コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 302

江戸城の最古級平面図発見

2017年02月10日 09時27分

 落語家は噺の途中に本筋と直接関係ない小話や決めぜりふを入れることがよくある。はまれば観客は盛り上がり、話す方にも勢いがつくからだろう。桂枝雀の「すびばせんね」には何度も笑わされた

 ▼「道灌」の落語にはこんな小話が挟まれるそうだ。太田道灌が徳川家康に城を売ったと聞いた人がこう言った。「それなら随分と買いたたかれたでしょう」。一体どうして、と尋ねると、「だってイエヤスですから」。家康の居城江戸城の起こりが、扇谷上杉家の重臣太田道灌の築城だったとの史実を踏まえての小話というわけ。家康は開府直後から江戸城の大規模改築、いわゆる天下普請を始めている。まだ権勢を保っていた豊臣家との戦いに備えると同時に、工事費用を出させて諸大名の力を抑えるためだったと聞く

 ▼その築城当時の貴重な資料が松江市で見つかったそうだ。同市が8日発表したところによると、それは「江戸始図」と記された、江戸城を描いた現存する絵図の中でも最古級の平面図だという。絵図が詳細なことで新たな発見もあったようだ。大小の天守が連続する「連立式天守」だったことや、出入り口の壁を複雑に入り組ませて敵の一斉侵入を防ぐ「5連続外枡形」構造にしていたことである。どうやらこれまで知られていた以上に堅固なとりでだったらしい

 ▼時代劇の大道具さんも新たなセット作りに腕が鳴るのではないか。何せ天守群は姫路城と同様の壮麗な形式だったことが裏付けられたのである。落語の舞台である江戸の街から見上げた姿も見事なものだったに違いない。


PKOの日報

2017年02月09日 09時47分

 お子さんのいる方なら、ああそんなこともあったねとほほ笑ましく思い出されるのではないか。親が見ていない間に、幼児が物を壊してしまったときのことである

 ▼それと気付いて子どもをただすと、自分は知らないとの返事。証拠隠滅が中途半端なため誰の仕業かは見え見えなのだが、正直に言えば叱られると思うのだろう、何とかうそをつき通そうと頑張る。その後は怒ったり泣いたり諭したりとしばらく大騒ぎ。幼児のことゆえ、うそといってもさほどの罪はない。親にしてみればかわいくて笑ってしまうくらいの話だろう。ところで、国連平和維持活動(PKO)に関するおとといの防衛省発表を聞いて、多くの人が思ったのはこういうことでないか。「子どもじゃないんだから」

 ▼これまで廃棄したと説明していた南スーダン派遣中の陸上自衛隊部隊が作成した日報について、実は保管されていたことが分かったというのである。問い詰められるのが嫌で、うそをついて隠そうとしていたとしか思えない。日報に「戦闘」の文字が幾つも並んでいるのが都合悪かったのかもしれぬ。戦況によっては参加原則を満たせなくなり、撤退論も再燃しかねない。きのうの国会での稲田防衛相の「戦闘」解釈も神学論争に近く、要領を得なかった

 ▼現在の世は高度情報社会である。1カ所だけふたをして隠し通せるわけもない。今やPKOは多くの国民が支持し、自衛隊員は国際貢献のため不慣れな国で奮闘している。そこにうそやごまかしがあってはいけない。透明性を確保し堂々と派遣するのが筋だろう。


シロアリ被害

2017年02月08日 09時32分

 家屋の敵といえば地震、火事から始まって湿気、経年劣化といろいろあるが、シロアリを思い浮かべる人も中にはいるのでないか。構造材を食い荒らし木造住宅の寿命を縮めてしまう怖いやつである

 ▼家の中で一匹見掛けたとすると、万単位の個体がどこかに隠れている可能性があるらしい。気付いたときには既に、見えない所に大きなシロアリ社会が出来上がっていてせっせと破壊工作にいそしんでいるというわけ。官僚をそのシロアリに例えて批判する論法がひところはやった。一面的な見方のようでこれまでは少々違和感も覚えていたが、今回の場合はまさにその表現がぴったりと言うほかない。文部科学省の天下り問題のことである

