コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 260

創作四字熟語

2017年12月20日 07時00分

 漢字四文字の組み合わせで難しい概念を簡潔に表現できる四字熟語は何かと便利なものである。リズムも良いから記憶にも残りやすい。例えば、「最初にこうしようと心に決めたことがあるなら、何があっても諦めず貫き通しなさい」と長々話されるより、「初志貫徹」と一言ずばり伝えられた方が真っすぐ胸に響く

 ▼さて、ことしはどんな作品が胸を響かせてくれるだろう。住友生命の「創作四字熟語」が決まった。優秀作品を見ていこう。まず「九九八新」(緊急発進)と「棋聡天才」(奇想天外)。陸上短距離の桐生祥秀選手と将棋の最年少プロ藤井聡太四段を表現したものである。若者たちの前人未到の挑戦にこちらまで元気付けられた

 ▼「蟻来迷惑」(有難迷惑)は猛毒を持つ外来種のヒアリが相次いで見つかったこと。危機意識が一気に高まった。「政変霹靂」(青天霹靂)と「世代皇代」(世代交代)。野党を中心に政界の再編が進み、退位特例法も決まるなど有為転変を感じさせられる一年だった。では本道の世相はどんな四字熟語で表せるか。昨年に引き続き考えてみた。「一見漂着」(一件落着)。ただの遭難漁民と思っていたら実は島で窃盗行為。「鉄網無無」(天網恢恢)。「無無」は「ないない」と読んでほしいのだが、自治体協議で鉄路維持の困難さが一層あらわになった年だった

 ▼明るいニュースも忘れるわけにはいかない。「日勝懸命」(一生懸命)。開発局や地元建設業者など関係者が総力を挙げて、台風で寸断された日勝峠を1年余りで見事に復活させた。拍手喝采である。


おれおれ詐欺激増

2017年12月19日 07時00分

 うますぎる話にはたいてい警戒心が働くものだが、心に余裕がないとその警報ベルも反応しない。そんな心の動きをユーモラスに描いた童話に宮沢賢治の『注文の多い料理店』がある

 ▼獲物が取れず空腹な猟師が山中で見つけた一軒の料理店。喜んで入ると「泥を落とせ」「鉄砲を置け」「服を脱げ」「体にクリームを塗れ」と、扉を開けるたび客に対して注文が出される。期待に満ちて最後の扉を開けようとするが。そこでようやく獲物になるのは自分の方だと気付く。おかしな点は最初からあった。ところが山中にあるのは隠れた名店だからと思い、「泥を落とせ」は格式の高い店なら当然と解釈したのである。疲れと空腹に正常な判断力を鈍らされたわけ

 ▼猟師の場合は空腹だったが、親の場合は子どもに対する心配心が冷静さを失う原因の最たるものだろう。道内で「おれおれ詐欺」の被害が激増している。道警のまとめによるとことし1―11月は114件で、前年同期に比べ4・2倍に上っているそうだ。「会社の金を落とした」「使い込みをした」「このままだと首」「助けてほしい」。子や孫からそんな電話がかかってきて慌てない人はいないのでないか。しかも今は弁護士や上司、警察を名乗る人物が次々と現れ考える隙も与えないと聞く。肉親の情を悪用した卑劣な犯罪というほかない

 ▼先の物語では異変に気付いた仲間の猟師が助けに飛び込み事なきを得る。おれおれ詐欺で助けになるのは周りの目と声掛けだろう。12月は例年、事件が多発する。家族と地域の連携で悲しむ人を減らしたい。


ピースキャンドル

2017年12月16日 07時00分

 牛乳パックをろうで固めて中にろうそくを差し込んだ手作りのキャンドルが、真珠湾攻撃75周年となることし12月7、8の両日、広島とハワイなどで75本ともされた。富良野に「森のろうそく屋」を開設した造形作家・横島憲夫さんが考案したキャンドルである

 ▼かつて旭川で「夢灯り」として生まれた環境と心の交流を願うプロジェクトが、平和への願いを未来へつなぐ「ピースキャンドル」となり海を越えたのだ。元祖「点灯虫の会」メンバーだった黒田正子さんはその報を聞き、「一過性で終わるのではなく街の風景として根付いてほしい」と期待を寄せる。1990年、七条緑地にともった12個の穴あき陶器をきっかけに多くの市民を巻き込んできた「旭川キャンドル」

