コラム「透視図」 - 北海道建設新聞社 - e-kensin - Page 4

責任の所在

2022年06月16日 09時00分

 これまで運輸・交通事業者(緑ナンバー)に義務付けられてきた運行前のアルコールチェックが、4月から業務で車両を使う事業者(白ナンバー)に拡大された。現在は〈目視等で確認〉だが、10月からは〈検知器による確認〉が求められる。慣れぬ一手間を煩わしく感じている人も多いのでないか

 ▼アルコールが検知されるとエンジンがかからなくなる車載装置もあると聞く。いずれ標準装備されるのかもしれない。もし装置が義務化されたとして、その装置の故障中に酒を飲んで車を動かし事故を起こしたら、責任を負うのは故障を見逃した検査者か運転者か。まあ運転者がいくら「故障してなければ運転できなかった。悪いのは俺だけじゃない」と叫んでも、そんな言い訳は通るまい

 ▼知床沖での観光船沈没で26人もの死者、行方不明者を出した知床遊覧船の桂田精一社長が、14日開かれた道運輸局の聴聞に陳述書を提出。「事故の責任を会社のみとするのはおかしい、国にも責任がある」と主張したそうだ。詳細は分からないものの、言い訳ばかりの社長のこれまでの発言を見るに、国の甘い監督や検査態勢を指摘し、世間の目をそらそうとしたのだろう。ただ、本来は国の関与などなくとも、乗客の命を守るのが運行会社の使命だ

 ▼もちろん国の検査、監督は見直されるべき。とはいえそれを今回の事故の免罪符にしようなどとは言語道断。いったいどこまで人ごとなのか。今もまだ12人が冷たい海の中に残されている。帰りを待つ家族の心中を思えば、神経を逆なでするような言葉は出ないはずだが。


改正刑法で拘禁刑創設

2022年06月15日 09時00分

 俳優松平健と聞いて思い浮かぶのは今なら派手な衣装で歌い踊る『マツケンサンバ』、一昔前なら時代劇の『暴れん坊将軍』(テレビ朝日)だろう。江戸幕府8代将軍徳川吉宗の活躍を描くドラマである

 ▼松平さんの演技を見慣れているせいか、吉宗というと悪には厳しいが情に厚く聡明な人物とのイメージが強い。実際そうだったようで、当時の刑法を厳罰主義から更生に重点を置いた制度に変えたのが吉宗だった。「公事方御定書」である。幕府は開府以来、犯罪者に対しては死罪や遠島、所払いなど社会から排除する方針をとってきた。吉宗はそこに「敲(たたき)」を加える。むち打ちの後、身元引受人に預け、やり直しの機会を与えたのだ

 ▼過ちを犯した者をまっとうな道に戻す方が、長い目で見て犯罪を減らせると考えたらしい。やはり名君。時代を先取りしていた。参院本会議で13日成立した改正刑法も、更生と再犯防止を一層進めるためのもの。懲役刑と禁錮刑を「拘禁刑」に一本化したのである。懲役刑は刑務作業が義務化されているため、矯正教育や更生プログラムに割く時間を作りづらかった。作業自体に懲罰と教育の効果があるとはいえ、ともすればそれだけで終わりがちだったのだとか

 ▼刑を拘禁とすることで受刑者の自由を制限しながら、作業と教育の最適計画を設定できる。それで犯罪を減らせれば言うことはない。刑期を勤め上げても真に更生していなければ意味がないのだ。この改正で受刑者は罪と向き合う機会が増えよう。自らをたたいてまっとうな道に戻ってもらいたい。


ママ、ごめんね

2022年06月14日 09時00分

 子どもの純粋な心に触れると、胸を揺さぶられる気持ちがする。読売新聞の人気コーナー〈こどもの詩〉精選集『ことばのしっぽ』で、岡田彩華ちゃん(小1・当時)の詩を読んだときもそうだった

 ▼短いので全文を引く。「がっこうのしんぞうのけんさでひっかかっちゃった。にどめ、またひっかかった。さんどめ、びょうきがみつかった ままがなみだをながしていた まま、よわく、うまれてきて ごめんね」。タイトルは「からだがよわくてごめんね」である。彩華ちゃんが謝る必要などどこにもない。それでも彩華ちゃんは、ママを悲しませてしまったのは自分の責任だと感じているのだ。まだ小1なのに。子どもは純粋なため、親ら周りの大人が悲しんだり怒ったりすると自分が悪いからだと思い込んでしまう

