コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 305

トランプ大統領誕生

2017年01月20日 09時02分

 朝の天気予報を見ていたら、気象予報士が道内多くの地域でしばらく真冬日が続くと言っていた。それもそのはず、きょうは旧暦二十四節気の大寒である

 ▼道理で足元からはい上ってくる冷気が骨身にこたえるはずだ。思わず昭和歌謡『小樽のひとよ』(鶴岡雅義と東京ロマンチカ)を口ずさんでしまう人もいるのではないか。「小樽は寒かろ/東京も/こんなにしばれる/星空だから/語り明かした/吹雪の夜を」。寒さが殊更身に染みるのは、例年を超えうず高く積み上がった道路脇の雪山のせいもある。しばれに加えて大量の雪では、弱気も出ようというものだ。「大寒を死なず挫けず諦めず」高橋隆子。自分を励ましながら乗り切るしかない

 ▼ところでこの積雪深、道内全域が筆者の日頃見ている札幌と同じではない。気象庁の集計によると、札幌周辺と道東、太平洋沿岸地方では平年以上の地点が多いものの、後は総じて少ない。豪雪地域の岩見沢も19日現在で平年比55%の42cmにとどまっているそうだ。きょう、ドナルド・トランプ氏が米国第45代大統領に就任する。米CNNテレビの世論調査で支持率が歴史的な低さの40%と相当お寒い結果だったようだから、大寒の日の行事としてはうってつけだろう

 ▼寒けを感じるのは日本も米国と似たようなもの。氏は「米国第一主義」を押し立て、日本に安保や貿易で心が凍るような寒風を吹き付けている。それがまた誤解に基づいているからたちが悪い。つい歌ってみたくなる。「米国は寒かろ/日本も」。さて、こちらの大寒はどう乗り切ろう。


北海道の転換点

2017年01月19日 10時00分

 国道12号美唄市光珠内から滝川市国道38号交点までの29・2㌔は、日本一長い直線道路としてよく知られている。着工は1886年だが、当時の工事復命書には「後で手直しが出ないよう、なるべく直線にすること」との趣旨の指示が書かれていたそうだ

 ▼この区間に限らず本道には直線の道路が多い。開拓地ならではだろう。2地点間を最短で結べる条件がそろっていた。直線道路はいわば開拓の記念碑というわけ。幕末、明治に活躍した探検家松浦武四郎は、本道をくまなく踏査した上で「東西蝦夷山川地理取調図」を完成させた。縦2・4m、横3・6mにもなる大地図である

 ▼月尾嘉男東大名誉教授は道立文書館で初めてこの詳細な図を目にしたとき、あることに気付き驚嘆したそうだ。「この地図には一本の直線もなく、すべてが曲線で構成されている」(『未来フロンティア紀行 北海道二十一世紀』06年)。そこにあったのはアイヌ民族の生活も含む手つかずの北海道。今はなき昔が見えたのだろう。月尾教授は地図を眺めて考えたという。直線道路に象徴される開発の歴史は否定しないが、方向転換は必要だ、と。その「ひとつの方法」に挙げたのが「取調図」を転換の起点に置くことだった

 ▼18年実施の「北海道150年記念事業」のキーパーソンに武四郎が選ばれたのも、「ひとつの方法」と軌を一にするものといえようか。高橋はるみ知事は今週初め、武四郎の生地三重県松阪市を訪れ、竹上真人市長と事業展開で連携を約束したそうだ。原点に戻ることは、時に未来への近道になる。


ビール出荷減少止まらず

2017年01月18日 09時40分

 本道製のビールが初めて売り出されたのは1877(明治10)年のことだったという。ちょうど140年前である

 ▼現物を味見するわけにもいかないが、記録では最初から相当うまいものができたらしい。冷涼な気候が醸造に適していたようだ。原点はその前年に設立した「開拓使麦酒醸造所」だが、今ではサッポロ、キリン、アサヒといった主要各社が本道に工場を置く。道民とビールの関係は水より濃いのである。随分と飲んでいる気がする、というのは思い込みでも何でもなく、実際に消費量は多い。少し前の資料になるが、国税局の2012年度「成人1人当たりの酒類販売(消費)数量表」を見ると、本道はビールが26・9㍑で47都道府県中7位だった。500㍉㍑缶に換算すると1年間で約54本飲んでいることになる