 ▼92年の旭橋架橋60周年記念行事以降は絵やメッセージを書き込める牛乳パックを使うようになった。97年には広島青年会議所のメンバーだった鈴木俊哉さんが黒田さんに協力を求め、原爆ドーム周辺でもピースキャンドルがともされた。今回、ハワイ州モロカイ島でキャンドルを点灯させたのはアイリーン・キーニニさんら。曽祖父が広島出身で、一家は収容先の同島日系人収容所で終戦を迎えた。来日してピースキャンドルを見たアイリーンさんは戦争で厳しい環境に置かれた思いには共通するものがあると感じ、「平和の祈り、夢、希望」を同島からも発信したいと申し出、今度は鈴木さんが快諾した

 ▼戦禍と同じ数だけ悲しみがある。「自覚と責任のある平和」を指し示すともしびは、それぞれの思いを秘め力強く輝き続ける。


沖縄の小学校にヘリの窓落

2017年12月15日 07時00分

 住んでいる人にとっては当たり前のことだろう。マンションでは窓辺やベランダに鉢植えなどを置かない常識のことである。当方もマンション暮らしで実感したのだが、上から重量のあるものを落として下にいる人を直撃したら大ごとだ

 ▼鉢植えに限らない。パチンコ玉程度の物でも高層階から落とせば恐ろしい凶器となる。当たり所が悪ければ命も奪いかねない。「間違えましたすいません」では済まないのである。それが上空からヘリコプターの窓だという。幸い命に関わる事故にはならなかったものの、住民らが憤るのも当然だ。沖縄県宜野湾市の普天間第二小グラウンドにおととい、米軍ヘリ「CH53E」の金属製窓が落下した事故のことである

 ▼窓を落とすこと自体信じ難いが、それが縦横90cmで8㌔弱の重さだったと聞くと背筋が冷たくなる。落下地点から10mしか離れていない場所には4年生の児童がいて、衝撃で飛んできた小石に当たったそうだ。「間違った」では済まない。危ういところだった。基地問題をことさら強調するまでもなく、こんなことは決してあってはならない。子どもの上に鉄の塊が降ってくるなど論外である。普天間基地をすぐには動かせない以上、政府は米軍に対し、飛行ルートや乗員について一切遠慮することなく物申すべきだろう

 ▼ほぼまとまっていた基地移設計画が鳩山由紀夫首相(当時)の一言で崩れたのが今更ながら悔やまれるが過去を蒸し返してみても実りはない。政府は日米安保が沖縄の犠牲で成り立つものでないことを具体的な行動で示す必要がある。


今年の漢字は「北」

2017年12月14日 07時00分

 関東以南の人が抱く北の地方の印象は、以前なら「寒い」「寂しい」「遠い」が上位を占めていたのではないか。そんな心情が昭和歌謡には色濃く表れていた

 ▼ご存じの歌ばかりとは思うが、幾つか例を挙げてみよう。まず北島三郎の『函館の女』は「はるばるきたぜ函館へ」、石川さゆりの『津軽海峡冬景色』は「北へ帰る人の群れは誰も無口で」、高倉健の『網走番外地』は「燃えるこの身は北の果て」、と歌う。当地に暮らす道産子としてはどうかと思う歌詞ばかりだが、印象ゆえ致し方ない。ただ、最近はそれも変わってきたようだ。プロ野球で全国に引けを取らない北海道日本ハムファイターズの活躍も、イメージアップに随分と貢献している

 ▼それを裏付けるものだろう。漢字一文字で世相を象徴する恒例の「今年の漢字」が「北」に決まったと、おととい発表になった。大谷翔平選手の大リーグ移籍や早実の清宮幸太郎選手の入団で日ハムが注目されたことが、ことしは多く理由に挙げられたらしい。ところで残念なのはそんな明るさあふれる理由だけではないことだ。ミサイル発射だ核実験だと、「北」朝鮮に振り回された一年だったことも「北」の漢字を人々の意識に上らせた原因のよう

 ▼しかもこの師走の慌ただしい時期に、木造船で漂着した北朝鮮の船員が本道の松前小島で窃盗事件まで起こした。これも強まる国際社会の経済制裁や、金正恩委員長の軍事優先による民衆の苦境と無関係ではないのだろう。だからといって、はるばる「北」海道にまで荒稼ぎに来てもらっては困るのだが。


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