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【アートランダム 柴橋伴夫】/第49回 北海道作曲家協会

「北海道作曲家協会」という音楽団体(2007年設立)があります。この会はオリジナルな作曲活動を通して北海道内外の音楽文化に貢献することを目的としています。年1回、開催される「北海道の作曲家展」を軸に、「北海道ならではの自由で豊穣な音楽」を目指しながら活動しております。現在会員は70人を超え、北海道出身や北海道在住者など、さらに幅広い年代の作曲家が入会しています。東京などからも参加している方もいます。また隣国たる韓国大田市にある作曲家協会とも交流を深めています。その意味で、全国的かつアジアを意識した国際的な音楽協会ともいえそうです。

今年は、第10回展となり札幌にあるザ・ルーテルホールで開催されます。特に今回は第10回を記念して会員石丸基司、門脇治、星義雄の3氏が各楽章を担当した3楽章の弦楽四重奏曲を、ゲストプレーヤーを迎え演奏します。さらに韓国大田市の作曲家協会「韓国楽会」との交流事業の一環として、チェ・ヒョンソクさんの弦楽四重奏曲が披露されます。

また今回、私が作詞した作品が2曲演奏されます。遠藤雅夫(東京)は、組曲「ココロのコラージュより」を発表してくれます。演奏者は、バリトン岡元敦司、ピアノ伴奏小杉惠です。八木幸三(札幌)は、『「竹の繭」―勅使河原宏に』を、バリトン今野博之、チェロ中川恵美によって初演されます。この『竹の繭』は、草月流の家元であり、「砂の女」や「千利休」を監督した映画人でもある鬼才勅使河原宏に捧げています。

私が、『前衛のランナー勅使河原蒼風と勅使河原宏』を出版したとき、出版記念会に演奏する予定だった作品です。ただ諸般の事情で今回が初演となります。〈語り〉の部分もあり、またバリトンとチェロによるという新しい試みをしました。詩は「あなたは、知っていたヒロシマの悲劇を、炎に包まれ、花も草も人間(ひと)も、全てのものが姿を消したことを あなたは、聴いていた 被爆直後のヒロシマの駅で 黒い雲を払いのける、水道管からポタポタと流れる水の音(おと)をこの水の音、戦後時間を生きる始まりの音となった」と書きました。

勅使河原宏の戦時中の体験を織り込み、のちに竹を素材にして生命性が帯びた大作を世界中で創作したアートワークを賛美しております。演奏会は10月27日(日)午後1時開演です。ぜひともこの音楽会に足を運んで聞いてみてください。

柴橋伴夫(しばはし・ともお):1947年岩内町生まれ。北海道教育大札幌校卒。展覧会評を美術誌「美術ペン」や新聞などに寄せる。「ギャラリー杣人」(喜茂別町)の館長。コラム「アートランダム」では、道内ゆかりの絵画や建築、彫刻といったアート作品や展覧会などアートな話題を紹介する。


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