 ▼松野文科相が6日に公表した内部調査経過報告によると、天下りのあっせんを安定して継続させるため、同省主導で新たな一般社団法人まで設立していたという。その費用の一部は補助金を受けている他の関連団体が出していたそうだ。なかなか巧妙な仕組みを考えたもの。シロアリたちは2009年の天下り規制強化をきっかけに、隠れて着々と巣を作り続けていたようだ。再就職自体は悪いことではない。ただ天下りは退職金渡り鳥を生み、民間を締め付ける道具にもなる。だからこそ規制法ができたのだろう

 ▼きのうの国会で、あっせんしていた法人は解散するとの答弁もあったが、それで文科省の組織的な法令違反が白紙に戻るわけではない。家全体に広がったシロアリを駆除するのは難しいというから、文科省も一度解体するくらいの覚悟が必要だろう。


北方領土の日

2017年02月07日 10時00分

 日本人が自らを評して言う決まり文句の一つに「忘れっぽい国民性だから」がある。政治の暴走や企業の不正が繰り返されたときなどに、半ば自虐的に口にすることが多いようだ

 ▼真偽は分からないが、自然災害が頻繁な国土ゆえ、普段の暮らしを取り戻すために、気持ちを早く切り替えるすべが身に付いたと聞く。『方丈記』(鴨長明)の「うたかたは、かつ消えかつ結びて久しくとどまることなし」の達観だろう。さはさりながら少々忘れるのが早すぎやしないか。ほかでもない北方領土の件である。安倍首相とプーチン露大統領が日本で首脳会談をしたのは昨年12月のこと。まだ2カ月もたっていないのに、今は世間で語られることもない

 ▼四島返還に直接つながる成果は聞かれず、まずは将来に向け共同で友好のレールを敷きましょうと確認した程度だったから、頭に残りにくいのは無理ないのかもしれぬ。加えてこの米国発のトランプ台風である。土台の弱い話題は簡単に吹き飛ばされてしまったようだ。帯広出身の歌人時田則雄さんに一首がある。「持続とはつまり挫折のくりかへし車窓音なく走る電柱」。領土交渉も挫折を繰り返しながら、うまずたゆまず続けていくしかないのだろう

 ▼道の2016年度北方領土中学生作文コンテスト結果が先日発表になった。最優秀賞に輝いた鹿部中3年の米本開人君はこう気付いたという。「過去の問題ではありません。今も起こり続けている問題なのです」。皆が忘れてしまえば返還の望みも消える。きょうは「北方領土の日」。達観にはご遠慮願おう。


立春だが…

2017年02月06日 09時34分

 道民が聞いたら、「ことしに限ってそれはないさ」と言うに違いないが、きょうは立春である。今冬は新しい年になってからも連日のように大雪、吹雪、しばれが続き、冬将軍は一向に去る気配がない

 ▼ところが関東以南はといえば例年より随分と暖かいようで、梅の開花も軒並み早まっているのだとか。実にうらやましい話である。こちらときたら、「立春の暦をよそに雪積る」(飄千うめ)である。もううんざり。冬の訪れが早かったから、そろそろ引き取ってもらっても構わないのだが、「嫌な客ほど長っ尻」とはよく言ったものである。どうやらまだまだ居座るつもりらしい

 ▼札幌管区気象台が2日発表した1カ月予報によると、2月の本道は気温が全域で平年並みか高めになるという。降水量の方はオホーツク海側と太平洋側で平年並みか多め、日本海側で平年並みか少なめだそう。ただ、この時期の高め気温は大気を不安定にして大荒れの天気を招くことが多い。ゲリラ豪雪には十分警戒が必要だろう。とはいえ春の兆しが全くないわけでもない。昼はだいぶ長くなった。実感している人も多いだろう。それだけでも少し明るい気分になるというものである

 ▼あさって6日のさっぽろ雪まつり大通・すすきの会場の幕開けも明るい話題の一つ。おととい通り掛かって大雪像を見上げたときには、製作スタッフが入念に仕上げをしているところだった。19日には2017冬季アジア札幌大会も始まる。寒さが本道を覆っているが、所によっては世界中から運ばれてきた熱気に包まれるかもしれぬ。


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