コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 301

光るものはどこへ

2017年02月17日 09時24分

 子どものころ繰り返し聞いたため流行歌以上に耳に残っているのがCMソングである。共感する人も多いだろう

 ▼例えば日立製作所の「この木なんの木 気になる木」。青空の下の大きな木まで目に浮かぶ。松下電器産業(現パナソニック)の「明るいナショナル 明るいナショナル」。今でもふと口ずさんでしまう。東芝の「光る光る東芝 回る回る東芝」。特撮番組『光速エスパー』とともにくっきり記憶にある。そのかつての輝きはどこへやら。東芝は現在、光るものを失ってしまっているらしい。巨額の損失と赤字で首も回らなくなっているようだ。東芝が先日明らかにしたところによると、2016年4~12月期の損失額見通しは7125億円。米国の原子力発電事業の行き詰まりが主な原因だという

 ▼業績悪化は坂を転げ落ちるように進み、同期の連結決算も4999億円の赤字に陥っているとのこと。頼りの半導体事業の売却も先送りしたようだから、これで期末17年3月期の赤字もほぼ確定だろう。今更ながら、東日本大震災が引き金となった福島第1原発事故の影響の大きさに驚かされる。米国の安全基準も格段に厳しくなり、それが原発を主力の一つにしていた東芝の経営を直撃したわけだ

 ▼道産子だからだろう、東芝を含めた今の原子力産業が、エネルギー政策の転換と相次ぐ重大事故で閉山に追い込まれたかつての石炭産業とダブって見える。ただ、石炭の後には石油があった。原子力の後ろには有力なものが何もない。この東芝の問題、問われているのは実は日本なのではないか。


地域の守り手

2017年02月16日 10時06分

 歌人齋藤史に一首がある。「濁流だ濁流だと叫び流れゆく末は泥土か夜明けか知らぬ」。押し流されるように戦争に向かう日本のありさまを増水になぞらえた歌という

 ▼台風も戦争に負けぬほど人々に恐れられていたということだろう。もっともそれは現代も同じ。昨年はその事実を身近に実感させられた。8月から9月にかけ相次いで本道を襲った台風が各地でインフラを破壊し、家屋や田畑を水没させたのである。被害規模は「56水害」を超え、本格的な復旧はやっとこれから。当社は11月にこの甚大な被害をもたらした台風の災害状況を記録する『引き裂かれた大地 立ち上がる建設業者』を発刊したが、残しておきたかったのは被害の実態とともに、災害に立ち向かう建設業者らの姿だったのである

 ▼自然災害が発生したとき、地域建設業がどれだけ頼りになる存在か。残念なのは、一般の方々がその重要性をさほど理解しているようには見えないことだ。いなくなって初めて気付くのでは遅すぎるのだが。杞憂(きゆう)ではない。地域建設業を取り巻く経営環境は厳しさを増している。最近、国土交通省も「地域建設業ワーキンググループ」を設置し、経営力強化に向けた検討に乗り出したと聞く。それだけ緊急性が高いということだろう。「地域の守り手」が消えると、国土保全に重大な危機が生じる

 ▼建設会社の幹部らを取材するたび驚かされるのは、彼らの持つ地域を守りたいとの強い使命感だ。泥土を除き復興の夜明けを早く迎えられるのも、そんな地域の守り手がいてこそなのである。


第30回サラ川傑作100選

2017年02月15日 09時17分

 既に新聞やテレビで幾つかの句に触れ、くすりと笑わされた人もいるのではないか。ことしも第一生命保険のサラリーマン川柳(第30回)傑作100選が決まった

 ▼「会議する準備のためにまた会議」(詠人知らず)、「守ろうと誓った嫁から身を守る」(恐妻家)。そうそう、と思わずうなずいてしまう句ばかり。今回は全国から5万5067もの作品が寄せられたらしい。ベスト10を決める投票も始まったそうだ。ことしは上司を題材にした句が目に付く。そろそろ新人を迎える時期である。参考にしたい。「生産性部長の異動で急上昇」(カクト)。胸に手を当ててみた方がいいかも。「神ってる全て裏目を出す上司」(いいだやカネタロウ)。本人はリーダーシップを発揮しているつもりなのだろうが…