 ▼夏などはジョッキを次々と空けるから、それくらいはすぐなのかもしれぬ。まあ、1人で2人分、3人分と飲んでいる人もいよう。自分の腹を見下ろし、うなずく人も多いのでないか。ところで全国的にはこのビール消費量、年々落ちる一方らしい。国内のビール大手5社が16日発表したビール類出荷量によると、発泡酒や「第3のビール」も含めた合計が前年比2.4%減の525万㌔㍑にとどまったそうだ

 ▼12年間一度も前年を上回ったことがないのだとか。主力の飲食店向けが落ち込んでいるというから、長引くデフレの影響もあるのだろう。あさってから通常国会が始まるが、そろそろアベノミクスに目鼻をつけてくれないと、ビールとの関係は薄まるばかりである。


高齢者は何歳から?

2017年01月17日 09時50分

 93歳で今なお元気に活躍している作家佐藤愛子さんの近著『人間の煩悩』(幻冬舎新書)に、長寿に触れた一章があった。歯に衣(きぬ)着せぬ物言いが持ち味の愛子さんである。老いについての考えにも湿ったところが少しもない

 ▼「老人は死と親しむことが必要だと私は思う。老いの時間はそのためにある」。無理に老いをくい止めようとしたり、強壮に努めたりするなど、やめておいた方がいいというのである。先頃、日本老年学会と日本老年医学界が高齢者は75歳以上にすべきとの提言を発表した。生活実感からしても、その方がぴったりくる、と思った人が多かったのでないか。愛子さん流に「死と親しむ」としても、現在のように65歳以上との定義ではいささか若すぎる

 ▼両学会も74歳までは、「心身とも元気な人が多く、高齢者とするのは時代に合わない」との見解で一致したそうだ。各種調査の結果、生物学的にも知的機能面でも、昔に比べ5歳から10歳は若返っていることが裏付けられたらしい。詩人伊藤信吉に「戯れに喜寿」の作品がある。知人の喜寿を祝して贈ったものだという。こんな一節で始まる。「おれだってそういう年齢があった。/そういう歳だって、/じたばた、/ばっかりだった」。94歳のときに作った詩だが、喜寿なんてまだ若いと言っているよう

 ▼実際、元気なお年寄りは珍しくない。であれば、あまり早くから「死と親しむ」のも考えものだろう。「高齢」の言葉に脅かされ、病院とも薬とも余計親しむ羽目になる。75歳くらいがちょうどいいのかもしれぬ。


トランプ次期米国大統領

2017年01月14日 10時00分

 対戦前のプロレスラーが、テレビカメラの前で相手レスラーに挑戦的な言葉を吐く。プロレスファンならよくご存じの光景ではないか

 ▼身振り手振りはあくまでも大きく、唾を飛ばし大声で罵倒する内容がほとんど。互いの戦意を高揚させる意味合いもあるのだろうが、大部分は試合を盛り上げるための演出にほかならない。もちろん観客もそんなことは十分承知した上で期待感を高め、熱狂を楽しんでいるのである。トランプ米国次期大統領の演説や討論会を見ての印象が、やはりプロレスラーのそれと同じだった。時に指を突き付け相手をののしり、現実を無視したような持論を大声でまくしたてる。大統領選勝利直後の演説こそ少しおとなしかったものの、11日の当選後初会見ではいつものトランプ節が復活していた

 ▼当の本人には米国を再び強い国にするため戦うベビーフェイス(善玉)との自負や自覚があるのだろうが、なぜかヒール(悪玉)にしか見えない。あのこわもての容貌と態度が良くないのか。記者会見では、あらためて「米国第一主義」の旗印を鮮明にした。メキシコとの国境に長大な壁を築く計画は断固進めるし、貿易赤字の相手国である中国や日本、ロシアなどには「敬意」を払わせるそうだ

 ▼その無謀なまでの自信には畏れ入るが、現在の国際関係や貿易についてどこまで正確に理解できているのか。得てして大言壮語するレスラーは早々とリングに沈む。さて、トランプ氏はどうだろう。全く新しいスタイルで名勝負を見せてくれるのなら、逆にうれしい驚きなのだが。


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