 ▼死に至る虐待を受けてさえそうなのだ。福岡県篠栗町で2020年4月、育児放棄され餓死した5歳の碇翔士郎ちゃんも亡くなる当日、母親に掛けた言葉が「ママ、ごめんね」だったという。保護責任者遺棄致死罪に問われた母利恵被告の裁判の主要な審理が10日までに終わり、むごい虐待の実態が明らかになった。利恵被告は同罪で起訴された知人の赤堀恵美子被告に心を支配され、生活費も搾取されていたそうだ

 ▼赤堀被告はうそと脅しで利恵被告の意志を奪い、子どもの食事まで細かく指示して翔士郎ちゃんを餓死に追いやった。疑いを知らぬ子どもの目には、自分が悪い子だから罰を受けていると見えていたろう。だが違った。「ごめんね」を言わねばならない人は他にいたのだ。


内閣不信任決議案

2022年06月11日 09時00分

 テレビの連続ドラマなどを見ていると、途中から新たな登場人物が加わるときには必ずその人物を際立たせる場面が用意される

 ▼いずれも池井戸潤原作のTBSドラマ、『下町ロケット』や『半沢直樹』のようなビジネスものなら、新たに登場した主人公をいたぶる上司や大企業の担当者がどれだけ嫌な人物かを強く印象づけるといった具合。番組視聴者が本気で腹を立てるくらい性格の悪い方がドラマは盛り上がる。逆に主人公の前に立ちはだかる人物の性格付けが中途半端だったり、役者が大根だったりするとドラマはつまらないものになってしまう。壁は高い方が乗り越えたときの達成感も大きい。相手方の存在感と力量がドラマの出来を左右するのである

 ▼通常国会に立憲民主党の代表として新たに登場した泉健太氏にも9日、内閣不信任決議案提出という大きな見せ場が用意された。さて、出来はどうだったか。結果は皆さん見ての通りである。泉氏の趣旨弁明はまるで迫力に欠け、追究内容も薄かった。性格なのか大根なのか、内閣に対抗する野党第1党の代表がこれでは国会も盛り上がらない。泉氏は政府が物価高に有効な手を打たず、国民を不安にしていると主張。ただ、精緻な分析を欠いた感情論の域を出なかった

 ▼同じ野党の国民民主党や日本維新の会にもそっぽを向かれ、決議案は自民党や公明党などの反対多数で否決。立憲民主の孤立ばかりが目立った。この連続政治ドラマは次に夏の参院選という大きな山場を迎える。役者の顔ぶれを見るにこちらも盛り上がりは期待できそうにない。


ウクライナの頭越し

2022年06月10日 09時00分

 ユダヤ人とアラブ人が今も血みどろ戦いを続けるパレスチナ問題の発端は、第1次世界大戦中に交わされたサイクス・ピコ協定だった。英国とフランス、ロシアが1916年5月、オスマン帝国領の分割について裏で取り決めをした秘密協定である

 ▼英国はパレスチナ地域をわが物としたが、第2次大戦後に維持できなくなり、対応を国連に丸投げ。任された国連が地域をユダヤ国家とアラブ国家に分割したのだった。間違いは明らかだろう。秘密協定も国連も当該地域の意向を無視して境界線を引いた。イスラエルは建国に湧いたものの、土地を失ったアラブ人は納得しない。他人が勝手にわが家を半分に分け、上がり込んできたようなものだ

 ▼当事者の頭越しになされる決定は、後々まで争いの火種になることが多い。ロシアの侵略で苦境に立たされるウクライナに関しても、最近少々気になる動きが出てきた。停滞が続くウクライナの穀物輸出を巡り、ロシアとトルコが2国で再開協議を進めているのである。報道ではウクライナによる黒海沿岸の機雷除去をロシアは求めているという。トルコは存在感を示すために仲介役を買って出たが、ウクライナは当事者抜きの協議に反発しているそうだ

 ▼もう一つ。プーチン露大統領とマクロン仏大統領、ショルツ独首相が先月末に1時間以上、電話で会談した。立ち位置が定まらなかったマクロン、ショルツ両氏はそれを機に、主戦論から停戦論にかじを切ったように見える。あちらでもこちらでも、ウクライナの頭越しに秘密の約束などしていなければいいが。


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