【弁護士田代耕平の独り言】第104回 ある弁護士の一日
弁護士の一日をお話したいと思います。弁護士といっても、都市部で海外のクライアントを相手とするような国際弁護士(我々の業界では「渉外弁護士」といいます)ではなく、私のような地方都市の一般的な弁護士(我々の業界では「マチ弁」などといわれます)の一日です。
渉外弁護士は、海外との時差があることや訴訟等をあまり行わないこともあってマチ弁とは働き方が異なるようです。我々「マチ弁」が公務員だと思っている方もたまにいらっしゃいますが違います。普通は、個人事業主であることが多いです。私も、個人事業主です。
一番最初に法律事務所に入所したときは、雇用されていたのですが、4年目から個人事業主になって給料はなくなりました。従業員ではないので、出退勤の時間は決まっておらず自由です。もっとも、裁判所は午前9時から始まっていますし、事務職員も午前9時には出所します。クライアントも通常は午前9時から始まるので自由だといってもそんなに遅く出所すると信用がなくなってしまうので、午前10時くらいまでには出所するのが通常のようです。
午前9時に法律事務所に電話しても弁護士が外出中といわれることがありますが、大抵はまだ出所していないことが多いと思います。私は、朝型なので出所するときは午前8時前には大抵出所しています。コロナ前は、朝の午前6時、7時には出所していましたが、コロナをきっかけにテレワークが普及して家でも仕事がいつでもできるようになったので朝起きて自宅でできる仕事は自宅でするようになりました。
テレワークで着替えの時間と移動時間が節約できるようになりました。夜は、遅くまで仕事をしている弁護士が多いようですが、私は、夜は早く寝る(午後11時くらい)ので夜遅くまでは仕事をしません。仕事が詰まっているときは早く寝て朝早く起きて仕事をします。朝と言ってもそういう時は午前3時くらいに起きるので人によっては深夜かもしれません。
日中は何をしているのかというと、新規のご相談や訴訟等になっている『事件』の打ち合わせや裁判所の『期日』への出頭などを行います。ちなみに、我々の業界では、ご依頼を受けた案件のことを民事・刑事に関わらず『事件』と呼びます。また、裁判所で行われる手続きを『期日』と呼びます。期日には、証人尋問のように数時間かけて行う手続きもありますが、普通は、あらかじめ主張する書面を提出しておいて期日では内容の確認程度が行われて数分で終わります。
むしろ、書面を作成する(起案)ために、弁護士は、提出期限に追われながら夜遅くまで仕事をしているのです。期日は、1カ月に1回あるかないかのペースで行われます。当事者双方が、相手から出てきた書面に次回までに反論するということを交互に繰り返すのが通常です。こんな感じですので裁判(訴訟)になると、判決までに1年くらいかかってしまいます。
証人尋問は、月に1―2回程度やるかやらないかくらいだと思います。証人尋問自体が一日仕事ですし、その準備に相当時間がかかりますので月に1―2回程度でも結構大変です。土日はというと裁判所等もお休みなので法律事務所もお休みですが、弁護士には土日も関係ありません。電話が鳴らないのでじっくりと起案したりしています。
このコラムも土日にゆっくりと起案していることが多いです。弁護士の繁閑があるのかということをときどき聞かれますが、8月は裁判官が夏休み(「夏季休廷」と言います)を2週間くらいとり、4月には裁判官の異動があることからその前後には期日が入りづらいので比較的ゆっくりできます。年末は、年内に事件を終わらせようとするマインドが双方に働くため和解が多くなって忙しいイメージです。来月も忙しくなるのではないかと思いますが和解が成立するのは依頼者にとって良いことなので頑張りたいと思います。
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