コラム「透視図」

富岳が世界一に

2020年06月24日 09時00分

 山歩きを趣味にする者として、生きているうちに一度は富士山に登りたいと考えている。同じ思いを抱いている人はきっと多いだろう。秀麗な立ち姿をめでたいのなら絶景の地から眺めれば済む。ただ、日本一の高さを体感したいなら自分の足で登るしかない

 ▼都合が付けばことしにでもと、登山道の確認や持ち物、高山病対策といった準備を始めていたのだが、新型コロナウイルスのせいで中止せざるを得なかった。富士山の何がそんなに魅力かといえば、それ以上高い地点が日本にないことである。人は限界を目指したい生き物なのかもしれない。こちらはその見事な実例でないか。日本一どころか世界一の快挙である

 ▼理化学研究所と富士通が開発したスーパーコンピューター「富岳」が、22日に公表された計算速度の世界ランキングで首位を獲得したのだ。速さは1秒間に41・5京(1京は1兆の1万倍)で、2位の米「サミット」(14・8京)に3倍近い差をつけた。日本の世界一は8年半ぶりだという。新型コロナではウイルスが飛沫(ひまつ)を介して人から人へ伝わる様子を詳細に分析。感染防止に一役買った。計算速度が飛躍的に上がったため、すぐに答えが必要なときに対応できたわけだ

 ▼「富岳」はもちろん富士山の異名。蓮舫参院議員が民主党政権時代の事業仕分けで「2位じゃだめなんでしょうか」とやゆした「京」の後継機である。この偉業は開発者があくまでも世界一を見据え、着々と準備を進めてきたからこその結果だろう。目指しもしないのに頂上到達などできるはずもない。


河井夫妻逮捕

2020年06月23日 09時00分

 人類史上最大の発明はお金といわれる。確かにどんな物とでも交換できるお金ほど便利な存在はこの世にない。ただ、無いと困るが有り過ぎても困るのがお金だという。たまには有り過ぎの気分を味わってみたいものだが、そんな機会はとんと訪れない

 ▼そんな事情も手伝ってだろう。このお金というもの、時に物だけでなく心まで買えてしまうのが怖いところである。「地獄の沙汰も金次第」とはよく言ったものだ。この人たちもお金で関係者の心を買おうとしたとみえる。先週、公職選挙法違反(買収)で東京地検特捜部に逮捕された前法相の河井克行衆院議員と妻の案里参院議員である。地元議員ら90人以上に票のとりまとめを依頼する趣旨で、合わせて約2570万円ものお金を提供した疑いが持たれている。有り過ぎて困ることはなかったようだ

 ▼昨年7月の参院選で案里議員(広島選挙区)の初当選を確実にしようと大々的にばらまいたらしい。「現生」が飛び交った昔の選挙戦の話を聞くようである。克行容疑者は提供を認めているものの、票の取りまとめ依頼は否定しているそうだ。統一地方選のさなかでもあり、依頼でなく「陣中見舞い」や「当選祝い」であれば買収にはならない

 ▼とはいえ次期参院選公認候補の案里氏の夫で現職の国会議員がお金を配り歩いているのに、それを単なる「見舞い」などと考える人はいまい。「地獄の沙汰」ならぬ「選挙の票も金次第」か。モラルが低過ぎる。河井夫妻に限らず政治家は忘れないことだ。有権者が怒るとえんま様より怖いしお金でも動かない。


日本の評価は「可」

2020年06月22日 09時00分

 時事通信ロンドン支局が先週配信した記事を新聞やテレビで見て驚いた人もいるのでないか。英誌エコノミストの調査部門が経済協力開発機構(OECD)加盟21カ国の新型コロナウイルス対応を独自評価した結果、日本が「優、良、可、不可」の4段階で下から2番目の「可」にとどまったというのである

 ▼意外な低評価だ。しかも死亡者が世界最多の米国や、日本の30倍のフランスに「良」をつけているのである。通信簿に納得できず憤慨する子どもではないが、「一体どこを見ているのだ」と文句の一つも言いたくなろう。今回の評価は幾つかの指標を点数化して決められた。日本はPCR検査数が影響したらしい。他国に比べ実施数が少ないため、点数が低く抑えられたのである

