▼英国やフランスなど欧州で広く使われていることわざに、「火と水はよい召使いだが悪い主人である」という言葉があるそうだ。火も水も生活になくてはならないが、人間が制御できる範囲を超えて暴れ出せば大変な惨禍をもたらす。このことわざは、普段便利に使っていても、危険を忘れていると思わぬ災害に遭うことを教える。人の立つ大地もまた同じだろう。都合良く召使いのままでいてはくれない。
▼いつまでも静かに生活を支え続けてもらいたいのだが、そうもいかないらしい。14日午後9時26分に熊本県で大きな地震が発生した。気象庁は「2016年熊本地震」と命名したが、益城町で最大震度7を記録したというから、地域住民は生きた心地もしなかっただろう。多数の家屋が倒壊し、少なからず死者も出ていると聞く。負傷者も相当な数に上っているようだ。今も着の身着のまま避難所に身を寄せている人もおられよう。心配なことである。心よりお見舞いを申し上げたい。
▼現地では自衛隊や警察、消防などが懸命の救助活動を続けている。地元の建設会社もインフラの復旧を進めていることだろう。一日も早く日常を取り戻せるといいのだが。日本では近年、地震や噴火が頻繁に起こるようだ。震度7の大地震も阪神、新潟県中越、東日本、そして今回とここ20年に集中している。イタリアには油断をいさめる「千年起きなかったことが一時間で起きる」のことわざがあるそうだ。もはや「災害は忘れたころにやって来る」と言っていられる時代ではない。