ビザなし交流は、奇妙な体験の連続だった。 「今から入域手続きが始まります」 5月24日午後、交流専用船「えとぴりか」内。根室出港から6時間が過ぎたころに放送が流れ、参加者は食堂前ロビーに集まった。このとき船は色丹ではなく、隣の国後島沖にいた。
色丹島に、カネと人が流れ込んでいる。 「水産品製造、月給3万〓(約5万1000円)、住まいと3食付き。6カ月間の期間労働」―6月上旬、ロシア中部の求人情報サイトに、約4500㌔離れた色丹島の求人が載っていた。
車が通りを走るたび、舞い上がる砂煙で辺りが薄茶色ににじむ。舗装道路がない色丹島では、晴れが続くと砂ぼこり、雨が続くとぬかるみが、集落の景色の一部となる。