 ▼この指標を一律に適用したのが間違いだろう。大事なのは使い方とタイミングだ。欧米の主要国は当初闇雲にPCR検査を実施したため、症状の軽い患者まで病院に殺到する羽目となり、医療崩壊を起こしたのではなかったか。実際、人口10万人当たりの死亡者数を比べると日本は0・74人で21カ国中18位と大健闘。「優」のドイツは10・66人で12位である。初期ならともかく収束しつつある今、「可」とはこれいかに

 ▼指標にはむしろ日本で効果を上げている三密の回避やクラスターつぶしを入れるべきだったかもしれない。政府は19日、継続して自粛を要請していた首都圏と北海道の移動を解禁。これで全都道府県をまたぐ交流が再びできるようになった。「可」の評価が妥当だったかどうか、まあ、見ていてもらおう。


謎の飛行物体 

2020年06月19日 09時00分

 世の中の雰囲気が全体に暗く沈んでいるとき、決まって流される歌がある。「九(きゅう)ちゃん」こと坂本九さんの『上を向いて歩こう』(永六輔作詞、中村八大作曲)である。大きな災害のあった後がそうだし、このコロナ禍のさなかにも耳にした

 ▼「上を向いて歩こう 涙がこぼれないように 思い出す 春の日 一人ぽっちの夜」。一人ぽっちの歌なのに、一人ぽっちでないような気がするから不思議である。きのう、仙台など東北の太平洋側各地でも上を向いて歩く人の姿が多く見られたようだ。謎の飛行物体が空を漂っていたためである。映像を見ると白い気球に十字型の物体が吊り下げられている

 ▼気象観測用ラジオゾンデに似ているが、国土交通省や気象庁も全く覚えがないという。しかも気流に流されもせずほぼ同じ位置にとどまっていた。長らく続いたコロナ自粛でうつむく日々が多かったせいだろうか。そんな奇妙な物体にもかかわらず、ニュースに映った人々の顔は皆どこか楽しげだった。仙台の友人に早速連絡をとってみると、自分は見ていないものの地元はその話題で持ちきりとのこと。テレビで毎日、あの毒々しいウイルスの丸い姿を見せられているのだ。それに比べれば、青空を背景に白く輝く丸い姿はよほどすがすがしい

 ▼喜劇王チャップリンはかつて、「下を向いていたら、虹は見つけられない」と言ったそうだ。歌の続きのように「幸せは 空の上に」あるかどうかは分からない。ただ、上を向けば新たな発見があるのは確かだろう。それに、気持ちも少し上向きになる。


イージスアショア停止

2020年06月18日 09時00分

 授業でペリー来航を学んでいるとき、一緒にこの狂歌を覚えた人も多いのでないか。「泰平の眠りを覚ます上喜撰 たった四はいで夜も寝られず」。お茶(上喜撰)の4杯と蒸気船の4はいを掛け、どちらもそれが原因で眠れないというわけだ。黒船はそれほどの驚きと恐怖を江戸にもたらしたのだろう

 ▼思い出すのはお台場の逸話である。1853年、ペリーが現れ開国を要求すると、幕府は1年の猶予を要求した。黒船は江戸を一瞬で火の海にする艦砲を備えていたが、江戸湾岸には対抗できる火器が十分にない。幕府は1年で幾つもの台場(海上砲台)を築き、強力な大砲を据えたのだ。翌年再び来航したペリーは砲台を確認すると安易に近付かず、脅し外交も見直したという。自立を守るのに防衛力がいかに大事かを今に伝える逸話である

 ▼政府は15日、他国のミサイル攻撃に備える地上配備型迎撃システム「イージスアショア」の配備手続きを停止すると発表した。現代の台場は築かれなくなったらしい。核弾頭搭載可能な北朝鮮の弾道ミサイルに脅威が高まる2017年に導入を決めた装備である。停止の理由は、発射後のブースターを安全に落下させられないからだという。甘い見通しや雑な調査、説明不足は批判されて当然だ

 ▼とはいえ安全保障環境は依然厳しい。北朝鮮は南北共同連絡事務所を爆破するなど過激の度を強め、中国公船も連日のように尖閣周辺の領海に侵入している。ここで隙は見せられない。政府はすぐに次の策を示すべきだろう。「夜も寝られ」ぬ事態は誰も望んでいない。


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