 ▼「『塩』課長上司にゃいつも『神』対応」(惣兵衛)。しっかり見られてますよ。「見て学べ?どうりで部下が育たない」(ヒロシこの夜)。問題は時代なのか上司なのか部下なのか、何とも悩ましい。サラ川といえば家での立場も定番である。「『パパお風呂』入れじゃなくて掃除しろ」(家内関白)。今や一番風呂でさえなく残り湯。「けんかした家にもほしい地下空間」(カマキリ)。妻の怒りは地下にまで染み出しそう。「孫が来たポケモンいない孫帰る」(りゅうちゃん)。会社では上役だったのに家ではポケモン以下

 ▼でも実はこんな幸せなことだって少なくないはず。「『パパすきよ』娘にもらった金メダル」(三姉妹パパ)。傑作100選全作品は同社HPで見ることができる。


2人でゴルフを

2017年02月14日 09時19分

 ゴルフを題材にしたアメリカンジョークにこんな話がある。トムとジョンは勝った方がランチをおごると約束した。わずかにリードしたまま最終ホールを迎えたトムがここでミスショット。ボールは林に飛び込んだ。2人で探すが見つからない

 ▼トムはこっそりポケットからボールを落として叫んだ。「ごめん、木に当たってフェアウェイに戻ってた」。ジョンも叫び返した。「うそだ、俺が足の下で隠してたのに」。まあ、どっちもどっち意地汚いというお粗末な話。ところでこちらは同じゴルフでも、随分と趣が違ったようだ。安倍首相とドナルド・トランプ米国大統領が、2人で回ったゴルフのことである。10日のホワイトハウスでの日米首脳会談翌日、両首脳はフロリダでゴルフを共にしたのだという

 ▼報道陣を完全に締め出して行われたため当日の状況などは分からないが、その後の表情から察するに、友好ムードを壊すようなことはなかったらしい。トランプ氏の別荘で、豪華な食事も楽しんだと聞く。会談自体が大方の予想を覆すものだった。氏は両国の「自由で公平」な通商取引を歓迎し、さらに日米安保について「日本の国民が米軍駐留を受け入れてくれていることに感謝」とまで述べたのである

 ▼何か話がうますぎる気もするが、ここはひとまず信頼関係ができたと素直に喜んでおくべきなのだろう。ただ強引な交渉を得意とする人だ。ボールをラフに打ち込んでおいて、「これはフェアだ。シンゾウ、君もそう思うだろう。仲間だからな」なんて言い出さないか、心配の種は尽きない。


ながらスマホ

2017年02月11日 09時30分

 剣豪宮本武蔵は兵法の極意を記した『五輪書』で、「兵法の目付(めつけ)」について触れている。戦いに臨んだときの目の配り方、と言えば分かりやすいだろう。武蔵はこう説く。「遠き所を近く見、近き所を遠く見る事、兵法の専也」

 ▼戦いで勝ちを得るためには、目の前のことにばかりとらわれず、広く状況を把握することが大事だというのである。相手の太刀にだけ気を取られていては負けること必定らしい。戦いに限らず、日常生活を送る上でも役に立つ教えではないか。例えば今や身近な道具となったスマートフォン(スマホ)である。操作に気を取られて事故を起こしたり、遭ったりするケースが後を絶たない

 ▼つい先日も埼玉で、スマホを見ていて赤信号に気付かなかった男が、他の車に衝突したはずみで歩道を歩いていた母子をはねる事故があった。とっさにかばったのだろう、2歳の子どもは幸い軽傷だったが母親は亡くなった。理不尽で痛ましい事故に言葉を失った人も多かったに違いない。6日には神奈川の中学校で、「自撮り」をしていた生徒が誤って屋上から転落して死亡した。観光客が鉄道で「自撮り棒」を電線に近付け、感電する事故も度々起こっているらしい。スマホに集中すると周りが見えなくなる証拠である

 ▼武蔵は目付の習得には「能々吟味あるべき」-十分修練を積まねばものにできない、と断言していた。普通の人間がスマホを見ながら周りにも目を配ることなど不可能というわけだ。ながらスマホは最初から負け戦だと、よくよく肝に銘じるべきだろう。


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