのだが。


北海道 土木と文明の150年

2018年01月01日 07時00分

 ほとんどの人が普段忘れているのではないか。暮らしがインフラ(社会基盤)によって支えられている事実をである。当たり前すぎて意識には上らない。ただとても大切なことである

 ▼海岸・港湾工学の権威合田良實氏が『土木と文明』(鹿島出版会)に記していた。「旧石器人は100万年近く前に共同作業で石垣を築きました。―土木事業の成功なしに各時代、各文明の発展がなかったことは間違いありません」。100万年を考えるまでもない。1869年に本道が「北海道」と命名されてことしで150年。その年月もまた、土木が文明をけん引する歴史だった。1年の半分は雪と氷に覆われる大地で今快適に生活できるのも、先人たちがインフラを積み上げてきたおかげなのである

 ▼道なき所に道を造り、橋を渡し、線路を敷いた。森と闘い、畑を開き、町を興した。函館と札幌を結ぶ札幌本道(現国道5号、36号)が73(明治6)年には開通していたと聞くと、開拓者の熱意にあらためて胸を打たれる。国木田独歩が95(明治28)年に来道した際の印象を「空知川の岸辺」にこう書き留めていた。「野にも山にも恐ろしき自然の力あふれ、此処に愛なく情なく、見るとして荒涼、寂寞、冷厳にして且つ壮大なる光景は恰も人間の無力と儚さとを冷笑ふが如く」

 ▼独歩がインフラの充実した今の本道を見て何と言うか想像すると楽しい。ところで150年も単なる一つの区切り。ここで立ち止まっては発展も望めまい。少々大げさだが本道の文明を進めるには新たなインフラがいる。考える年にしたい。


来年の干支は「戊戌」

2017年12月29日 07時00分

 ことしも残すところきょうを含めてあと3日である。トランプ米大統領に揺さぶられ、北朝鮮にかき回され、森友・加計問題に大騒ぎした2017年だった

 ▼「丁酉(ひのととり)」は新旧がせめぎ合うか調和するか、傾き次第で平にも乱にも転がると示していたが、まさにそんな年ではなかったか。皆さんにとってはどんな一年だったろう。さて、来年は。恒例により「干支(えと)」の教えるところを紹介したい。来る2018年は「戊戌(つちのえいぬ)」である。「戊」とは手でつかむおのをかたどった字で、その勢いから「発芽しきった新芽が遮るものを全て押し分けて成長する」さまを表すそうだ。無理にでも、また困難を冒してでも進もうとするのが特徴だという

 ▼一方、「戌」は「戊」と似ていることで分かる通り、やはりおのが元になっている。ただしこちらの字は「戊」に横棒が一本加わることで字義が「切る」となり、そこから「作物を刈り取りひとまとめにして収穫する」と解釈するそう。つまり「戊戌」の年は、準備が十分に整った事業は芽の状態からでも一気に成長し、成功の果実も得られるということ。勢いに差がある二つの力の調整が難しかったことしの「丁酉」とは対照的に、流れは素直で滞りがない

 ▼景気は上向いているようだがいまひとつ自信が持てない、良いアイデアはあるが内部に反対もあって…。そんなこんなでしばらく新しいことを始めるのに決心をつけられずにいた人には、チャンスの年になるかもしれない。思い切って一歩を踏み出してみてはいかがだろう。


安倍首相この5年

2017年12月28日 07時00分

 およそ40年ほど前に青年だった人には懐かしく響く歌に違いない。フォークグループ「かぐや姫」の名曲の一つに『22才の別れ』(伊勢正三作詞作曲)がある

 ▼フォークデュオ「風」が歌ってヒットしたため、正ヤンこと伊勢さんの歌と言われた方がぴったりくるかもしれない。当時ファンだった人であればこんな歌詞もすぐに思い出し、口ずさめるだろう。「今はただ五年の月日がながすぎた春といえるだけです」。この曲がはやったころに20歳くらいだった安倍首相も一度や二度、口ずさんだことがあるのではないか。ただ、今口ずさむとしても「五年の月日がながすぎた春」とは歌わないはず。穏やかな春ばかりでなく、世間の厳しい目が照り付ける夏もあれば国際関係が冷え込む冬もあった

 ▼首相が政権を取り戻してから26日で5年。途中で首相の座を降りねばならなかった第1次と違い、良くも悪くも格段のしぶとさを身に付けた5年だったといえそうだ。気が付けば在職日数も戦後3番目の長さである。求心力の源泉はほかでもない経済の好転だろう。アベノミクスがどれだけ功を奏しているか定量的な評価は難しいが、この5年で名目GDPが約40兆円増え、日経平均株価は2倍以上、有効求人倍率も47都道府県全てで1・0を超えた

 ▼6年目に臨む来年度予算案も一般会計総額97兆7128億円の積極予算にまとめている。いやが上にもデフレ脱却への期待は高まろう。北朝鮮のように避けられない問題もあるとはいえ、安倍首相はこの際あまりよそ見をせず経済政策に力を尽くしてもらいたい。


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